昼の夜とフライングストーン
20 昼の夜とフライングストーン
ヒューン
「もーう!体制とるの大変だ!眠たいのに寝れないし!」
「チェリー!ちゃんと座席に座っといてね!」
キティーの声がきこえた。
そうは言ったって席まで行くので大変なんだって!
んしょ、んしょ……
「……無理だっ!チェリー!今から言うとおりに動いてね!まず、フライングストーンが置いてある荷物室に行くんだ!」
え!?無理だよこんな状態で!
……とは言えない……
「うん!わかった!」
……とは言ったものの、こんな揺れ動く機内の中で動き回れる程運動神経が言いわけではない。席まで行こうとするのでも辛かったのに、荷物室だなんて!
チェリーはかがんで這うようにして、ゆっくり進んだ。
「チェリー!まだー!?」
キティーのアナウンスが入った。
「まだー!」
めいいっぱい大きな声で叫ぶ。
あと半分くらいはあるかな?まだまだかかりそうだ。
「急いでね!」
一方キティーは弾を避けるのに精一杯だった。
(ううぅ、チェリー、頑張って……!)
ソルド空軍はしつこく着いてくる。速度的にはソルド空軍の飛行機の方が速い。時折スピード調節が間違うのか、この飛行機を追い抜かす時があった。キティーはその時を計らって速度を落とすのだが、そういう作戦も通用しないのだと思わせるかのように、すぐに速度を落としてくる。
キティーは頭をフル回転させたが、いい作戦が思いつかなかった。
(困った時のキャンディー!)
キティーはキャンディーにテレパシーを送った。
『キャンディー!キャンディー!』
『……またかよ』
キャンディーはだいぶ呆れていた。
『いいかげん自分で解決できないのか?』
『無理』
『せめて努力ぐらいしろよ……。で、?今回はなんだ?』
『ちょっとソルドの空軍に追われてて……』
『……なんだと!?』
『何としてでもフライングストーンを持って行かせないつもりらしい……』
『……じゃあ雲を利用しろ』
『雲?』
『ちょっと運転は難しいが雲の中だと隠れやすい。全部で何台だ?』
『合わせて4台』
『じゃあ大丈夫だ。上手くまけよ』
それっきりキャンディーのテレパシーは切れてしまった。
(……ま、まけるかな……?)
不安になりながらも、キティーは高度を落とした。
「キティー!!!ついたよー!!」
はぁ、はぁしんどい……。やっと荷物室だ。
「よく頑張った!じゃあ荷物室に入って、フライングストーンを一つ取り出して!」
「了解!」
何をするんだろう?一つだよね、そういえばバケツでしかこの石持ったことないや。感触なんかすごい!なんかつるつるしてる!
「取ったよ、キティー!」
「じゃあ、荷物室に金槌もあるはずだから、それで叩いて半分に割って!」
「了解!」
金槌……これだな!
カキーン、カキーン
なんか野球のバットの音みたい。
カキーン、カキーン
割れにくっ!
カキーン、カキーン、カキーン
割れなーーーい!
カキーン、カキーン、カキーン、 カキーン
「割れないよーー、キティー!」
「ちょっとやそっとじゃ割れないよ。根気強く叩き続けるんだ!」
カキーン
どれだけつづけただろう。飛行機がぐらっ、と傾いた瞬間、バキっという音をたててフライングストーンが割れた!どんだけかたいねん!
「割れた!キティー、割れた!」
「お見事!じゃあ『ひやく』にそのフライングストーンの欠片を入れて……」
「ちょっと待った!ひやくって何?どこにあるの?」
「あ、ごめんごめん。金槌の隣に小さな瓶があるはずなんだ。それのこと」
「液体入ってるやつ?」
金槌があった場所の隣りに、小瓶があった。青色の液体が入っている。何の薬品かな?
「そうそう、それそれ!それに入れて!」
ぽちゃん
中の液体がはねた。
途端に中身が熱くなってきた。
「あ、忘れてた!鍋つかみもあるはずだから、それを使って!火傷するから!」
遅いよキティー!鍋つかみ……これか。
早く行かないと!こけてもいいや!
バババババ
無我夢中で走る、というよりはほぼ這うような感じで、さっきとは比べものになはないスピードで、操縦室に向かった。
「き、キティー、これ」
操縦室に着いた頃には、もう息切れ状態だった。
「おつかれさま!ありがとう!」
キティーは鍋つかみごと瓶を受け取ると、何やら黒い筒のようなものに液体を流し入れた。
「こんな時のためにこれ、作っといてよかったね、キャンディー!」
そう言うと、装備を備えていないはずのこの飛行機から、銃弾が飛び出した。
(雲の中でまける自身ないから……。でも思い出してよかった!これで少しはもつ!)
フライングストーンは万能な石なのだ。割ってひやくに入れると、爆弾にもなる。
バーン
弾の一つが命中したようだ。
ヒューン……バーン
少し落ちてから、爆発した。
フライングストーン、恐るべし!
攻撃できるなんて聞いてないよ!
もっと早く言ってよね!
その時、またあたりが少し、暗くなった。
(はじまった……ここが正念場だ!)
眼下には大閉洋。少し向こうに大陸が見える。
うっそー!もうそんなに時間経った!?一日以上這って過ごしたわけ?
明るくなったっけ!?昨日日昇った!?
知らないうちに空軍はどこかへ行ったようだ。まさか攻撃してくるなんて思ってもいなかったのだろう。
チェリーはそう思っていたが、キティーはそうは思っていなかった。まだ朝になったばかり。そう、この池球の日食、つまり葉食は、長いのだ。
(昼の夜は、まだ始まったばかり。
さて、どう動こうか)
キティーは操縦桿を握り、ニヤリと笑った。
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あの後フーは、涙を拭きながらR研究所に座り込んでいた。
リーが研究所を出たのか、風が入ってきた。
その時。ハラリと落ちる、一枚の紙。
フーはその紙を手に取った。
『にんぽう(場所)へのじゅつ!と言えば、何処へでも行ける』
紙にはそう書いてあり、ぐるぐると丸で囲まれていた。
「にんぽう……?なんか聞いたことあるなぁ。試しにやってみよっかな!」
みんながロザンゼルズに行ったことを思い出し、こう叫んだ。
「にんぽうまなみちゃんのロザンゼルズの別荘へのじゅつ!」
ぼわっ
フーはR研究所から消えた。




