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祝5.000pv!【拾い物】しか能がない俺、役立たずと勇者パーティーを追放されたので、みんなが捨てたものを拾って生きていく  作者: 音


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査問

査問は、軍務省の大広間で行われた。

 長机が並んで、その向こうに軍務省の役人が七人、軍から将官が三人座っていた。

 中央にバルテル。

 俺は、その前に立たされた。

「――ノア・ガラット」

 バルテルが言った。

「認否を問う。貴殿は、帝国軍指揮官イレーネ・フォスに対し、医療技術の版および印刷方法を供与すると約したか」

「約しました」

 俺は答えた。

「後悔しているか」 「してません」

 広間がざわめいた。

「――理由を述べよ」

 俺は、リディアに渡された紙を広げなかった。

 覚えていたからだ。

「三つあります」

 俺は言った。

「ひとつ。あの技術は、既に帝国に渡っていました。俺が送らなくても、向こうは刷ります」

 俺は言った。

「ふたつ。俺が『刷り方も教える』と書いたのは、間違って刷られると人が死ぬからです」

 俺は言った。

「包帯の巻き方は、一行間違えると逆効果になります。締めすぎると腕が腐ります」

   ■

「――三つ目は」

 バルテルが促した。

 俺は言った。

「三つ目は、理屈じゃないです」

 俺は言った。

「向こうの兵も、包帯を巻けなくて死んでるからです」

 広間が、静まった。

「町長」

 将官の一人が口を開いた。

 白髪の、六十くらいの男だった。

「それは、敵だぞ」 「はい」 「敵が死ねば、味方が生きる」 「はい」

 俺は言った。

「でも、うちの町に来た兵は、八百二十一人です」

 俺は言った。

「そのうち六十三人が死にました。死亡率、七・七パーセントです」

 俺は言った。

「領都に送られた兵の死亡率は、四十九パーセントです」

 俺は言った。

「差は、四十一パーセントです」

 俺は言った。

「――八百二十一人のうち、三百四十人が、包帯の巻き方だけで生きました」

   ■

 俺は、続けた。

「帝国の負傷兵は、死亡率が四割から二割に下がったそうです」

 俺は言った。

「これは、確かに敵の戦力になります」

 俺は言った。

「でも、下がった二割の中に、うちの町を襲った四百人が入ってます」

 俺は言った。

「あの四百人のうち、俺たちは何人か殺しました。数えてないですけど、殺しました」

 俺は言った。

「殺した相手の、その隣にいた奴が、包帯で生きてます」

 俺は言った。

「それが罪なら、俺は罪です」

   ■

 バルテルが、机を叩いた。

「――町長。感傷は法廷では通用せん」

「感傷じゃないです」

 リディアが前に出た。

「数字です」

 彼女は帳簿を掲げた。

「アルカ町の刷った手引きは、この八か月で四千二百枚が出回りました」

 彼女は言った。

「うち、王国内が三千八百枚。帝国側に渡ったと推定されるのが四百枚」

 彼女は言った。

「九割は、王国内です」

 彼女は言った。

「町長を利敵で裁く場合、この四千二百枚すべてが、利敵の証拠物件になります」

 彼女は顔を上げた。

「王国内の三千八百枚も、回収して焼くことになります」

 広間が、ざわめいた。

「――そして」

 リディアは言った。

「その三千八百枚は、現在、王都のこの建物から徒歩十分の路地にも、貼ってあります」

 彼女は言った。

「昨日、確認しました」

   ■

 バルテルの顔が、赤くなった。

「――なら、焼く」

 彼は言った。

「利敵の物件だ。回収して焼く」

「――お待ちください」

 声がした。

 広間の入口に、カイルが立っていた。

「王都守備隊第四中隊長、カイル・レイノルズであります」

 彼は敬礼した。

「証人として、発言の許可を求めます」


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