49 報告タイム3
俺達は拠点となるゴブリン・インテリジェンスの集落に帰ってきた。
ちなみにエルゼフたちはサラサ湖から歩いて帰ってくるので、おそらく二日ほどかかるだろう。【ゲート】では大人数を移動させるのは大変だし、彼らの訓練も兼ねているからな。
異世界に飛ばされてから結構忙しかったし、束の間の休息をとらせてもらった。
その間、先ずは保留にしていたインビジブル・スキルとバージョンアップである。帰ってきて落ち着いたこともあり、俺はこれらを実行することにした。
ALL Right.
インビジブル・スキルを解放しました。
新たにユニーク級スキル<完全模写>を取得しました。
・・・。
あれ、一つだけ?
Answer.
他に取得予定だったA級スキル<闇衣>とB級スキル<身体強化I><魔力強化Ⅱ>は既に複製済みです。
おっと。
なんかちょっと損した気分だな。ユニーク級スキル<完全模写>に期待か。その効果は?
Answer.
任意のスキルを一つ、一度だけ完全再現します。
・・・。
それってチャーリーさんの<スキル複製>があれば要らないんじゃ・・・
Answer.
そんなことはありません。
<スキル複製>はどうしても複製過程で劣化することがあります。<完全模写>があれば、完全な形でコピーすることができます。
そ、そう?
なんか釈然としないが、まあいいや。次はバージョンアップだね。
Report.
スキルのバージョンアップを開始します。
成功しました。
各種スキルの効果がレベルアップ。
レジェンド級スキル<ナビゲーター>がバージョン2.00にアップグレードしました。
新たな固有能力として<識別化><サーチ範囲拡大>を取得しました。
ほうほう。どんな効果が・・・
Report.
<識別化>の効果により、配下のヒュージ・スライム全てと<従魔契約>を行います。
成功しました。
続けて<識別化>により自動で<コード>の付属を行います。
成功しました。
これによりヒュージ・スライムがモンスターから<インテリジェンス・モンスター>に進化しました。
新たな種族として、<インテリジェンス・スライム>が誕生しました。
これにより<インテリジェンス・スライム>を<従魔>ではなく<眷属>に変更しました。
・・・は?
ちょっと待っ―――
Report.
スキルのバージョンアップにより、S級スキル<神格化>がLV2となりました。
<神格化LV2>により<神格化>の効果が上昇します。
<眷属>の<魔素>が一定値まで浄化されました。<魂>が向上しました。
これによりサーベルタイガーが<ライトニングタイガー>に進化しました。
またインテリジェンス・スライムが<水殀族>に進化しました。
ちょっと待てって言いたかったんですけど!
嫌な予感的中!
なに、<識別化>って!?
なに、<コード>付属って!?
Answer.
<識別化>は特定する必要の無いモンスターに、識別するための<コード>を与える能力です。
この固有能力により、配下にいるモンスター全てと<従魔契約>することが可能になりました。
な、なるほど。
それでアクアの配下でしかなかったヒュージ・スライムたち全員と<従魔契約>したわけだ。
Answer.
その通りです。
で、なんで<従魔契約>したヒュージ・スライムたちが<進化>したわけ?
インテリジェンス・スライムに進化してインテリジェンス・モンスターになったって、ややこしいなオイ。
Answer.
マスターのS級スキル<神格化>には、モンスターの<魔素>を浄化して<魂>を得る効果があります。
これによりスライムが持ち得なかった知性を有したため、ヒュージ・スライムは種族としてモンスターからインテリジェンス・モンスターに、<インテリジェンス・スライム>に進化しました。
忘れてたよ、神格化。
あのスライムまでインテリジェンス・モンスターに進化させるのか。
脳とか、どうなってんのかね?
Answer.
<核>の中に存在しています。
・・・むぅ。
で、なんでサーベルタイガーも<進化>してんの?
ヒュージ・スライムなんて<インテリジェンス・スライム>から更に<水妖族>に飛び級進化してますよね。
Answer.
スキルのバージョンアップにより、S級スキル<神格化>がLV2へとクラスアップしました。
各種効果が上昇し、それ故に<眷属>であるインテリジェンス・モンスターの<魔素>が、より浄化された結果です。
やべーよ。
・・・深く考えるのは止めよう。怖いからな。
さて次は他のインテリジェンス・モンスターたちだ。
俺の忠告に従わず、結局は俺の仲間になるため全種族が訪問してきた。まあ予想はしていたが、かなり大変なことになっている。
まずやって来たのは、さすがというか多尾狐だった。五尾姫こと紅葉と、その弟であるレ白葉が代表でやって来た。
彼らにはああ言ったが、魔族と事を構えるかもしれないので戦力は欲しい。彼らも巻き込まれていることに代わりはないし、魔族のターゲットが俺達だけに絞られるとは限らない。俺達の仲間になってくれれば、守りやすいという利点もあった。俺自身が自重しなくなっている自覚はありますよ。
というわけで、多尾狐族を<眷属化>した。さあ、どうなる?
Report.
多尾狐族を<眷属化>しました。
S級スキル<神格化>の効果により、<多尾狐族>は<妖弧族>へと進化しました。
また固定名:紅葉が<原種>であることを確認。
S級スキル<神格化>の効果による<先祖帰り>を適用。
成功しました。
個体名:紅葉は<九尾(五尾)>から<玉藻ノ前>に<先祖帰り>しました。
<先祖帰り>キターーー!
なんとなく予感はしてました。五尾姫こと紅葉は一匹だけ他の個体と違う色をしてたからね。桜花の時もそうだったけど、他の個体とは別格な雰囲気があった。
見た目も大きな狐から、腰の辺りまである銀髪の美人になりました。白と赤の着物で、紅葉の刺繍が施されている。しかも胸元が大胆に開いています。うん、かなりの巨乳。これは目に毒だね。
「これが妾か・・・?」
個体名:紅葉
種族:玉藻ノ前
レベル:201
わお。レベルもスゲー。ウチのツートップに食い込んで来ました。
ちなみに白葉も<妖弧族>に進化。紅葉と同じく長い銀髪の美男子です。元の世界にいたら、アイドルでスカウトされてるだろう、間違いない。
で、ここで問題が起こった。アクアと桜花のポジションを知った紅葉が、自分も側近になりたいと言い出し、白葉に族長を譲ると言い出したのだ。
慌てたのは白葉君である。自分はそんな器じゃないとか一度失敗してるとか言ったが、紅葉の「族長命令」の一言で黙ってしまった。実は俺の側近的なポジションを狙っていたらしく、根回しは済んでいるらしい。
紅葉さん、なかなかのやり手です。
次にやって来たのは黒狼族だった。一族総出でやって来たので、ちょっとした騒ぎになったけど。
三千匹の巨大なオオカミが一斉に押しかけて来る様子を想像してほしい。
Report.
黒狼族を<眷属化>しました。
S級スキル<神格化>の効果により、<黒狼族>は<シャドーウルフ>へと進化しました。
黒狼族がシャドーウルフに進化しました。
見た目が一回り大きくなり、黒かった毛並みが、より黒い闇を纏うようになった。<獣人化>のスキルも得たようで、ライトニングタイガーと同じように普段は人型で過ごすようになった。
更に次はカイザー・コングがやって来た。
俺のことをアニキと呼び、桜花のことを姉御と呼んでいた。チンピラみたいだ。
サクッと<眷属化>した。ちなみに彼の名前は<カイザー>らしい。
狙ってるよな? そうなんだよな?
Report.
個体名:カイザーを<眷属化>しました。
個体名:カイザーは<カイザー・コング>から<猿武帝>に進化致しました。
<クレイジー・コング>並びに<クレイジー・モンキー>も合わせて<眷属化>しました。
<クレイジー・コング>並びに<クレイジー・モンキー>が<猿武族>に進化致しました。
カイザーは<猿武帝>に、そのほかのクレイジー・モンキーやクレイジー・コングたちは、まとめて<猿武族>に進化した。カイザーは金髪のプレスラーみたいになった。クレイジー・モンキーたちも人間に近い容姿になり、少し毛深いぐらいで見た目は区別が難しいぐらいである。
さあ最後が半魚族だ。
彼らは一族がサラサ湖に戻るまで時間が掛かったので、かなり遅れてきた。が、コーヒー豆を持参してくれたので俺は大歓迎した。
というわけで<眷属化>だ。
Report.
半魚族を<眷属化>しました。
S級スキル<神格化>の効果により、<半魚族>は<魚人族>へと進化しました。
半魚族は魚のような見た目から、魚鱗のある人間に近い種族に進化した。
水の中に入ると足がヒレに代わるらしい。
野郎しかいなかったのでアレだが、人魚さんがいるわけですよ。
リアル人魚ですよ!
すげー見てみたい!
今回の報告は以上!
配下というか、仲間が一気に増えてしまいました!
どーすんだよ、これ。
ゴブリン・インテリジェンスの集落は既に一杯で、連中が住むところがない。しかも見た目が人間に近くなったのに、着ているものが布切れである。ある意味パラダイスだが、さすがにマズイ。
う~ん、どうしよう?




