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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
三章

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59「異形との戦い」①




「……本当に、ニュクトなのか? おい、なんとか言えよ!」


 異形と成り果てた女性に、レダが叫ぶ。

 そもそも、レダには目の前の怪物が本当にニュクトなのか判断さえできない。

 彼女の名残などなにもないのだ。


 紫色に肥大した肌。

 大木のように太い手足。

 牙が生えそろい、赤い瞳、毛のない頭部からは二本の角が生えている。

 体格など、レダを見下ろせるほど高い。


 とてもじゃないが、元人間だとは思えない変貌を遂げていた。


「ニュクト!」

「がぁああああああああああああああああああああっ!」


 レダに対する返答は雄叫びだった。

 宙に浮いていた異形が、音を立てて冒険者ギルドの屋上に着地する。

 ずしんっ、と建物が大きく揺れた。


「ぱ、パパ? あれなに? なんなの!?」


 ルナが悲鳴を上げる。

 ミナに至っては声もないほど、恐怖していた。


「……ヒルデ、あれが邪神の眷属、でいいのか?」

「わからない。私だって見たことはないんだ。ただ、あの禍々しい姿を見ていると、そうだとしか思えない」

「あれが邪神の眷属を降ろした結果でも、そうじゃなかったとしても、放置はできないだろ?」

「無論だ。というよりも、向こうはこちらを敵と認識しているのではないか? こちらを見て、唸りをあげているぞ」


 ヒルデガルダの言葉通り、異形がこちらを見て、耳障りな声を出していた。


「……あのさ」

「うん?」

「こっちっていうか、俺を睨んでない?」

「……かもしれん」

「いや、絶対俺のこと睨んでるよ! ――って、ほら来たぁ!」


 唸りを上げて睨んでいた異形が、屋上の床を蹴って疾走した。

 その勢いで、屋上の一部が砕けてしまう。


「――早いっ! ヒルデ、障壁を硬くしてくれ!」

「もうしている!」


 異形がどれほどの力を持っているのか不明だが、邪神の眷属ということを考えて、念には念を入れて防御に徹する。

 しかし、


「がぁあああああああああああああああああああっ!」


 異形のふるった拳は、レダたちを守る障壁を砕いた。


「――な」


 ガラスが砕ける音がして、障壁が粉々となる。

 そのままの勢いで突っ込んでくる異形から、レダはミナとルナを抱えて大きく飛んだ。

 ヒルデガルダも、単身で跳躍して逃げることに成功する。


「――馬鹿な。ドラゴンのブレスだって短時間なら受け止められる私の障壁を、ああも容易く砕くことができるとは……」

「ヒルデぼうっとするな! 次が来るぞ!」


 自慢の障壁を破壊されたショックを覚えていたヒルデガルダに、レダが怒鳴る。

 ヒルデガルダがハッとしたときには、眼前で異形が拳を振り上げていた。


「お、おのれ!」


 とっさに障壁を張ることに成功するも、ヒルデガルダは再び障壁を砕かれ、吹き飛ばされてしまう。


「きゃぁああああああっ!」


 地面を転がるヒルデガルダに、娘たちを抱えたレダが駆け寄る。


「大丈夫か、ヒルデ?」

「あ、ああ、問題ない。しかし、厄介だな」


 冷や汗を流すヒルデガルダ。

 レダも同じだ。

 異形がニュクトだとすると、力が想像以上に跳ね上がっている。

 このまま戦って勝機があるのかとさえ、疑ってしまう。


「ねえ、パパ。抱きしめられてるのは嬉しいけど、戦うならあたしも手伝うわ」

「だけど、ルナ。どうやって戦えばいいんだ?」

「えっと……パパとヒルデが魔法で動きを止めて、あたしがナイフ?」

「そもそもナイフが効くのかどうかもあやしいぞ?」

「目や口を狙えば、通るでしょ」

「……っ、またくるぞ!」


 異形は作戦会議すらさせてくれない。

 突っ込んでくる異形が、またしても拳を振り上げる。

 動きはどうやら単調のようだ。

 動きもそれほど速くないため、攻撃を避けるのは難しくなかった。


 が、


「――この馬鹿力が!」

「あんなの食らったら一発でミンチになっちゃうんですけど!」

「ヒルデ! 離れて攻撃だ!」

「わかった!」


 異形の一撃は、床を蜘蛛の巣状に陥没させるほどの威力があった。

 障壁を単純な拳の一撃で破壊できるのだから、この威力に納得ができる。

 しかし、障壁を張っても突破してくる相手とどう戦えばいいのか。

 レダは、咆哮をあげる異形から目を離すことができないまま、冷や汗を流すのだった。





がうがうモンスター(https://futabanet.jp/monster)様にて、コミカライズ連載スタートしております!

原作小説と一緒にお楽しみいただけると幸いです!

どうぞよろしくお願い致します!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 家族を守れる力がないやつが家族を襲うやつを見逃しすぎる。 家族が手を汚すのと家族が痛め付けられ殺されるのはどっちがいいの? いいとこ取り出来るのは強くて用心深いやつだけかと思います。
[良い点] 三章 59「異形との戦い」① 更新ありがとうございます。 [気になる点] 何とか時間稼ぎをして、ナオミに助けてもらいましょう。 [一言] 次回の更新も、楽しみにしております。
[一言] 雑魚一体を生け贄に捧げ、『デー○ンの召喚』。
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