番外話「そこに至る過程」
光の矢が、放たれた。
一瞬、暗闇が引き裂かれ、何かが倒れる音がした。
「やったか?」
男が尋ね、男が答えた。
「おれの腕を信じないのか?」
怒った感じはない。あくまで声は明るかった。
「いや」
「なら、そういうことだ」
二人の男は、暗闇の中を疾走していた。
一定の間隔で非常灯が設置されていたが、その間隔は長く、照らすべき空間は、あまりにも広かった。
周りで金属音が響き、男達は近くの建材の影に身を滑らせた。
「ブラック・レーザーに、高圧ボウ・ガン…。ったく。物騒なもん使いやがる…」
「動くぞ。囲まれると厄介だ」
「閃光系か? 爆音系か? めんどくせーな」
影から飛び出し、再度の疾走に移る。
そして繰り返される金属音。
光の束が男達の手元から広がり、周囲で人の倒れる音がする。今度は、先ほどより多い。
「やるねえ。だが、きりがねえ。通信が制限されてるのは、いてーな」
「頭を叩くか?」
二人の声は、息切れすらしていない。走るスピードを考えれば、両者とも、信じられないほどの肺活量と心臓であった。
「その言葉、待ってたぜ。見当はついたか?」
「だいたいな」
後方から、風を切る音が聞こえた。
二人の走る速度が増し、横に伸びた通路へと飛び込む。
瞬間、元いた空間に光の洪水が溢れる。
「…ビンゴ」
両目を覆っていた腕を外し、もう一人の姿を確認する。
「耳を狙われたら、やばかったな」
その巨体の、大きな肩をすくめる。
「目立ちたくはないのだろう。一応、な」
もう一人の男も、腕を下げる。その顔には、サン・グラスがかかっている。
「お前もしておけ。念のためだ」
そう言って、サン・グラスと耳栓を差し出す。
「なんだあ。おれだけか、危ない橋を渡ってたのは?」
「悪いな。時間がなかった」
渡された対閃光用のサン・グラスをかけ、対爆音用の耳栓をする。
「やつら、私設の傭兵部隊だぜ」
「そのようだな」
「まあ、わかってりゃ、いいけどよ」
耳栓をしても、ある程度は会話ができる。一定以上の音量のみを遮断するための耳栓であった。
「んじゃ、まあ、いきますか…」
通路を出た二人は、敵の本陣へ向け、疾走を続けた。
<次回予告>
宇宙暦七百九十八年五月二十三日。三人は、おしゃべりを楽しんでいた。
ナチアが断言すると、ユーキは困ったように顔を横に向けた。その頬は、すでに赤くなっている。
次回マーベリック
第四章 第十八話「謹慎」
「恋する女って、すごいんですね」




