表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/76

第73話 狂乱の樹皮

幹の表面に走る無数の筋が、内側から押されるようにわずかに持ち上がる。

乾いた音が続き、外皮がきしむ。

風が止まり、森の匂いが消える。代わりに、湿った樹液の匂いが濃くなる。


外皮がザワザワと震え、樹皮の表面が剥がれ始めた。薄く鋭い無数の欠片。

それが幹を離れ、フワッと浮いて...

一斉に襲って来た。


「無理!」レスクヴァが絶叫する


トールが前に出てミョルニルの槌を構え振るい欠片を叩き落とす。

当たるたびに硬い音が続き、砕けた欠片が足元に積もる。

しかし幹からは樹皮の表面が剥がれては飛び、また剥がれ飛ぶ。


「ト〜〜〜ル〜〜!」レスクヴァが身をすくめる

「樹皮が拒んでいるのだな」ロキがつぶやく


トールが位置を変える。ミョルニルの構えを変えて、弾いた欠片が後ろへ抜けないようにしている。

ミョルニルの軌跡に沿って、空間が保たれ、その内側で一行は身を寄せた。


耳の奥で、寄せ付けまいとする気配と別の弱い気配が重なる。

どちらも言葉ではないが、異なる意味が伝わって来る。


「二つの声か...」ロキがつぶやく

「拒絶と絶望...絶望が二人に助けを求めている」フレイヤが幹を見据え、目を細める



景色が白くなる。意識が遠のきそうだ。俺はどうすれば良い?

猛り狂う樹皮ではない、違う何かが呼んでいる。

足が動こうとする。前へ...

繋いでいる雪乃の手が、俺の手を強く握った。


トールがまた構えを変えて、防御の幅を広げる。

しかし、欠片の嵐がさらに増していく。


足が前へ出る。雪乃と共に。


俺たちが進むと欠片の流れが直前で逸れる!

触れずに左右へ分かれていく。

もう一歩進む。同じだ。周囲では欠片の群れが荒れ狂っているのに、俺たちを避けている。

道が開く。


「すごい!」レスクヴァが震え声で叫ぶ

「そういう事か...」ロキが顔を歪ませてニヤリと笑った


俺が振り返るとトールと目が合った。

俺と雪乃がうなずく。トールとフレイヤも静かにうなずく。


ここから先は二人だ。


見えない圧力が来る。シャールヴィは踏み出そうとするが進めない。

レスクヴァが俺たちに腕を伸ばすが、それ以上前へ出られない。


「待って!」レスクヴァが泣いている

「行くな〜〜〜っ!」シャールヴィが絶叫する

俺たちは声にならない声で「ありがとう」と言った。

雪乃が泣きそうな顔で微笑む。俺も同じような顔をしているのだろう。


前を見る。幹は近い。外皮の動きが荒くなる。欠片の嵐が一層激しくなり、近づけまいとする力が強まる。

恐れている。来るな、触るな、そんな悲鳴に聞こえる。


それでも進む。もう一つの何かに呼ばれている。

欠片が左右へ逸れていく。音の圧力だけが耳を打つ。


幹の表面が大きくきしむ。外皮がめくれ、内側の色がのぞく。しかしすぐに閉じる。

だが完全には塞がらず、開いた隙間が残る。


その隙間に向かって、よろめき倒れそうになりながら、二人で歩く。

音が遠くなる。内側から、別の気配がはっきりと呼吸をしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ