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泣き虫魔法少年アーサーと白猫ノーラの奇妙で憂鬱な冒険  作者: ヨシオカセイジュ


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眠れない夜

 アーサーたちが部屋に戻ると、使用人たちが黙々と部屋の片付けを行っていた。

 さすがに吹き飛ばされたソファーは別のものに変えられていたが、大蛇によって荒らされていた室内はすっかり元どおりきれいに片付けられていた。

「すごい、あんなに酷いことになってたのに…!」

 感嘆の声を洩らすアーサーを横目に、レスターは室内の様子をチェックすると、使用人たちの働きぶりに満足そうな表情を浮かべ、声をかけた。

「OK、ジェントルマン。それでは我々は退室するとしようか」

くるりと向きを変えると、アーサーとノーラに頭を下げた。

「それではおやすみなさいませ、アーサー様、ノーラ様」

「はい、レスターさん」

「アーサー様。明日は朝から家庭教師の授業がございます。寝坊はなさらないようにお願いいたします」

「あー、はいいい……。わかりました」

一応返事はしたものの、『こんな事になっても、授業は受けなきゃいけないのか。もういいんじゃない?』と心の中でずっと考えていたアーサーに、ノーラがピシャリと言い放った。


「アーサー、あんたサボろうとか考えちゃダメよ。ちょっとは常識的なことを身に付けないと。いい機会だから、ちゃんと勉強しなさい」

「……うん」

まるでノーラに心の中を読まれてる様で、ドキッとした。


 アーサーはパジャマに着替えると、ベッドに潜り込んだが、目が冴えてなかなか寝付けない。

『ヘンリーさんのモーターサイクル、カッコ良かったなあ。あんなのに乗ってどこまでも走って行ったら楽しいだろうな。

 パパもあちこちツーリングしてたって言ってたけど、色んな所に行ってたのかな、どんな事を考えてたのかな。

 そうだ、そういえばさっきの光、やっぱりホタルかな。日本にいるときは夏になったらパパに蛍狩りに連れて行ってもらったな。

 でも、季節が違うし、そもそもイギリスにホタルっているのかな?どうなんだろ』

 細かい事が気になってしかたなく、一足早くベッドに入り隣で寝ているノーラに声をかけた。


「ねえノーラ。さっきさあ……」

 返事はない。

「ねえねえ、ノーラ。もう寝たの?ねえってばあ〜」

 ノーラの手がアーサーの頬にニューっと伸びてきて、口元をひねり上げた。

「痛い痛い痛い〜!」

 泣きの入るアーサーにノーラが鬼のような形相で叱りつける。

「早く寝なさいって言ってるでしょう!明日も授業はあるんだし!夜更かしは美容の大敵なのよ!」

「わかったよう……」

「そんな事よりあんた、おトイレは行ったの?」

「えっ?だ、大丈夫だよ」

「オネショするんじゃないわよ?早く寝なさい!」


 何だよノーラのケチケチケチケチ!ちょっとくらい話してもいいじゃんかなんだよーとブツブツ小声でしゃべっていると、黙って手が伸びてきてもう一度頬を捻られた。

「ひいいい〜いたあいいい、ごめんなさいいいい!」

「寝・な・さ・い」

 これ以上喋ったらぶち殺すぞ、ぐらいの圧力に満ちた声だったので、アーサーはノーラに背中を向けふとんを頭からかぶり、心の中で日本の両親に祈った。


『パパ、ママ、ノーラがぼくを虐待します。ひどいです。もう日本に帰ったらノーラのご飯は、煮干しかメザシだけで十分だと思います』

 最後にもう一度、ぎゅううううううううううと無言で頬が捻られた。

『何でわかるの〜!!』


 アーサーは、半泣きの状態で眠りに落ちていった。

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