18 治癒魔法が使えません!(宮廷魔法使い目線)
「キュア!」
掛け声とともに治癒魔法の光が男爵の息子の目に注ぐ
普通ならばこれで治癒するはずである
宮廷魔法使いの称号は伊達ではないのだ
ところがここ最近はその常識が覆る事態が多々起きている
目の前の事態もその一つだ
特定の患者の傷に対して治癒魔法が効かないという異常事態が発生している
・・・試しに手をナイフで付けた傷ならばすぐに治るので人ではなく傷に、である
その治らない傷というのが
とある男爵の息子の両目の傷
とある男爵の息子の切り落とされた腕
とある男爵の息子の切り落とされた足
である
切り落とされた手や足があるのならばくっ付けた後治癒魔法を使えば元通りになるはずである
・・・何もない所から腕や足を作るというのは治癒魔法でもできないのは常識である
ところが何度やっても、誰がやっても治癒できなかった
宮廷魔法使い
代々治癒魔法を得意とするとある伯爵家の魔法使い
在野の優れた治癒魔法使い
誰を呼んでも治ることがなかった
誰もがしる評判の治癒魔法使い
彼らの治癒魔法を拒絶するがごとく君臨する怪我
人の無力さを嘲るがごとく、である
しかし宮廷魔法使いの威信にかけて直さなければならない
国の威信が掛かっているからである
であるから私は再度叫ぶ
「キュア!」




