166話 俺ってば思考がもう『遊び人』じゃん?オイ
・・・さて、ネルとミラをどうするかな?
「サッパリ分からん」
俺は思わず呟いた。
「なんだよダンナ、もう嫁の手綱が外れちまったのか?」
ランサム、もしかしてからかってる?
俺は少しムキになって反論した。
「違うし!元々、手綱なんて思考自体無いし!!」
「そうだよ!ダーリンは優しいんだから!・・・それにどっちかっていうと、尻に敷かれる方だと思うし」
おっ、菜綱が俺を庇ってくれ・・・てるのか?
俺ってば尻に敷かれるつもりは無いからな!
俺は嫁達とはお互いを尊重し合って、仲良くやれればそれで良いと思ってる。
対等でいるのが健全だしさ。
「ダーリン、2人の事は暫く放っておけばいいよ。そのうちどっちかが痺れを切らして出てくるから」
「んじゃまあ、そうするか」
俺は取り敢えず考えるのをやめて、菜綱へ船の案内を始めたのだった。
すると、暫くして、ミラが痺れを切らせて現れた。
「カガリ様!お帰りなさいませ!」
そう言うと、深々と頭を下げたのだった。
「ああ、ただいま!留守番ありがとうな!」
ミラは俺の隣にいる菜綱に当然気づいているだろうが、俺を問い詰めるような野暮な真似はしなかった。
・・・『野暮な真似』って、もう完全に遊び人の思考じゃん。
≪ハーレムを作るからには遊び人気質も必要よ?カガリはどうかしら?・・・うん、合格ね!≫
・・・うるせえ!俺はクソ真面目だわ!
取り敢えず俺は、ミラと菜綱にお互いを紹介した。
「カガリ様の婚約者のミラです。よろしくお願いします」
「私も!ダーリンの婚約者の冷膳菜綱って言います。ダーリンと同じ世界から来ました。よろしくです!」
ランサムがヒューっと口笛を吹いた。
「自分の女同士を引き合わせるなんざ、ダンナも肝が据わって来たな」
「肝ってか、なんかもう色々と麻痺しちゃってるのは認めるよ・・・」
挨拶が終わると、ミラが尋ねて来た。
「それで、お姉様はどちらに居るのでしょうか?」
・・・ああ、それね。
俺はミラに、ブルーネルの隠れ場所を教えた。
そして俺がブルーネルを迎えに行ってからの出来事も全部話したのだった。
「お姉様が木像になった?!」
普段冷静で動じないミラも流石に真っ青になっていた。
まあ、助かった今だからこそ、こうして話せてるんだけどな。
ミラはそれでもショックが大きかったらしく、ダッシュでブルーネルの所へと走っていった。
少しして俺たちも行ってみると、隠れ場所だった物置きの前で、2人して抱き合って泣いていた。
「お姉様ぁ!良かった・・・生きていて・・・良かったぁぁぁ!!」
「ミラぁ!お前も奴隷になんかされちまって・・・助かって本当に良かったああぁぁ!!」
俺たちはそれを見て、姉妹水入らずにしてあげたのだった。
ブルーネルとミラを待つ間、ザックリとランサムにモリッツァとの交渉の進捗を聞く事にした。
本当はミラから報告してもらおうと思ってたけど、待ちきれなかったのだ。
現状、あまり進展は無さそうだった。
どうやら交渉相手の第1王子ヴィンス・ビディーテ・モリッツァが、何かしら理由をつけて、のらりくらりと交渉を引き延ばして来たらしい。
おそらく、スピーリヒルの援軍待ちだろう。
もっとも、俺だってミラに、勇者が到着するまで引き延ばすよう指示を出していた訳だから、お互い目的は同じって事だ。
1つ、進展があったとすれば、スピーリヒルの援軍と勇者参戦の情報をもたらした、あのいけ好かない使者、ボルニッカ・スプトラックの処刑差し止めと身柄の受け取りが無事成立した事か。
ボルニッカは既に解放され、家族と共にワインブルー王国へ向かったという。
まあ、この交渉もタダでは進まず、すったもんだはあったみたいだった。
当初、ヴィンスは、ボルニッカの処刑差し止めと身柄引き渡しを拒んだ。
どうやら、こちらがボルニッカの身柄を欲しがっている意思を逆手に取ってそれを拒み、むしろ速やかなる処刑を匂わせる事で人質としての意味を持たせ、交渉を有利に進めようとしてきたらしい。
しかし、ミラがすかさず反撃した。
大飛行戦艦隊旗艦『スカイムーン』をモリッツァ側が臨検した際に発生した、船内に置いてあった財宝の盗難を問題にしたのだ。
元々、盗ませる目的でワザとダミーの財宝を置いていたのだが、案の定、相手は罠にハマってくれた。
財宝は完全なる囮でナノマシンで構成されていた。
なので、どこに運ばれたのか追跡可能なのだ。
結果、財宝を盗ませた犯人は、次男のラビルだった。
その証拠映像を突き付けたら、ヴィンスの奴、すぐにボルニッカの引き渡しに応じたらしい。
せっかく仕込んだカードをボルニッカごときクズ野郎の為に使う事になったのは残念だけど、まあ、奴を助けるってのは奥さんとの約束だしな。
奥さんと子供に感謝しろよボルニッカ!
しかしボルニッカは決してワインブルーで平穏な日々を送れる訳ではない。
むしろかなり困難な試練が待っていると思う。
何故なのか?
そりゃあ、俺がそう指示するからだ。
奴がワインブルーでやった事を俺は忘れていない。
俺が阻止したから良いものの、下手すりゃソフィアリス姫もホリーもモリッツァへ引き渡されていた。
姫についてはほぼ確実に殺されていただろうし、ホリーだって同じ運命を辿っていた可能性は高い。
そして引き渡しを拒めば今度はワインブルー王国が滅ぼされていたかもしれないのだ。
まあボルニッカはあくまで使者に過ぎず、実際には奴じゃなくて聖帝の意志だって事は分かっているが、ボルニッカはそれを悪用し過ぎた。
権力を傘にやりたい放題、ワインブルー国王の権威を蔑ろにし、それどころか、いたぶるマネまでしてきたのだ。
それだけの事をして簡単に無罪放免ってのは出来ない相談だ。
とは言っても別に拷問したり、虐めたりする訳じゃない。
ただ、ワインブルー王国発展の為、身を粉にして働いてもらうってだけだ。
ただ、もし奴が仕事の手を抜いたり、私腹を肥やしたり、敵と通じたり、豚人を差別したり・・・とにかく豚人達に少しでも不利益を与えた時には、たっぷりと罰を与えてやるつもりではいる。
まあ、奴さえ真面目に頑張っていれば、何の問題も無い話なのだが。
問題無いどころか、豚人達はみんな優しいから、むしろ楽しい日々が待っているだろう。
けれど、根性のねじ曲がったボルニッカの事だ。
すぐに本性を出すだろうと俺は思っている。
人間の本質ってのはそうそう変わるものじゃないからな。
そしてその時は確実に俺からの罰を受ける事になるだろう。
その時は容赦しない。
思いっきり後悔させて、二度と悪さを出来ないようにしっかりと心と体に刻みつけてやるつもりだ。
拷問じゃないぞ、あくまで罰だ。
俺はそうなる運命が予想できるからこそ、
『ボルニッカにとって困難な日々になる』
そう思ったのだ。
そんな事を考えながら、俺は菜綱を案内して『スカイムーン』の住居スペースへ向かった。
そこでは、
『カガリ様!おかえりなさいませ!』
29人の美女メイド軍団が待ち構えていたのだった。
「ダ、ダーリン・・・この人達は?」
菜綱の声が若干震えている。
あ、そういえばメイド軍団の事は言ってなかったな。
彼女達は、ミラと共に俺が奴隷から救い出し、その後アールの手引きで俺のメイド兼ハーレム要員として仲間になった美女達だった。
俺は今更ながら菜綱に伝え、『それは聞いてない!』って怒られ、ポコポコと叩かれたのだった。
まあ、ハーレム要員ってのはアールが勝手にメイド軍団と話している事であって、決して俺自身にそのつもりは無いんだけど・・・
いや、しかし、よくよく考えてみると、この子達だって俺の事を『好き』でついて来てくれてるんだよな?
ハーレムってのをある程度受け入れつつある今の俺は、
『この子達をどうするか?』
この事についても真剣に考える必要があるんじゃないか?と思い始めていたのだった。
だって、ハーレム要員ってのは無理やりじゃなくて、他ならぬ彼女達自身の希望なのだから・・・
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