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66 そして旅立てない

国王たちとの謁見を済ませた後、技術者の派遣などについての調整はエルゼフたちに丸投げした。王牙とエルゼフ、その部下である何名かのゴブリン・インテリジェンスを【ゲート】で呼び寄せ、事後処理に当たらせる。


俺はフォレストピアの代表として、王牙とエルゼフとの二人を任命した。

王牙は俺やアクアたちを除けば最も戦闘力が高い。インテリジェンス・モンスターである彼らは『強い者に従う』という掟のようなものがあるので、適任だろう。

エルゼフについては、内務や実務といった部分の適正から選出した。インテリジェンス・モンスターは基本的に戦闘脳なので、事務系統が壊滅的だ。その点、ゴブリン・インテリジェンスは事務処理能力が高い。

要は武官の代表が王牙、文官の代表がエルゼフというわけである。


エスペランサ王からは「また会おうぞ」と言われたが、俺にその気は無い。

フォレストピアの自治は王牙やエルゼフに任せるつもりだし、あまり王族に関わる気も無いからだ。ブリトニア王国のイメージがあり、どうしても王族は好きになれないし、敬遠してしまう。

腹の探りあいなど、一介の高校生である自分にはできそうにない。


エスペランサ王やエリザベート王女に別れを告げた後、俺たちはタラゼアの町に戻り、ホフマンさんから彼の自宅で食事をご馳走してもらった。本当はタラゼアの町に着いた日に、ナーシャたちを助けた礼にと用意された席だったが、なんだかんだで先伸ばしになってしまっていた。

かなり豪華な食事にタツマキはご満悦だった。俺も気に入った料理がいくつかあったので、チャーリーに頼んでレシピを世話役であるカーラに伝えてもらった。


翌日にはレブンを中心とする交易隊がタラゼアの町に到着。ノーランド商会を中心としたエスペランサ王国の商会との取り引きについて調整を開始した。


フォレストピアの交易品は香辛料や調味料、ハーブが中心だ。この世界の香辛料や調味料は実になっており、それを磨り潰すことで使われる。塩の実なんてものを見たときは驚いた。岩塩などもあるらしいが、やはり調味料の類いは高級品だった。

原初の大森林には、こういった実を付ける木々が多く生い茂っている。魔素をきれいに流す必要はあるが、実がなるスピードも早いので交易品にはもってこいだった。

実は交易品の候補は別にもあったのだが、これは外に出すより自分達で活用した方が良さそうだったのでリストから外した。


対してフォレストピアが必要としているのは日用品の類いだ。具体的には調理器具や下着などである。人間に近い暮らしていくのに必要なものが不足していたので、それらを大量に必要としていた。と言っても、一気に需要が増えると物価が上昇してしまう。本当に必要な分は素材を仕入れて、自分達で作れないかと思っている。


そうそう。交易隊の中に何故かリンの姿があったのが印象的だった。いろいろ集中しているようだったので声は掛けなかったが。


落ち着いたところで俺たちはタラゼアの町で最初にとった宿に戻り、今後の予定について検討を始めた。日用品や衣類の確保に目処が付いたし、都市計画についても技術者を派遣してもらえることになっている。

あと必要なものと言えば、武器や防具だ。特に武器については、魔族との戦いには欠かせそうにない。

ギルバート王子から教えてもらった通り、目的地はバルデビア大公国だ。しかし、首都の場所を確認したところ、かなりブリトニア王国に近いことが判明した。どうしたもんかと悩んでいたら、


「それならダイチも<変化>すれば良いんじゃないか」


というタツマキの言葉で方針が決まった。確かに、その通りである。なぜ気が付かなかった?

安易にチャーリーに頼ろうとしないよう心がけていたせいで、いろいろ見落としているかもしれない。反省だ。


そんなこんなでバルデビア大公国に向けて出発しようとしたところ、ウルフェンから<念話>で緊急の通信が入った。


(主、少しよろしいですか?)


(どうした?)


(ドワーフ族の少年を保護したのですが、彼から素材の提供をしてほしいと依頼されておりまして、対応に苦慮しています)


(ドワーフ族の少年? 何の素材が欲しいと言っているんだ?)


(ブラックミスリルです)


なんですと?

俺は少し驚いた。

ブラックミスリルは多尾狐が住まいとしていた場所の地下に埋まっている特殊な魔鉱石である。通常のミスリルよりも魔力濃度が高く、硬度も高い。武器や防具に加工すれば、かなり強力なものが作れる。交易品として目をつけていたが、それなら自分たちで加工した方が良いので除外した。


(いかがなさいますか?

 追い出すことは簡単ですが、おそらく一人でも大森林に入ってくる勢いです)


(他に仲間は?)


(原初の大森林に着いた頃には冒険者を護衛として雇っていたようですが、キラーグリズリーの襲撃を受けて逃げていきました)


うわぁ。

キラーグリズリーはA級の大型モンスターだ。退却するのは分かるが、護衛対象を放って逃げるのは感心しないな。


(いかが致しましょう?)


(う~ん。とりあえず戻る)


(申し訳ありません)


こうして俺達は、【ゲート】でフォレストピアまで帰ることになったのだった。




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