10 モンスターテイム
さて、偉そうなことを言っておいて何だが、何から始めよう?
Answer.
先ずは水と食料の確保が優先です。
次に拠点となる場所を見つけ、仲間を得る必要があります。
衣食住の“食”と“住”の確保というわけか。
Answer.
その通りです。
水は【魔法】で何とかなりますが、水源を見つけておいて損はありません。
なるほど。
しかし“仲間”ってのは、何だ?
Answer.
周囲は魔物だらけです。
ゆっくりと身体を休めるよう、見張りができる仲間は早急に必要です。
そうだった。
現代日本のキャンプやサバイバルとは違い、人を襲うモンスターが彷徨っているのだ。
寝ている間に襲われてはたまらない。
しかし―――
「仲間って、こんな森の中に人がいるのか?」
原初の大森林は高レベルモンスターの巣窟である。人が住んでいるとは思えないし、居たとしても俺のことを信用してもらえるか疑問である。
Answer.
仲間にするのは人間である必要はありません。
「ん?」
Answer.
モンスターをテイムします。
なるほど。
俺にはA級スキル<従魔契約>がある。モンスターを従魔としてテイミングすれば、裏切られる心配もないし心強い。
「よし! どんなモンスターをテイムするんだ?
やっぱりドラゴンとかに憧れるよな!」
ドラゴンは男子の夢である。
Answer.
テイムするモンスターはスライムを推奨致します。
・・・。
は? スライムですか?
Answer.
はい。
スライムって、あれですよね?
青くてプルプルでカワイイあいつだよね?
Answer.
マスターのイメージされているものとは、かなり異なります。
でも、雑魚じゃないの?
Answer.
強くはありませんが、雑魚とも言い切れません。
チャーリーの説明してくれたスライムは、俺の知るスライムとはかなり違っていた。
名前の通りスライム状の身体をした不定形な生物で、なんと物理攻撃に耐性を持ち、睡眠が不要でバラバラになっても核さえ残っていれば再生可能なのだそうだ。
このため駆け出しの冒険者では手に負えず、初心者キラーとも呼ばれているらしい。
しかし知能が低い―――というか無く、攻撃は粘液を飛ばすか体当たりかで単調。
しかも動きが遅いため、普通クラスの冒険者なら苦もなく倒せるらしい。
・・・ダメじゃん!
しかし通常のモンスターをテイムするには、そのモンスターのレベルを越えていなければならないらしい。
スライムは知能が無いので、強ささえ見せればテイムできるとのことだった。
原初の大森林にいるモンスターは最低レベルのものですら40を越えているらしい。
つまりレベル1の俺に選択肢は無いのである。
「仕方ないな。じゃあ、スライムを探すか」
Answer.
3時の方向およそ800メートルの位置に発見しました。
俺の目の前に半透明の地図が表示される。
いくつか黒い●が見える中に、“TARGET”と白い▽印でマーキングされているものがあった。
おそらくこれがスライムなのだろう。
仕事早いですな~。
Answer.
恐縮です。
おそらく黒い●は他のモンスターだろう。
彼らは発見されたりテリトリーにさえ入らなければ襲ってこないらしいので、避けながら進んでいく。
とりあえず拠点が落ち着くまで、できるだけ戦闘は避けたい。
危なげなく俺は目的のスライムがいる場所までたどり着いた。
「・・・でかくね?」
それがスライムを見た始めの感想だった。
俺が知っている某有名RPGのスライムとは似ても似つかないものだった。
青の半透明で、例えるなら巨大なゼリーだ。
その中に丸い核のようなものが浮かんでいる。
目は無い。
なんというか、初見の感想は「不気味」だった。
モンスター名:ユミール・スライム
種族:スライム
レベル:80
危険レベル:イエロー
レベル80!?
スライムの割りに、どえらいレベルだな。
「これ、勝てるのか?」
Answer.
戦う必要はありません。
接近し、A級スキル<覇王の威圧>を使用して下さい。
それだけでいいのか?
戦って勝った後に「仲間になりたそうに、こちらを見ている」みたいなメッセージは出ないみたいだ。チャーリーさんの言うことだし、とりあえずやってみよう。
俺は茂みから出ると、自然を装ってスライムに近づいていった。俺に気付いたスライムから警戒感が滲み出る。
「ピギィィィィィィ!!」
どうやって声を出しているのか知らないが、不協和音が響き空気が震える。一丁前に威圧してきたのだ。
おうおう、そっちがその気なら、やったろうやないか!
俺は<覇王の威圧>を発動した。
ちなみに発動方法はチャーリーに教えてもらっている。
頭の中で<覇王の威圧>をイメージして、相手にぶつける感じだという。イメージは「なんやワレ、やんのかコラァ!?」みたいな感じだ。ヤ○ザかよ。
「ビギッ!?」
途端に不協和音は収まり、重苦しい空気が周囲を支配する。
風に揺れる木々ですら、音を立てるのが不味いとでも言わんばかりに静まり返る。
そして目の前のスライムに変化が起きた。
山のような形をしていたのに、まるでヘナヘナと座り込むような感じで平らになっていったのだ。
Report.
種族名ユミール・スライムより<従魔契約>の申請を受け付けました。テイミング成功です。
早っ!?
そういえば、スライムは実力差を見せるだけで簡単にテイムできる魔物だったな。
なるほど、そのための威圧だったわけだ。
Report.
スキル<従魔契約>を発動し、ユミール・スライムを従魔に致しますか?
YES or NO ?
YES、と。
Report.
モンスター名ユミール・スライムを従魔に致しました。
テイミングした従魔に名前を付けてください。
名前か~。
ペットに名前を付けるみたいなことだろうか。登場人物に名前を付けるのは大事なことだな。
よし、水辺にいたスライムだし<アクア>と名付けよう!
Report.
従魔にしたユミール・スライムの名前を、<アクア>としました。
ユニーク級スキル<魂の系譜>を経由し、S級スキル<神格化>の効果が付与されます。
成功しました。
また個体名<アクア>が<原種>であることを確認。
S級スキル<神格化>の効果により<先祖帰り>が発生します。
え~っと、なに?
事態に追い付けない俺を他所に、ユミール・スライムこと<アクア>が眩い光を放った!
H28.7.24
『名付け』や『ネームドモンスター』という設定を無くしました。




