164話 委員長を助けに行くぞ!オイ
委員長のクエスト先は、パルチという街らしい。
「パルチなら私が場所を知ってるよ」
ブルーネルがそう言ってくれた。
さすがはS級冒険者だな。
そして俺、ブルーネル、菜綱は、早速パルチの街へ出発する事にした。
移動にはプライベートジェットを使った。
超科学製なので、飛び立つのに助走は必要無い。
そのままフワッと浮き上がった。
飛行機の中は、まんま、さっきまで居たセーフハウスの部屋そっくりそのままだった。
セーフハウスと飛行機の部屋のデータをリンクさせているのだ。
なのでこっちの部屋で模様替えをすれば、セーフハウスの部屋も自動的に変わる仕組みだった。
て事は・・・
セーフハウスのリビングにこれでもかと飾られていた俺とブルーネルのラブラブ記念写真もそのままって事なのだった。
「ん?・・・何だよコレ?」
飛行機に乗り込んだ時に菜綱がラブラブ記念写真を見てしまったのだ。
そして、
「私もラブラブ記念写真撮りたい!」
菜綱がそう言いだした。
どうやら何かに火が着いてしまったらしい。
・・・そう来たか・・・まあプンスカ嫉妬されるより全然良い。
どうせパルチに着くまでは暇だし、いっちょやるか!
て事で、急遽『ラブラブ記念写真撮影大会inプライベートジェット』が開幕したのだった。
取り敢えず、リビングでのラブラブ2ショット写真に始まり、プールでのラブラブ水着2ショット。
そして飛行高度を上げて雲海をバックにパシャリ!
ついでに色んな部屋を増設してみた。
好奇心をそそる古代遺跡風の部屋でパシャリ!
まるで物語の世界に迷い込んだかの様に神秘的な宮殿風の部屋でパシャリ!
水平線に夕日が沈む寸前の真っ赤な大海原風の部屋でパシャリ!
これでもかといろんな部屋を増設して写真を撮りまくっていると、ブルーネルから終了の合図が来た。
「旦那様、そろそろパルチに着くぞ・・・それと・・・あとで私とも撮影大会してくれよ?』
いやぁ〜。
思ったよりも・・・ってか、めちゃくちゃ楽しかったよ!
だってこんな超可愛い女の子とラブラブ撮影大会だぞ?
しかも日本じゃ女っ気ゼロだったこの俺が!
なんだかブルーネルとの新婚旅行以降、ずっと楽しい日々が続いてるよ。
ここにホリーと滝座瀬と三津島とミラが加わるんだよな?
そう考えると最初は『いらねー』と思ってたハーレム生活だけど、なんだか楽しくなって来たよ!
・・・意外とハーレムって最高かも?
≪カガリったら遂にハーレムの良さに目覚めたわね?・・・カガリのGOサインが出たからには、私もハーレム拡大路線を突っ走って行くわよ!≫
・・・いやいや、流石に限度ってものがあるからね?これ以上拡大するのはちょっとキャパオーバーだしさ。
≪なーに言ってるのよ?これから委員長を助けに行くんでしょ?絶体絶命のピンチを救ったりしたら、念願の委員長だってゲットできちゃうかもしれないんだから!≫
・・・いやいや、そういうの目当てで助ける訳じゃないからね?あくまで菜綱の頼みで行くんだから!・・・それに、最初からそこを意識してたらさ、まんま人の弱みに付け込んでるみたいだろ?
≪付け込む必要なんて無いわよ?ピンチを助けられたら自然と惚れられるんだから!ホリーもミラもネルも菜綱もみーんなそうだったじゃない!≫
・・・確かに。まあそうなったら、その時はその時だよ・・・でもさ、別に今はもう委員長の事、好きって訳じゃないからな?
≪またまたそんな事いって、すぐにまた好きになっちゃうクセに!≫
・・・そんな事は無い・・・とは言い切れないか・・・でも委員長はお堅いから、ハーレムNGだと思うぞ?
≪そこをOKにするくらい惚れさせるのがカガリの腕の見せ所じゃない!≫
・・・見せる腕なんて持ってないから・・・
でも、委員長と会うと思うと正直、結構緊張するな。
・・・俺ってば、もしかしてまだ未練があるのか?・・・うーん、どうなんだろ?
飛行機は、パルチより少し離れた場所に降り立った。
魔族を刺激しない為だ。
委員長が捕まってたりするかもしれないしな。
俺たち3人は徒歩でパルチへ向かったのだが、道中、やたら人とすれ違った。
菜綱はビクッとしていたが、すれ違う人達は、菜綱の可愛いさに釘付けになる事はあっても、落勇者として憎しみを向けてくる事は一切無かった。
「良かったな!」
俺がそう言って頭を撫でてやると、
「うん!ダーリンのおかげだよ!」
菜綱は満面の笑みを返して来た。
アール曰く、まだ菜綱自身、心の中では人に怯えているけど、俺達と居る事で『安心感』や『幸福感』といったプラスの刺激がこれでもかと溢れているから、精神的なダメージは無いに等しいらしい。
本当に良かったよ!
パルチに近づくにつれて、この人通りが実はパルチを行き来する人達だという事が分かってきた。
て事は、
「どうやら、パルチの街は解放されたみたいだな」
「うん。委員長はどうなったのかな?」
「そりゃ、魔族に勝ったって事だろうから『落勇者』にはなって無いんじゃないかな?」
取り敢えず、事情を知る為、パルチの街に入ってみた。
勿論、解放されたばかりで、街はかなり汚かったし、壊れている部分もあった。
それに人だってまだまだ少ない。
聞くと殆どは近隣の街から来た人達だった。
それに、兵士もいた。
俺は兵士に状況を聞いた。
するとやはり勇者・初瀬綾音が解放してくれたらしい。
「なら、委員長はもう城に戻ってるんじゃないか?」
「旦那様、『クエスト』なんて仕打ちを受けた後なのに、あんな城になんて戻るのか?」
「そりゃ、勇者達の最終目標は、元の世界への帰還だからな。その為には王女やこの国との関係を断つ訳にはいかないだろうしさ」
「ダーリン!城へ行こう!」
菜綱がそう言い出した。
でも、菜綱は王女に対してトラウマがあるだろうし大丈夫なのか?
勿論、俺もそうだけど・・・
「・・・菜綱は大丈夫なのか?」
「うん。私だってちゃんと向き合わなきゃだしさ」
「そうか・・・」
て事は、俺もあの城へ遂に行く事になるのか?
今までは敢えて避けてたけど・・・でも、菜綱だって勇気を出してるんだ。
俺だっていつかは向き合わなきゃいけない訳だしな。
それが今って事なのかもしれない。
だけど・・・
「ダメだ。城へは行かない」
「え?・・・どうして?」
「悪い。これはただの俺のワガママだ。けど、今は・・・城ヘは行けない」
個人的には、今回が、ずっと避けてきた忌まわしいあの城へ行く絶好のタイミングだと思う。
思うのだが・・・
・・・嫌な予感する。
それはもう猛烈な。
何がどう嫌なのかは分からない。
ただ、今、このタイミングで行けば絶対に後悔する。
そんな気がしたのだ。
「・・・分かった。ダーリンが嫌がる事を無理強いする気は無いから。委員長も、城には戻って無いかもだし、戻ってたとしても『クエスト』はクリアしたんだからもう大丈夫だよね?」
「だな。そうだと祈っておこう」
その時、口には出さなかったが、心の中では『無事に済む訳がない』と感じていた。
どうやら2人も同じ事を思ったらしい。
特に菜綱からは心配げな顔が見え隠れしていた。
それでも・・・
今は城へは行けない。
委員長には悪いけど、彼女が本当に城へ戻ったのなら、危険を承知で戻った筈だ。
その委員長を俺が助けに行くってのは、余計なお世話ってやつだろう。
もしそれを押して委員長を助けるのなら、委員長が覚悟を決めて城に戻る決断に至った、その理由だって俺が背負わないといけなくなる。
『みんなを元の世界に戻す』
『王女の陰謀からみんなを救う』
だいたいこんな所だろう。
つまり、他のクラスメイト達も全員俺が助けてやらないと筋が通らなくなるのだ。
それって復讐対象を救わなきゃいけないって事だよな?
・・・それだけは絶対に嫌だ!
多分、これが嫌な予感の原因だろう。
俺としては、委員長以外にも片山や秋越など、助けてやりたいヤツも居るには居るのだが、やはり今は、俺を襲う嫌な予感を無視してまで助けに行く気にはなれなかった。
≪お城へ行かないんなら、モリッツァへ戻ってひと暴れする?≫
唐突にアールがそういった。
・・・ん?もしかして、来たのか?
≪ええ。そろそろ聖都の付近まで到達するわ≫
それは、モリッツァの要請に応じて派遣されたスピーリヒルの援軍だった。
・・・いよいよ来たか!
≪そうね。この分じゃどの道、お城へ行ってる時間は無かったかもね・・・まあ、お城を灰燼に帰すだけなら一瞬で済むけど・・・寄ってく?≫
・・・寄ってかねえよ!『ゲーセン行こうぜ!』的なノリで城を消し飛ばす趣味はないし。ってか、委員長も灰になっちゃうだろ!・・・それで、スピーリヒル軍はどれくらい居るんだ?
≪総勢1万ってところね≫
・・・はっ!1万ぽっちでこの俺を止められると思ってるのかよ?この俺も随分と舐められたものだな!
≪なにカッコつけてるのよ?カガリの存在なんて知られて無いに決まってるじゃない。でも確かに・・・1万ぽっちよねぇ〜≫
・・・ああ。1万ぽっちだ。
俺とアールはしみじみそう思った。
俺は以前、モリッツァの精鋭軍1万を一瞬で滅ぼした事がある。
もう一度言おう。
『一瞬で!』だ。
つまり1万ってのは、その程度の取るに足らない数字って事なのだ。
けれど、俺にとって今回のお目当ては、1万の軍勢では無い。
そこに同行してくる勇者だ。
モリッツァは、スピーリヒルに『勇者』の派遣を要請していた。
こうして援軍が派遣されて来たという事は、当然、その旗頭として勇者も参加しているだろう。
問題は、それが誰なのか?
・・・アール、分かるか?
≪ええ。偵察機の映像を出すわね≫
俺の視界に現地の映像が差し込まれた。
長い列をなして行軍するスピーリヒル軍。
その列の一画がズームアップされた。
そこに映った2人の勇者。
コイツらは・・・
・・・徳森と鈴川だ!
コイツらは宇土と共に俺を虐めていた奴等だ。
・・・宇土は?!
どうやら宇土は居ないらしい。
それでも、
・・・当たりじゃないか!
福引きなら3等ってところか?
俺はニヤリと笑みを浮かべた。
その笑みは、自分が考えるよりもずっと邪悪な顔だったらしい・・・後になって菜綱とブルーネルにそう聞かされた。
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