93「早朝とウィルソン」②
シャワーを浴びたレダたちは、腰にタオルを巻いたまま窓を開けて風を受けて火照りを覚ましていた。
「すっきりしましたね、レダくん」
「はい。いろいろな意味ですっきりしました」
「それはよかった。友人として何か悩んでいるのなら話をお聞きしますが?」
ウィルソンと隣り合って椅子に座る。
騎士たちも少し離れた椅子に座っているが、傍には剣がある。
裸になる場所を狙われることはあるのだろう。
風を受けて気持ちよさそうにしている騎士たちは自然体ではあるが、いざという時に動くことができる歴戦の戦士なのだろう。
「ここだけの話で、ひとつ」
「もちろんです。騎士たちに聞かれますが、構いませんか?」
「はい。むしろ、皆さんのご意見もほしいと思っています」
レダのその声に、騎士たちの視線が集まった。
「単刀直入にお聞きしますが、娘が結婚するってなったらどう思いますか!?」
レダの質問に、騎士が数人その場に崩れ落ちた。
腰にタオルを巻いただけの騎士が、剣を抱き抱えてしくしく泣き始めた姿は異様だった。
「あ、あの?」
「すみません、先日娘がお嫁に行ってしまって。まだ十五歳なのに!」
「私も、娘が婚約しまして。まだ十三歳ですよ! いえ、良い縁談ではあるのですが、パパかなしい!」
レダはブワッと涙が出た。
こんな近くに先達がいるとは思わなかった。
「私なんて、娘が学校で出会った男と駆け降ちして!」
レダは目眩がした。そういう展開もあるのかと、身震いする。
「私もいいでしょうか」
ウィルソンが手を挙げた。
「我が子のように可愛がっていたディアンヌが、男として人として最低な男にひっかかってしまった時の私は、もう胸をかきむしりました。もっとあの時、対処をしていれば、聖女だからと行動を慎重にせず早くミナちゃんとルナちゃんを保護しておけば、と今でも後悔しています」
「わかります、教皇様! ミナ様は我々にも手を振ってくださいますし、ルナ様も気さくにお声をかけてくださいますし! 今まで貴族の令嬢たちと顔を合わせる機会はありましたが、大半の方が良い方ですが、時には泣くほど嫌味を言われることもあるので、本当にミナ様とルナ様は天使です!」
「そうですなぁ、特にミナ様は聖女様を超える傑物になっていたかもしれませんな。――あ、いや、レダ様との日々を否定するわけではございません。つい口がすべりましたな」
「いいえ、ミナとルナの可能性は今からでも追いかけてもらいたいと思っています。ミナは結界も使えるようになりましたので、どんどん成長していくのを近くで見ていて楽しくもあり、嬉しくもあり、幸せです」
いつかお嫁に行ってしまうミナだが、誇りに思う愛娘だ。
だからこそ、レダも娘が誇れる父親であろうと思う。
――それはそれとして、まだ嫁に行くには早いが。
ルナにも散々言われて納得しかけていたが、先達である騎士たちをみて、できるだけ抵抗しようと思ったのは秘密だ。
その後、子供の話で盛り上がり、レダとウィルソン、そして騎士たちの絆が深まった。




