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GAIAS-ガイアス【帝国からの独立】  作者: nanayoshisekai
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第十ニ章

南部ヤマトでは桜が咲いていた。いつの時代も花は季節を伝える。感慨深いと人に思わせる。いつか桜のように大成できたらなと。

戦争は技術革新の波を引き寄せる。統治者がどのように考えていようがいまいが人々は革新の恩恵を受けるようになる。この時代でもそうだった。南部ヤマトの技術者鳴海は感動に震えていた。ある装置が完成に至ったことで自らの名声が高まると期待していたのだ。その装置はおもちゃのピッケルのような図体をしていた。一体全体何が出来るのか。誰もがそう思うだろう。しかしくだらないようで役に立つ技術や役に立たないと思っても貴重な財産になりうるような技術というのはこの世界にはごまんとある。鳴海もそのような開発者のごく一人だった。

ーそれは桜に使う技術だった。

開発した翌日庭の桜で仲間たちとともに実験を始めた。もうできることはわかっている。問題はどれくらい効果が続くかだ。+二週間?いやそれでは駄目だ。おそらく予想や期待値通りに行けば+2ヶ月というところだろう。この国をもっとわくわくさせてやる。そう願っていた。

「実験成功です。」

マスコミたちが集まってきた。

この戦争の時代でももちろんメディアは活動をやめない。新しい面白いことがあるとマイクを持った銀蝿のように集まってきては歌い出す。いやもちろん悪い意味ではない。銀蝿はいい生き物である。

ついて技術の完成にこぎ着けた。

このおもちゃのようなピッケル風の形をしたこれで

桜の咲く期間を+2ヶ月間延長できるのだ。

マスコミにも知れ渡った。

まずこのピッケルを桜の幹に軽く指してそこに簡単に傷をつける。そしてついているボタンを押すだけで製品に充填されていた液体が桜に流れ込みまるで魔法のように開花の時期を+2ヶ月間も増やすことができる。桜は進化する。

マスコミから声が上がった。

「あんたは天才だ」

鳴海は誇らしかった。

この桜の国、南部ヤマトにおいて桜を長期間咲かせることになんの意味があるのかわからない。ただそういう技術を開発したことで社会の季節に対する味方や考え方、土着の風土まで変わってくるとしたらどうだろう。

ニュースは国中を駆け巡った。この暗い戦争の時代にいいニュースだと誰もが言った。

鳴海はすぐに政府に呼ばれ参考人として政府機関に助言する立場になった。

このおもちゃはサクラ便と呼ばれるようになった。瓶のように丈夫で製品を長持ちさせることと国民に桜の知らせを長く保たせることから宅急便と掛け合わせてつけられた名前だ。

サクラ便は使い方は簡易だった。誰でも操作できボタンを押すだけでその桜の開花寿命を延ばすことができる。関連技術は国中のライバルたちが挙って開発した。一番有用だったのがスマホを使ってサクラ便に対応済みの桜なのかどうかを教えてくれる技術だった。その技術が開発されたことで政府はある計画を思案した。

それは国中の桜をサクラ便対応済みにして国民を喜ばせるというものだった。

すぐに国土交通省に専門室が設置され鳴海はそこの部長を務めることになった。

一ヶ月が経った。

政府が大々的に国民に宣伝している。

サクラ便を使って国民を元気にしよう。それがスローガンだった。老若男女、子供までこのプロジェクトに興奮した。子どもたちはサクラを見つけるたびに大人たちに伝え国中の桜がサクラ便対応済みとなった。

ただこのプロジェクトは予想以上に大変だった。

南部ヤマトには至る所に桜が植えられている。よく知られた桜は簡単だったが問題は数が多すぎることだった。そこで役立ったのがライバル社が開発したスマホを使って対応済みか調べる技術だった。このおかげで各地の桜は5ヶ月あまりで調べ上げられすべての桜がサクラ便対応済みとなった。

子供から大人まで夢中になって桜に熱狂したこの時期は戦争で傷ついた心を和らげるのに十分だった。

鳴海もその後いろいろなところに呼ばれ開発秘話を語ったりで忙しい毎日を送ることになる。

           *

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

トレスカーザミーアの情勢は世界中を揺るがしてきた。もともと反乱が多い国だったが今回の件は大打撃で政権与党は自らの保身へとすぐさま入っていった。国民、それも南部ヤマトの国民はトレスカーザミーアに同情していた。メディアが云っている新型兵器がまさか自分たちの国が造ったなどとは思いもせず一般国民は詳しい事情は知らないままであった。友好関係を結んでいた両国である。南部ヤマトはトレスカーザミーアに対しその土地柄特有の人材の輩出に好意を抱きトレスカーザミーアは彼に対しその技術力の高さと温厚な国民性に好意を抱いてきたのである。

その日はガイアスが史上始めて登場した日のことだった。三機のガイアスは任務を終え帝国からの指示により帰投命令に従っていた。だが途中で一機で問題が生じた。プログラムエラーだと思われた。今は帝国が接収したガイアスであるがもともとは南部ヤマトの研究機関が開発した機体である。上層部の指示が下った。二機に対しては帝国本部へと帰投させ一機は南部ヤマトへと向かうことになった。ゆく先々で市民が上空を見上げている。見たことのない謎の物体に対し多少なりとも好奇心を抱いているようだった。

南部ヤマトの政府はウーラーが指揮を執っていた。政治腐敗に関してはさすがは先進諸国といったところであまり無かった。だが強すぎる強迫的な強調圧力は国民の中で国民自身が嫌気を感じているところだった。それは先の戦争でアガティールに負けたことに由来するものだった。アガティール帝国は南部ヤマトに勝った際占領軍として各地へ軍隊を派兵しついには憲法まで変えることに成功した。

この憲法では南部ヤマトの技術の供与や資金、生産能力、土地の法律上の果実などを帝国へと無償で提供することが定められていた。また帝国同様に通報制度を設置し国民同士で監視し合うことが義務とされていたのだ。そのことが数十年に渡って繰り返されてきたことで国民は強い強調圧力に屈していたのだ。とりわけ警察機構の権限の強化は異常といえるほどだった。国民は警察に怯え指示に従うことを好んでいった。だが中にはそんなことが嫌だったという国民もまだ多くいた。そういう国民がよく言っていたのがあのときに戻れたならなあというフレーズと信念だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ガイアスが上空を飛んでいた。南部ヤマトまで50キロ。パイロットは無名の戦士である。もちろん帝国人である。

パイロットに目的地がもうすぐであることをモニター信号で伝える。

ガイアスの青い機体色が歪に輝いてる。

南部ヤマトの農民だった。

なんだあれは?

最初に気づいたのが農民だったのは国境地帯は開発が遅れていることに起因する。そういう人たちは貧しいながらたくましく生きていた。

農民は空に謎の光があることに気づいた。何処の部隊だ?しかもこんな時間に?

凄まじい速度で通過していく機体。

なんだ俺夢でも見てるのか。

初見でガイアスを新機体と見抜けるものはおそらくはいない。今はまだ報道されていない事情だし何よりスピードがそれほど早くて何ら焦点が合わないようだ。人間には。

ガイアスは首都を目指していた。

目的の国は到着した。南部ヤマト。古くからある技術立国だ。この機体、ガイアスもここで製造された。ガイアスはまるで生き物かのように故郷に帰ってきたことを嬉しく思っていたのだろう。もし生きていたのならだが。だがこれは機械である。

首都に到着し一番の繁華街にガイアスは腰を下ろした。光の点滅とともにそれは図体を大地に下ろしたのだった。

すぐに人が集まってくる。最初は数人だった。しかし国民はそれが見たこともない異常な事態だということを理解するのに時間はかからなかった。人がどんどん集まってくる。50人ほどが集まってガイアスをすぐに囲んで撮影を始めた。みんな目がキラキラしてすごいものの目撃者になったと興奮していた。数人はスマホを使って別の人へすぐ来るようにと呼びかけていた。警察が到着した。警察はすぐに市民に対し近づかないように呼びかけた。その警官たちの目は怯えているように映った。ビクビクしながら拡声器を使って危ないですから近づかないでくださいと訴えていた。どこに報告したらいいのやらとどの警官もしどろもどろだった。突然市民の一人が警官の制止を振り切りガイアスに近づいた。同調圧力が強いこの国民である。最初はおかしなやつに見えたのだったがそれが合図だった。おかしいのは警官だった。みたこともない未知の機械に対しまるで子供のようにはしゃいではカメラを向けている。その場を取り囲んだのは市民の方だった。一斉に人雪崩のように人が殺到する。警官は意味を為さない。

警官がなんだ?あっちの方がすごい。

非日常が同調圧力を突破した。

警官は応援を呼んでいるが市民のほうが圧倒的に多くなる。1万人が集まってガイアスを一目みようと押しかける事態となる。国家権力に対しここまで国民が無視したのはこれが初めてだった。それほどまでに未知の機械に対して好奇心が勝ったといえる。それは非日常の到来であり童心に帰って遊ぶ子ども心のように固い団結を生んだのだった。

ガイアスのパイロットが通信をしている。

何技術者はいない?この国に?

どうやら手違いで来てしまったらしい。

技術者はもちろんこの国にいる。それも開発者自身もだ。しかし彼らはガイアスを拒んでいた。

それは帝国を拒むことと同じである。

ガイアスが帝国に使われトレスカーザミーアで起こした戦争のことを技術者は知っていた。

そのことが彼らがまるで神隠しにあったかのように結託して居留守を決め込んだのだ。

帝国上層部はガイアスのパイロットに通信していた。

この国に技術者はいないようだ。仕方がない、帝国で調整する。すぐに帰ってこい。

ガイアスはそれからまた光を点滅させて突然離陸した。音は機械音。風を切っているわけでもなく市民は推進力もなしにどうやって飛んでいるんだろうと誰もが思った。

光の点滅が早くなる。周囲に光が飛散しガイアスは帝国へと向かった。

その様子をまじまじと見ていた人物がいる。

ガイアスの生みの親にして天才技術者

ラーミア・シュルタンである。

彼女は生んだ子供が帝国に利用されている事態に拒否感を覚えていた。

後にこの技術者の関わりにより世界は大戦を経験することになるのだ。

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