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番外話「百年戦争概略」

 百年戦争。

 後年、そう呼ばれる戦争が始まったのは、九十七年前の出来事であった。

 その間、いくつもの条約や協定が結ばれたものの、戦域は拡大の一途を辿ってきた。


 そもそもの発端は、ワープ航法の開発にまで遡らなければならない。

 重力制御法とワープ航法の発見は、人類の到達範囲を驚異的に押し広げた。

 いわゆるソル太陽系外において、初めて植民可能惑星が見つかったのは、ワープ航法の実現から、約二十年後のことであった。人類は、この年を宇宙暦元年とし、その後の七百年で、三つの太陽系に四つの植民惑星を得るに至った。

 だが、その過程は、ワープ機関の限界がクローズ・アップされていく過程でもあった。

 問題点は大きく分けて二つあり、ひとつが跳躍距離、もうひとつが重力干渉の制限であった。開発当初は、やがて無限の距離を跳躍するかのように考えられていたワープ航法であったが、それは大きな間違いだったのである。

 発見され、開発された太陽系間においても、一回のワープでは距離が足りず、ほとんどが二回以上の長距離ワープを必要とした。また、大気圏内は当然として、恒星の重力圏内においてもワープは行うことができず、結果として、各太陽系の最外周部に設置した、交易用宇宙ステーションを介しての航行が必要となった。さらには、恒星やブラック・ホールから離れすぎて、重力干渉が小さすぎる空間においてもワープは制限されることが判明し、星間航路はより条件が絞られていく。人類の予想以上に、惑星間の実質的・時間的距離は大きく、有人惑星間の連帯感は薄れざるをえなかった。

 一方この頃になると、人類の到達範囲が限定されるという問題もでてきた。跳躍距離と重力干渉という二つの枷をはめられたワープ航法が、遂に、より外側への航路を見いだせなくなったのである。ワープができない宙域の連続体。人類を包み込んだ巨大なる壁。いわゆる「ワープ不可空域」の登場である。

 かくして、限られた空間の中、完全なる自治を望む植民惑星と、既得権の確保に執着するテラ政府は、その対立を深めていくこととなった。

 しかし、宇宙暦七百一年、そのワープ不可空域において、技術体系が不明な宇宙船との接触及び遭遇戦が起こると、状況は変わらざるをえなかった。

 二度目の接触は、それから二年後。この時初めて、相手が同じ人類であると判明する。

 彼らこそは、初期の惑星移民時代において、行方知れずになっていた者達の子孫だったのである。

 管制機関のトラブルにより、目的の植民惑星を素通りし、亜光速でワープ不可空域に突入した彼ら移民団は。その先で、目的とは異なる、しかし新たな植民可能惑星を発見していたのである。

 相手が同じ人類であることを知り、各惑星は友好条約を結ぼうとしたが、彼らは応じようとしなかった。

 もともと、ワープ不可空域突破の際、推進機関を修復するまでの間、亜光速の世界にいた彼らである。その時点で、通常空間にいた他の人類と比べて、一世紀ほどの未来へと飛んでしまったのである。そんな彼らが、未開の惑星を切り開き、ようやく同胞との再会を果たしたと同時に、問答無用の戦闘をしかけられたのである。それは到底、許せるものではなかった。ましてや彼らの技術レベルは、当然ながら一世紀分は遅れていた。停戦協定など結ぼうものなら、あっという間に植民惑星として組み込まれてしまうことは、火を見るよりも明らかであった。

 彼らは選択をする。総力を上げて、自衛手段として戦力拡大の道を歩むと。

 必死になった彼らの兵力増強のスピードは凄まじく、テラと各植民惑星の危機感は増大した。

 そのような状況下、最初の接触から十年後に、テラ政府を核とした内惑星連邦が成立。これに追い立てられるようにして、急速に軍事国家化した彼らは、宇宙暦七百十三年に、銀河帝国政府を樹立した。

 かくして二つの勢力は、ワープ不可空域を挟んで戦闘を繰り返すこととなったのである。

 そして、現在。宇宙暦七百九十八年、四月十七日。人類は、いまだ混沌の中にいた。

<次回予告>


 いつもどおりに訓練は始まり、いつもどおりに訓練は行われ、いつもどおりに訓練は終わった。

 つまり、つらい一日であった。


次回マーベリック

第二章 第六話「翌日」


「どうして欲しいと言いますの?」

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