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陰キャ女と底辺男


 というわけで、僕はミアの厚意に甘えてダラダラ過ごすことにした。


 朝起きて、そのままごろごろ。

 昼過ぎて、飽きずにだらだら。

 夜が来て、ひとりでうだうだ。

 で、寝て、また、朝起きて……。


「ねえ、えーくん」

「なあに、ミアちゃん」

「私が何してるか分かる?」

「敵について調べてるんだろ? ……おっと、何も言わないで。僕に休憩していいって言ったのはミアだからね。自分が大変だからってその苦労を他人にまで押し付けるのは筋違いだからね」

「ぐぬぬ」

「じゃ、僕はもう一回寝るから」


 僕は再びミアのベッドに横になった。

 ミアは机の前に座っていて、その周りには本や紙切れ、その他さまざまな資料が散乱していた。

 ここ数日でミアが集めてきたものだ。真面目だなあ。

 きっと魔導学院時代も相当に優秀な学生だったに違いない。僕と違って。


「ちょっと待って、えーくん」

「なんだよ。先に言っとくけど、僕にその資料を触らせない方がいいぜ。十秒あればチリ紙以下にできる自信がある」

「そうじゃないわ。私、お腹が空いてしまったの。えーくんも今日はまだ何も食べてないでしょう? お金をあげるから、食べられるものを買って来て欲しいの」

「残念ながら僕は休憩するので大忙しなんだ。悪いけど、他を当たってくれる?」

「なんでそんな意地悪言うの?」


 ミアが頬を膨らまし、唇を尖らせる。

 うっわー、あざとい。

 おっさんならそれで騙せたかもしれないけれど、僕は騙されない。


 で、何を買って来てほしいって? おじさんなんでもいうこと聞いちゃうゾ。


「……仕方ないな。じゃあ、ネコの真似をしながら、『えーくんにお買い物、行ってきてほしいにゃあ』って言ってくれたら行くよ」

「えーくんにお買い物……」

「おおっと、この前みたいに真顔で言うのはナシだぜ! 一ミリも萌えねえからな!」

「チッ」


 ガチ舌打ちされた……。


「さあ、どうするミア。やってくれなければ、僕はテコでも動かないよ」

「どうしても言わなきゃダメ?」

「ダメ」


 ミアはため息をつくと立ち上がり、ベッドで寝転ぶ僕の傍まで近寄って来た。


 僕の隣に寝転がって、上目遣いで僕を見るミア。

 彼女の赤い瞳が少し潤んでいて、白い頬に朱が差している。

 なんだか甘い匂いがした。ミアの髪の匂いだろうか。

 それから、小さく深呼吸して、


「えっ、えーくんに、お、お買い物にいって来て、欲しい、にゃあ……」


 今にも消え入りそうな、僕の耳元に囁くような声だった。


 あ、ヤバい、死にそう。


「…………」

「……ち、ちゃんとやったけど? これで買い物してきてくれるのよね!」


 跳ね起きたミアが、ツンとした表情で言う。

 照れ隠しだろうか。


「ミア」

「な、何かしら?」

「今の、僕以外には絶対やるなよ。僕みたいな異性耐性皆無系男子は即死するからな」

「うん?」

「買い物は一緒に行こうよ。ミアを一人で残すのは心配だから」


 かくして、僕は久々に部屋の外に出ることになった。



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