あるゲッシーと健康的な(?)妖精さん
いや、別に良いんですけどね。何を着ようが本人の自由ですし。
でもあんまりこっち見ないでくれるとありがたいんですけど。視線の圧が凄いし。
「あなた、見ない種族ねぇ…」妖精さん(?)がまじまじと私を見つめている。近いです。
「なんで嫌そうな感じなのよ? 本物の妖精が目の前にいるのよ? 貴重な機会でしょ?」
リープスさんが割り込んでくる。「ななな何? 見えてるの? どどどういうこと?」
「あー、さっきの粉のせいっぽいですね、姿も見えてるみたいです」
「見えてるみたいって何よ!? 見えてるし聞こえてるでしょ!」だから近いって。
「ぼぼ僕にも!! 僕にも是非かけて! いや分析用にサンプルも欲しい!」あんたは落ち着け。
「ちょっと待って、あなたまさか…」妖精さんがさらに近づいてくる。
「あなた、私の姿がどう見えてるか言ってご覧なさい」急に真顔になって言う。
「えーと葉っぱで出来たドレスを着てて…」出来るだけ穏便に表現したい。
「うんうん、それで?」ぐいぐい来ますね、もう鼻にくっつきそうなんですけど。
「ちょっとふくよかな、おばさ…」「わーーーっ!!!」ちょっと、鼻を連打するのはやめて。
妖精さんは何か聞き取れない言葉を叫ぶと、私達の頭上でくるくる回り出す。
「わっぷ!?」「おお、これが…ゲホッゴホッ」私とリープスさんはは思いっきり咳き込む。
さっきの粉が大量に振ってきたんだけど。一体どこから出したの?!
銀粉は私たちの周りで渦巻いた後ゆっくり消え…消え残ってますね、これどうするんだろ?
リープスさんは入れ物入れ物と叫びながら隣の部屋に走っていった。
「なんか…ありがたみが無くなったというか…せっかく神秘的だったのに…」
ですよねぇ! エミーさんの独り言に心の中で激しく同意する。
「どう?! 愛らしい妖精に見えるでしょ!!」妖精の御婦人が荒い息をしながら私に詰め寄る。
「いや、さっきと変わり無いですけど…」私が答えると、彼女はがっくりと肩を落とす。
「どういうことなの…私が見えて話も出来てるから、ちゃんと効果はある…あるけど!」
彼女はうんうん唸りながら、私の周囲を旋回飛行している。
瓶やグラスや鍋を両手に抱えて戻ってきたリープスさんは、嬉しそうに床の粉を集めている。
「それ、明日には消えちゃうけどねぇ…あなた、私のこと見えてるの?」彼女が問いかける。
「残念ながら…しかし! その愛らしいお声は聞こえております!」テンション高いなぁ。
「なんでこんなに効果にバラつきが…何か決定的に間違えてる? ああ、もう!」
妖精さん的に、そんな気にする問題なのかしら?もともと見えてないのに。
妖精さんが怖い顔で私に迫ってきて、思わず後ずさりしてしまう。「あれよ、あれ」
「ふふ、なんだか絵本の挿絵みたい」私たちを見ながらエミーさんが微笑んでいる。
「ああ!私にも見えればなぁ!スケッチの道具は揃ってるのに!」リープスさんは残念そう。
「あんなキラキラした目をされて、期待を裏切れる訳ないでしょ!」と妖精さんが吠える。
色々と大変なんですねぇ。でもあなた、さっきは結構ノリノリでしたよね。
全く人間って、勝手に美化して勝手に期待するんだから、とぶつぶつ言っている。
まぁまぁちょっと休憩、お茶にしましょうよ。美味しいクッキーもありますから。
私たちは庭を見渡せるリビングに移動する。…リビングで良いんだっけ?
エミーさんがお茶の用意をして、私は残り少ないカレンさん特製ビクッキーを出す。
クッキーはいつの間にか補充されていた。さすがはカレンさん、仕事が早いですね。
妖精さんも気に入ったようで、夢中でで2枚目を食べている。…血糖値とか大丈夫なのかな。
食べながらになっちゃったけど、改めてみんなで自己紹介をする。
彼女はジゼルさん。これは人間に名乗る仮の名前で、本名はめちゃくちゃ長いらしい。
彼女はいつの間にかゆったりした白いローブみたいな服に着替えていた。ちょっと女神っぽい。
あんまりルーズな服を着ていると、体型もルーズになるとか…聞いた気がするんだけど。
「なんだか! 失礼なことを考えてるのがひしひしと伝わってくるんだけど!」不満げなジゼルさん。
「やっぱり分かりますよね。伝わってくるんですよ、なんとなく」エミーさんまで、ヒドい。
「あー、今回街に来たのには、何か用があったんですか?」私は華麗に話題の転換を試みる。
「まぁここに来ちゃったのは偶然だけど、伝えたいことはあるわ…あったはず」
なんか頼りないなぁと思っていると、彼女は庭の見える窓際に飛んでいった。
「これこれ、このお庭良いわねぇ。無秩序で無法地帯って感じで」それ褒めてないよね?
「ほ、ホントですか! いや嬉しいなぁ妖精に褒められるなんて!」だから褒めてないって。
リープスさんはニコニコしながら、長年の努力が認められた! とか叫んでいる。
「人の街やその近くって、私たちが休める場所が無いのよねぇ」ジゼルさんがぼやく。
「ここ私達も使って良いかしら? 植物の育て方とか相談に乗るし、ね」
「ほんとうですかぁ!」リープスさんは何か叫んで踊りだした。満面の笑みだ、怖い。
とりあえずエミーさんと2人で取り押さえる。危ないので、持っていた鍋と辞典は取り上げた。
「喜んでもらえて何よりだわ」ジゼルさんは言うが、そう言う問題ではない気がする。
あの銀色の粉に変なもの入ってなければ良いんだけど…ちょっと怪しい。
「たまには変わったことでもないと、退屈なのよねー」ジゼルさんは宙返りしながら言う。
「森はずっと平和だし…あ、最近ダンジョンが生まれたみたいだけど」
「「は…?!」」ちょっと今とんでもないことを言われたら気がするんだけど。
「大丈夫大丈夫、まだ出来たばかりだしね、狭いし大したやつもいないから」
「…帰ったら報告しましょ、街に近いと注意が必要だし」エミーさんは心配顔だ。
ダンジョンは色々な資源が採れると資料室で読んだけど、流石に街のそばは怖いよね。
「ちょっと面白いのよ、野良のビーストが入り込んだり特殊個体が生まれたりしてて」
なんか物凄く不穏な方向へ話が進んでいるんですけど!
「えーと、人間の言葉でなんて言ったかしら…ああ、そうそう!」
「スタンピード! もうすぐ迷宮が暴走しそうなの。この早さはビックリよねぇ」
「「…はぁあああ!?!」」




