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GAIAS-ガイアス【帝国からの独立】  作者: nanayoshisekai
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第十三章

ここはバイルという国の中の都市クレド。

クレドでは現在歌が流行っていた。

誰もが歌を歌っている。それもポップ調の歌ではない。童謡のような昔からある歌だ。現在バイルはアガティールの占領を受けている。そんな中で自発的に民衆は歌を歌い始めた。

「今日もお疲れさま」

その女性は歌手だった。しかも成り立ての歌手だ。

年は二十代後半、黒髪のロングで目立つマニキュアがいい味を出していた。この日は地方巡業の帰りでスタップにお疲れさまとちょうど挨拶を終えた時だった。

この国に今はリーダーはいない。

別の島国へと逃れそこで抵抗運動をしている。

この国の市民は文化財や人的資源の流出と損失を恐れ自由都市宣言をし今はアガティール帝国の軍隊が入ってきている。いわば無抵抗宣言をしたようなものだった。この自由都市宣言をした国で歌う女性がいた。彼女は国民の必要に応えてここにいる。

歌が流行っていた。負けた苦しみを降伏した悲しみを歌で紛らわすかのようにみんなが歌を欲しがっていた。誰もが知っている歌がある。「無窮な土地で稲を植え〜♪」

歌手として成り立てだったユキは忙しかった。

時間に追われ自分の楽しみは一つもない。

ユキには双子の妹がいた。名前はサキ。この争いの中で連絡が取れなくなってしまった。だがおそらくは生きているだろう。根っからの強さが私達双子にはある。何せトレスカーザミーアの人なのだから。

ユキはよくアガティールの軍人から恋文をもらったり言い寄られたりしていた。いくつの断りの後で軍人のある男と付き合うことになった。彼はよくユキのライブにちょくちょく顔を出しては歓声を送っていた。

           *

プロトは隣国の島国へと逃れていた。

サザや他の部下も同行していた。

キャンペーンを打ち出して帝国への反抗を呼びかける毎日だ。とりわけプロトたちに必要なのは士気と人員だった。たとえ故郷にいなくてもそれだけあればマンパワーは回る。マンパワーで今回の戦いを勝ち抜くつもりだった。

テレビでは謎の知らない歌姫が歌を歌っていた。プロトだちの故郷の歌だった。おそらく歌がうまいのだろう。真剣に聞いていたら故郷が懐かしくなった。部隊には通達してある。もし俺がいなくなったらサザを次の司令官にしろと。

サザは責任重大だった。しかしサザの様子はどこかおかしかった。いい意味で。気力に溢れ生命力が滾っていた。おそらく何かあったのだろう。プロトにはわかる。女性関係だ。

サザはあれからもサキと会っていた。

サキは何か隠し事をしているようだった。

それをいくら問い詰めても答えてくれない。

一度プロトさんに相談してみるか。

政府宿舎に(といっても今は亡命先だが)サキを連れて行くのはこれが初めてだった。

「その人がお前の彼女か?」

プロトが先手を切った。

「はい。」

サザは答えたがサキを心配していた。

サキはこのところ元気がなくますますミステリアスに見えてくる。

「サキ。この方がプロトさんだ。まあ知っていると思うが。」

「はい。」

サキはただ頷くだけだった。

その後、話が進まないのでプロトがテレビをつけた。

するとそこには例の歌手が歌を歌っていた。バイル側のテレビ局も接収され今は帝国のプロパガンダを放送している。しかし帝国はゆるい政策をとり市民に一定の裁量を与えていた。市民からの希望で歌番組が多くなりそこにこのテレビでよくみる歌手がよく映るようになった。

「ちょうどいいですね」

そこでサキが口を開いた。

「このテレビの歌手、トレスカーザミーア出身なんですよ」

「なんでそんなことを知っているサキ」

サザが疑問に思い問いかける。

「なぜってそれはこの人が私の双子の姉だからです」

場にいた二人がへーと驚いたように口を開けてしまった。

「そうかそうか。お前さんの双子の姉は歌手だったのか。」

でも疑問が残る。

なぜそんなことを隠して様子がおかしかったのか。

サキは言った。

「まだ隠していることがあるんです。」

「言ってみろ」

サザに誘導されてサキがつらつらと話し出す。

「お姉ちゃんはどうやら最近、アガティールの軍人と付き合い出したらしいんです。でもそれはたぶんお姉ちゃんの思うところではないはずです。帝国の采配でそんなことになっちゃたんだと思います。サザさんプロトさん、それでも私達を裏切り者と罵りますか?」

「なるほどな。」

プロトが考え始める。

「テレビに出ているぐらいだから一定の影響力はある。しかもこのユキという女性はアガティールの手駒として歌手活動の他にプロパガンダにも手を貸している。でもだからといってどうだ?サザ」

「はい関係ないと思います。」

「そうだろう。帝国の手駒だからといってそんな目線で見たりはしない。結局は俺たちの国民が戦うことを選ばなかったのが原因なんだ」

プロトはまだ続ける。

「結局いつもこの結論に達する。俺たちに武力がないということだ。いますぐにでも南部ヤマトに連絡をとりコネを造って技術援助の話に持ち込む必要がある。これは俺が何でも言ってきたことだ。」

これにはサザも同意した。

その後サザとサキの二人だけの時間が訪れた。

「わかるだろう。俺は軍人なんだ」

「わかります」

「これでも俺に付いてきてくれるか?」

「もちろんです。」

双子の姉のユキのこともある。我々バイルの市民はそんなことで身内をないがしろにしたりしない。

問題はユキをどうするかだった。連れてきて姉妹を会わせるのが良策だろう。幸いバイルは自由都市宣言をしているだけで他国のゲートも今もまだ開放されている。いつでも連れ戻すことは可能だ。

話したことでサキの元気も戻ってきたようだ。

サキはそのことで落ち込んでいただけだとわかるとサザも安心して仕事に戻る準備ができた。

           *

軍隊に必要なのは装備である。いろいろな装備がある。どれも訓練次第でうまいこと使えたり使えなかったりする。だが装備以上に大切なのは愛国心だ。

プロトの指揮するバイルの兵士はとても愛国心があった。 島国に亡命中でも軍隊の士気は高かった。今はかつて以上に郷愁の念にみんなが囚われていた。軍隊の組織もかつてのままだった。みんな島国まで船で移動してきた仲間だった。トップはもちろんプロトのままで、再編などは特になかった。

プロトの願いはガイアスの技術者とコンタクトを取ることだった。かつてからあったセンティーヌの組織、諜報活動騎兵部がここにきて大きな役割を担うことになる。彼らの活動は言ってみればスパイである。どんなことだってやる。泥を塗られる仕事だってやり遂げる。一番きついのは信頼をえるために自分を騙して取り入りそれが駄目だったときだ。

プロトはこの部隊を信頼していなかった。それは当初の話である。ここに鎮座している隊長ゴードという男がどうも気に入らなかった。優秀な成績ばかりでは飽き足らず身体能力も高い彼は一目散に注目が集まるはずだった。しかし実態は部下を生贄に捧げるように使い捨てているという噂がたっていたからだ。プロトは彼に会いに行った。宿舎も同じところにあるわけであってすぐに会えたがゴード側はそれは既に知っているかのようにプロトが来ることをわかっていた。ゴードに話すとどうも普通のやつだった。ゴードは言った。結局は量なんですわ。質だってそりゃ大事でしょ。でも数は打たなきゃ当たらない。それは現代のような状況でも同じことですわー。部下を生贄にしているって?それは心外ですな。量を打てば自然と弾かれるものは当然あるんです。プロトは思った。なるほど賢いと。そして本題に入った。ラーミア・シュルタンという科学者を知っているな?はいもちろん知っています。彼女とコンタクトを取りたい。如何様な理由で?込み入っている。理由は後だ。彼女と連絡を取れるか?ここからなら諜報活動騎兵を送ればなんとかなりますが確証はありませんね。連絡先だけでもわかれば。彼女はどこにいるんですか?南部ヤマトだ。ああウーラー元首がやっているあの国ですね。ちょうど昔俺がコネを作っといてやりましたよ。よかったですね。

ほんとうか。それなら大丈夫そうか?ウーラー元首には昔会ったことがあります。どうもアガティールが嫌いで南部ヤマト内に諜報機関を作ろうとしていたんです。でもできなかった。それは南部ヤマトの法律に起因する原因でした。俺はその法律を排除するよう国会に働きかけて成功しました。今の南部ヤマトに諜報機関があるのかはわかりません。その前にバイルに逃れてきましたから。そこでどうしたんだ?そこでバイルの軍に志願したんです。すぐに隊長まで上がれましたよ。もともと運がいい方なんです。

お前の話はわかった。

南部ヤマトのラーミア・シュルタン

彼女に連絡が取れるか取れまいかやってみてくれ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

こうして諜報活動が亡命先の島国から始まった。

バイルはセンティーヌとなり日が浅い。それでも付いてくる人間が多いことが証明するのはプロトの人柄と国への愛国心である。豊富で資源で取引先関係国も多かったバイルに軍靴の音が(それも敵国の)やむなく聞こえてきたのは資源目当てであろう。なんとしても故郷を取り戻す必要があった。ガイアスがなんだ?あんなものどうにかしてやる。まずはラーミア・シュルタン探しだ。そこから切り開いてやる。置かれた場所で咲けという標語はまさに今のプロトの立場に等しい。みんなも付いてくる。

見ず知らずの島国で亡命し勝手のわからないまま強大な帝国に反乱を起こすという大きな花を咲かせてやるのだ。当面のプロトの読みは当たっていた。

南部ヤマトではラーミア・シュルタンが庇護者を躍起になって探していたのだ。

<ここからまた世界が動く。>


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