3 先生と生徒のそれから
「先生、海はなぜあんなに大きいのですか」
「馬鹿野郎と叫ばれて受け入れる心の広さが必要だからです」
「先生、ドライブに行きませんか」
「自転車の荷台を示されても困るのですが」
「先生、体力測定をしてきました」
「あなたと握手をするのは止めようと思います」
「先生、修学旅行が楽しみです」
「お土産に竹刀はいりませんからね」
「先生、リア充爆発しろって何ですか」
「あなたがいつもカップルを見る度に舌打ちするその気持ちです」
「先生、お弁当を作ってきましょうか」
「あなたのお母さんが作るなら可哀想ですからやめてほしいですし、あなたが作るなら私が可哀想ですからやめてください」
「先生、料理は愛だと思いませんか」
「失敗作を作った人から言うべき言葉ではありません」
「先生、何故洗剤を隠すのですか」
「あなたがお米を洗うと言い出したからです」
「先生、上手に嘘がつけません」
「あなたがまだ大人ではないという証明ですね」
* * * * * * * * * *
「先生、卒業したら」
生徒は聞きました。
「私は先生にとってどのような存在になるのですか?」
「それは難しい質問ですね」
先生はいつものように答えてはくれませんでした。
「その答えを探すのは時間がかかりそうです」
「では」
生徒は再度問いました。
「その答えが見つかるまでは傍にいてもいいですか?」
先生は答えました。
「見つかるのに一生かかるかも知れませんがいいですか」
「一生傍にいてもいいのですか」
「はい、いいですよ」
「……」
「……何で泣くのですか?」
「私にもよく分かりません」
「あなたは分からないことが多いですね」
「えへへ、はい」
生徒は微笑みました。
「だから先生がいなくては駄目なんです」
「そうですか」
卒業式の前日の、先生と生徒。