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即死使いの譫言詠唱《ワールドエンド》 その①

※※※


 街は、休日なだけあって賑やかだった。


「……ねえミア」

「なに、えーくん」

「このよく分からない食べ物は何?」

「魚をすり身にして固めたものらしいわ。東側の国から伝わって来た食べ物よ」

「よくこんな生臭いものが食べられるね?」


 僕らは、屋台で串焼きにして売られていたこの食べ物を買ってみたところだった。

 串に刺さっているこの食べ物は、表面には焦げ目がついていて、触感は柔らかい。


「そう? 私はおいしいと思うのだけれど」

「じゃあ、僕の分も食べる?」


 僕は、僕の分の串をミアに差し出した。


「えーくんは何を食べるの?」

「別の物を買うよ」

「私のお金で?」

「うん」

「…………」


 黙ってしまうミア。

 あれ、僕、変なこと言ったか?


「いいえ、えーくんは何もおかしなことは言っていないわ」

「だよね?」

「…………」

「なんで黙るの?」

「ねえ、えーくん。ひとつだけ絶対に変わらないことを教えてあげる」

「なあに? 僕が永遠に童貞って話?」

「それはえーくん次第だわ。そうじゃなくて、この世に存在するものはいずれなく(・・・・・)なってしまう(・・・・・・)ってことよ」


 そう言うと、ミアは財布を取り出し、さかさまにした。

 数枚の小銭が零れ落ちる。


「……つまり、どういうこと?」

「実は生活費が底をつきました。残念」

「リアルガチマジで?」

「リアルガチマジで」

「仕方ない、次襲うべきは銀行だな。ちょっと待ってて、すぐに札束を用意するよ」

「分かったわ。さっそく襲う銀行の手配をしましょう。侵入経路と脱出経路の確保は私に任せて」

「オッケー。それじゃあ僕は……」


 と、そのとき。

 僕は何かやわらかいものを踏んでしまった。


 何だろうと思って下を見ると、そこにはおじさんが倒れていた。

 ぼろぼろの衣服を身に纏ったおじさんだ。


「やっべー、やっちゃった」


 死体だろうか。


「生きてるかもしれないわ」


 ミアがおじさんの方に屈む。


「……どうしてわかるの? やっぱ、おじさんの扱いには慣れてるから?」

「えーくん」

「なあに?」

「怒るわよ」

「ごめんなさい」

「見て、呼吸してるわ」

「呼吸くらい僕にだってできるよ。生きてるだけで褒めてよ!」

「はいはい偉い偉い。私はえーくんが生きててくれて本当に嬉しいわ。それはそれとして、この人、どうしようかしら」

「ほっとけば? どのみち僕らは凄腕の医者ってわけでもないし、手術と引き換えに法外な値段を請求しようってわけにもいかない」


 僕もミアの隣に屈んで、おじさんを眺めた。

 結構丸いおじさんだ。


「……れ」


 おじさんが掠れた声を発する。


「? 何か言ってるみたいだけど、ミア?」

「私?」


 僕らは耳を澄ましてみた。


「……く、くいもん、くれ……」




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