真理(まり)
中学生になった僕は少しばかり『普通』を好む様になっていた。
目立たず、騒がず、穏やかに過ごせる事を心掛けていた。ただでさえ、不可解な特異体質。バレない様に生活をしなければならなかった。
たまに、集団行動中にキラキラを見付ける事がある。そういう場合は、後で話を聞きにいく。人前では触れない様にしていた。
基本、キラキラは"念"の強い所に残る。
その問題が解決しても、その"想い"が強ければ、想いだけがその場に留まる事もあった。その人が亡くなっても、想いが強ければ残る。
僕が話を聞けば、満足して消えていく事が殆んどだった。
ある日、本屋に寄った帰り、いつもは通らない道を使った。すると、そこにはオレンジ色のキラキラがいて、僕を呼んでいた。
周囲に誰もいない事を確認して、そのオレンジを受け入れる。
「ごめんなさい。話を聞いて欲しいの。」
どこかの高校の制服を着た少女が、僕に語りかける。
「大丈夫です。どうしたんですか。」
少女はホッとした顔で僕を見た。
「ありがとう。私は長谷川 真理。
10年前に、ここで死んだの。」
真理は、"想い"を語り出す。
「私、高校3年生で、進学について父さんと揉めててさ。
私はどうしてもデザイナーになりたかった。だからデザイン学校に行きたいって言ったんだけど。
最後まで父さんは許してくれなくて。
あの日、また父さんと言い合いになって………。私、頭にきて。
家を飛び出してしまったの。」
僕は黙って話を聞いた。
1つ残らず、真理の気持ちを受け継ごうとしていた。
「自転車でさ、何処か頭を冷やすところに行こうと思って。
全然車の通らない道だったから、私、飛び出してしまって……。
父さんと仲直りも出来ないまま、ここにいるの。
一度、父さんに謝りたい。お願い。」
真理は涙を浮かべて、僕にしがみついてきた。
僕は真理を安心させる為に、微笑んで答える。
「分かりました。一緒に謝りに行きましょう。」
真理は涙目で、微笑んだ。
真理の家に向かうが、僕は少しばかり気掛かりがあった。
彼女の父親が、素直に無関係の僕の話を聞くのだろうか。10年も前の話を蒸し返されて、逆に傷付けてしまうのではないか。
しかし、僕は彼女を救いたいと思った。
10年間、あの場所で待っていたんだ。ずっと苦しんでいたのなら、それを救うのが、僕の仕事だと感じた。
真理の家の前までくると、僕以上に彼女が固まっていた。
「大丈夫ですか?行けますか?」
僕は心の中の彼女に問いかけた。真理は少し考えて、小さく頷いた。
『ピンポーン』
真理の緊張が僕にも感染して、チャイムを押す指が震えていた。




