第十五章
世界賢人会議の開催がもうすぐだった。
この会議は各国の賢人と政治家が集まって知恵を出し合い課題を解決していこうとするものだ。この会議には訳あってアガティールは参加しない。プロトは好機とみていた。部下からの事前の情報でこの会議に南部ヤマトのラーミア・シュルタンが参加するとの情報をキャッチしていた。世界は戦争の中でプロトたちの亡国バイルについて話し合う機会も得られるはずだ。
会議にはプロトだけで行くことを決めていた。
他にどんなやつがこようともプロトがもつ独立への意思は砕くことができないだろう。まさに適任という訳である。
会議当日。
ヘリで移動したプロトたちは会議開催地リリの地へと向かった。到着するやいなや地元民から熱烈な歓迎を受けたプロトはまさに自分が時代の申し子だという自覚を深めたのだった。地元民に話を聞いたところバイルがテレビで国ごと亡命しており臨時政府を作ったことを知ったということだった。地元民は同情と哀れみからプロトを歓迎していた。
しかし降り立った場所には予想できたことであるがアガティールの勢力勢も混じっておりアガティールの旗を振っていた。彼らはプロトを敵対視し暗黙の中に強い拒絶を示していたのだ。
プロトはそんなことには目もくれず会議場へ向かった。
アガティールは過去にこの世界賢人会議において暴走をした経緯がありその時出席していたのが軍人であり政治家のワルター・セビウスだった。彼はこの前後においてアガティールでの地位を上げており皇帝から深い信任を得ていた。皇帝は世界賢人会議においてセビウスがしたことなどどうでもよく(というより世界賢人会議自体どうでも良い会議だと最初から考えていた)セビウスは不問となった。
会議自体はアガティールが抜けたことにより小国の意見が数多く出るようになり結果良かったといえる。しかし皇帝パーディアのこの甘い考えが後にアガティールを苦しめることになるのである。何せ会議には血気盛んなプロトと天才科学者ラーミア・シュルタンが出席するのだから。
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会議が始まった。
司会は小国出身者が務めるのが習わしだった。
小さな身長150cmぐらいのヌイという男性が務めることになった。
「では会議を始めます」
会議は順調に進んだ。
各国の運河にかかる税金、関税、土地の輸送費などが話し合われた。プロトは注目していた。ちょうど机の反対に座っている賢そうな女性。彼女がラーミア・シュルタンだった。
ラーミアはずっと黙って会議に参加していた。同じくプロトもだ。会議そのものに拒否感はない。小さな議題でも話し合う余地はある。しかし二人にはもっと大切な話し合いがあったのだ。
会議も後半になった。ここまでで3時間。
ついにアガティールの話題となったのだ。
ラーミアはついに声を上げた。
我が国、南部ヤマトはアガティールの奴隷ではない、是非ともご出席のみなさんがニュース等でご存知のあの兵器ガイアスに対抗できる資材と研究費を支えてくれる同盟先を探している。ラーミアの主張はこうだった。
これに対しは南部ヤマトはアガティールに反旗を翻すのか、裏切る気がなどという意見が出たがラーミアは怯まなかった。動揺を隠さずにガイアスに対抗できるのは開発者自身の技術しかないと熱弁した。
これにはみなが驚嘆した。
ただ一人プロトはそのことを知っていた。
ガイアスは南部ヤマトで作られアガティールに利用されその開発者はラーミア・シュルタンという女性だということを掴んでいたのだ。
ここがバイルの強みだった。
昔からスパイなどの活動は広く認知され情報の取得が正確で市民の意識が違ったのだ。
このラーミアの発言に対しプロトが答えた。
我が国は今国を上げて他国に逃れているがもともとは強い工業国だ。その盟主が私プロトである。
是非とも我が国にあなたとその傘下の研究者を受け入れたい。私はもともとそのつもりだった。
すでに手配は整えてあります。相手はアガティール、南部ヤマトのあなたが離反しようとすれば阻止してくるはず。しかしこの会議のことはアガティールはまだ知りません。私が用意したパイブを使い
あなたが我が国へと来るのを手助けします。
ラーミアはこれに対し歓迎の意を示した。
ラーミアは自らの身が危ないことを知っていた。しかしこのまま世界が進んでも良い結果にはならないだろう。なんとしてもアガティールの暴走をくい止めなければいけない。ガイアスの生みの親として。
ここに来て二人の人物による同盟が成立した。
しかも他の会議参加者も資金の拠出や人材の提供を申し出してきた。この流れは確実に世界を変えるだろう。プロトは思った。何もかもが上手くいった。珍しいことだ。しかしプロトはこれは始まりに過ぎないと考えていた。全ては亡きユンのためでもあるし自分の為でもある。アガティールには滅んでもらわなければならない。
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アガティールの首都。
その一等地に皇帝家族の居城がある。
その中のパタゴにパーディアの息子シンの部屋があった。シンはこの日はガイアスをみるために城下まで降りてきた。みなが「シン様だ」と噂を立てまるで新種の生物をみたかのように嬉しがっていた。何せパーディアの息子とはいえやんちゃな性格が市民によく知れ渡っていたのでアイドルのように扱ってしまうのは無理もない。
シンは城下まで降りガイアスが停止している空港まで車を走らせた。専用車であり運転手が付いている。
「なあガイアスを作ったやつってどんな天才なんだろうな」
シンの独り言に運転手は黙っていた。
空港につくなりシンの目は輝いていた。
巨大な機械装置の前で人間の無力差を知るようなこともなく何せ父親のものだというだけでまるでこの機械の支配者になったような気分で最初からいた。
「なあ乗せてくれよ」
無名のパイロットがそれに応じた。
電源をつけ光が発光したかと思うと振動し始めた。
「すげえ。」
ここに停止しているガイアスは10日間起動していなかった。最初は市民もとてつもないことだと興奮していたが10日も経つと熱は下がってくる。しかし起動したという情報がすぐさま広がり市民が集まってきた。
その中に12歳ぐらいの少年がいた。ちょうどシンの年齢の近くの子だった。この子は機械が大好きでしょっちゅう機械をいじっているせいで機械が頭から離れられなくなった子だった。こんな子にとってガイアスという兵器はまるで神器のように映った。
まるで意味がわからない、時代の先をいく最新科学だったのだ。その子がガイアスに近寄りシンに話しかけた。
「シン様、乗り心地はどうですか?」
大声だった。
周りにいた人たちはなんと無礼なと考えたがシンがこの声に答えたことで納得した。
「最高だぜ」
パーディアの息子らしくなく人に優しい皇太子であり本当に実の父親がパーディアなのかと疑いたくなる一幕だった。
シンはいつもそうだった。
その子はこの日のことを忘れないだろう。ガイアスの起動それに加え皇族に話しかけたこと。なんと優しい態度であったか。
そうしてこちらシンも一日が終わったのだった。




