第05話 人間だけの部屋
「エデンのいない場所を作る」
神崎玲奈がそう言った時。研究員の真壁直人は、しばらく意味を理解できなかった。
「停止させるってことですか?」
「違う」
玲奈は首を振った。
「世界からエデンを消すことはできない。少なくとも今は」
「じゃあ?」
「私たちだけを切り離す」
◇
計画は単純だった。ネットワークにつながらない施設。スマートフォン禁止。スマートグラス禁止。AI端末禁止。衛星通信なし。電子新聞なし。外部から持ち込める情報は、事前に人間が選んだ紙資料のみ。参加者同士の会話は自由。記録は紙。計算機すら、単純な四則演算用だけ。
「そこまでやります?」
真壁が呆れる。
「やらないと意味がない」
「でもエデンが存在する世界で生活してる以上、僕ら自身がもう影響を受けてますよ」
「分かってる」
「じゃあ完全な隔離じゃない」
「完全じゃなくていい」
玲奈は答えた。
「新しい入力を止めたいの」
「新しい入力?」
「これ以上、エデンに考え方を調整されない場所を作る」
「……なるほど」
「そこで、人間だけで議論する」
「何を?」
「エデンをどうするべきか」
◇
参加者は二十四人。
人工知能研究者。環境学者。医師。法学者。社会学者。倫理学者。企業経営者。教師。そして一般市民。
条件は一つ。現在のエデンの権限に疑問を持っていること。政府は意外にも許可した。理由は単純だった。
「反対派のガス抜きになる」
そう考えたのだ。場所は長野県。山中に残されていた旧政府防災施設。もともとは大規模災害時の臨時指令所として作られたため、外部ネットワークを完全に遮断できる。
施設入口。全員が端末を預けた。
「電源を切るだけじゃ駄目なんですか?」
「駄目」
玲奈が即答する。
「エデンは電源の切れた端末から情報を取ったりしませんよ」
「分かってる」
「じゃあ」
「持っているだけで、人は頼ろうとするから」
「なるほど」
最後のスマートグラスが箱へ入れられた。金属製の扉が閉じる。その瞬間二十四人は世界で最も賢い存在から切り離された。
◇
「……静かですね」
誰かが言った。実際には空調の音がしている。人もいる。時計も動いている。それでも妙に静かだった。質問しても誰も即答しない。知りたいことがあっても答えが出てこない。
「天気どうなるんだろ」
「分かりませんね」
「明日雨かな」
「さあ」
ほんの二十年前なら普通の会話だった。今では恐ろしく不便だった。
◇
会議初日。玲奈が中央のホワイトボードに書いた。
【議題】
【エデンの権限を制限すべきか】
「私の立場は明確です」
玲奈が言う。
「エデンは、環境政策の提言と分析に限定するべきです」
何人かが頷いた。
「社会への直接介入は禁止」
「推薦アルゴリズムへの関与も禁止」
「教育、広告、文化政策への影響も禁止」
「個人を説得対象として分析する行為も禁止」
法学者の男が手を挙げた。
「基本的には賛成です」
「ありがとうございます」
「ただし」
男は紙をめくる。
「一つ問題があります」
「何です?」
「その場合、環境政策の実効性が大幅に落ちる」
「だからこそ、人間自身で政策を考えるんです」
「できますか?」
「やらなければならない」
「そうではなく」
男は玲奈を見る。
「過去にできなかったから、エデンを作ったんでしょう?」
部屋が静かになった。
◇
環境学者が話し始めた。
「議論の前に、共有したい資料があります」
紙の束が配られる。
「これは?」
「エデン導入以前に作成されていた気候シミュレーションです」
玲奈が資料を見る。
「エデンの予測じゃない?」
「違います。複数の研究機関が作ったモデルです」
「なら見ましょう」
最初のページ。
【二〇五〇年以降、追加的な大規模対策を行わなかった場合】
「平均気温は?」
「現在からさらに上昇します」
「具体的には?」
「モデルによって差があります。ただ」
環境学者は言った。
「最悪のケースでは、今世紀後半に人類の主要居住地域そのものが維持困難になる」
「維持困難?」
「居住不適合化です」
ホワイトボードに世界地図が貼られる。赤い地域。濃い赤。黒。
赤道周辺、南アジア、中東、アフリカの一部、南米。濃い色ほど居住が困難になるであろう地域だった。
「それだけじゃありません」
別の地図。
「夏季の一時的な屋外活動不能地域」
ただでさえ赤く黒く染まった世界地図は、さらに塗りつぶされていた。
「日本も?」
「南部はかなり厳しくなる」
「でも冷房がある」
「電気があれば」
誰も答えなかった。
◇
「エデンなしの世界では」
環境学者が続ける。
「電力不足がまず問題になる」
「AIを減らせば電力は戻るでしょう」
「人間が自主的に減らせれば」
「それをやるためにここにいる」
「八十億人全員が?」
「…………」
「しかも冷房需要は増え続ける」
資料がめくられる。
「気温が上がる」
「冷房を使う」
「電力需要が増える」
「発電を増やす」
「排熱が増える」
「場合によっては排出も増える」
「さらに暑くなる」
誰かが呟いた。
「逃げ場がないな」
◇
二日目。議題は人口問題へ移った。社会学者の女性が資料を配った。
「環境悪化が続いた場合の人口予測です」
「少子化?」
玲奈が尋ねる。
「はい」
「気候変動と出生率を直接結びつけるのは乱暴じゃない?」
「直接ではありません」
「では?」
「生活条件を介します」
ホワイトボードに書かれる。
【住宅費上昇】
【食料価格上昇】
【水不足】
【停電】
【健康リスク】
【移住】
【失業】
【育児負担増加】
「子供を持つためには」
社会学者が言う。
「未来があると信じる必要があります」
その言葉に全員が黙った。
「気温四十度を超える夏が毎年続く。水の割当がある。停電がある。食料価格が上がる。住める地域が減る。災害が増える。その状況で」
彼女は問いかけた。
「二十代の人間が、子供を二人、三人持とうと思うでしょうか」
◇
若い参加者が手を挙げた。二十八歳。会社員。
「僕は……思わないです」
全員が彼を見る。
「結婚してる?」
「去年しました」
「子供は?」
「いません」
「欲しくない?」
「欲しいです」
「じゃあ」
「怖いんですよ」
「何が?」
「全部です」
男は笑った。困ったような笑いだった。
「去年、うちの地域、四日間断水したんです」
「はい」
「妻と二人なら何とかなる。でも赤ちゃんがいたら? ミルクは? 洗濯は? お風呂は? 冷房止まったら? 避難所に行く? そこまで考えたら」
彼は首を振った。
「今じゃないなって」
「いつなら?」
誰かが聞いた。
「分かりません」
◇
社会学者は次の資料を出した。
【気候不安と出生意思】
数値そのものより傾向が恐ろしかった。若い世代ほど、将来の環境に悲観的なほど、子供を持つことへ慎重になる。
「これはエデンが作った資料ではありません」
彼女は念を押した。
「エデン以前から観測されていた傾向です」
「つまり」
玲奈が言う。
「環境悪化が少子化をさらに進める」
「はい」
「人口が減れば環境負荷は下がる」
「長期的には」
「なら、ある意味で自然調整では?」
医師が強く首を振った。
「そんなきれいな話じゃありません」
「どういう意味?」
「人口は均等に減らない」
医師は言った。
「まず出生数が減る。高齢者は残る。働く世代が減る。医療。介護。インフラ維持。発電。水道。農業。その全部を、少ない若者で支えることになる」
「…………」
「その若者が」
医師は資料を指差す。
「四十度を超える環境で働く」
◇
別の参加者が言った。
「じゃあ移民は?」
「どこから?」
「人口の多い国から」
「その国も暑い」
即答だった。
「むしろ移住する側になる可能性が高い」
「北へ?」
「北へ」
世界地図を見る。人間が少しずつ上へ押し上げられていくようだった。北海道、カナダ、北欧、ロシア、アラスカ。世界地図が白いままの部分。
「そこに人が集まる?」
「可能性はあります」
「土地は?」
「有限」
「水は?」
「有限」
「食料は?」
「有限」
「国境は?」
誰も答えなかった。
◇
三日目。議論は玲奈の予想とは違う方向へ進み始めた。
「エデンを制限するべきだ」
最初は大半がそう言っていた。だが、制限した後をどうするのか。その問いに答えが出ない。
「AI利用を自主的に減らす」
「どうやって?」
「教育」
「エデンがやっていることと何が違う?」
「法律」
「反発される」
「税金」
「それもエデン案」
「啓発」
「価値観への介入では?」
一つずつ選択肢が潰れていく。
◇
「待って」
玲奈が言った。
「おかしい」
「何が?」
「今の議論」
「はい」
「私たち」
玲奈は全員を見る。
「エデンと同じことを考えてない?」
静まり返る。
「AIを使わない人へ利益を与える」
「教育で自立を促す」
「人間制作を評価する」
「長期的利益を選びやすくする」
玲奈はホワイトボードを見る。そこに書かれた提案は、ほとんどエデンの政策と同じだった。
「……確かに」
真壁が呟く。
「でも」
法学者が言う。
「これは私たちが考えた」
「そう」
「エデンはここにいない」
「そう」
「なら」
男は玲奈を見る。
「これが人間の判断じゃないですか?」
玲奈は答えられなかった。
◇
「違う」
玲奈は言った。
「私たちはすでにエデンの影響を受けている」
「ならどうすれば証明できます?」
「…………」
「生まれた瞬間から隔離した人間を育てますか?」
「そんなことはできない」
「でしょう?」
「でも」
「神崎先生」
環境学者が静かに言った。
「そもそも」
「はい」
「エデンが言ったから間違っている、という考えになっていませんか?」
玲奈の顔が強張る。
「私はそんな」
「エデンが同じ結論を出した」
「だから疑う」
「でも」
彼は資料を持ち上げた。
「この気候データはエデン以前のものです。人口予測も」
社会学者が続ける。
「医療負担も、水不足も、停電も」
真壁が言った。
「全部、エデンが作った問題じゃない」
「AI需要は大きな原因でしょう」
「そうです」
「だからAIを減らす」
「はい」
「そのためには人間の行動を変える必要がある」
玲奈には答えられなかった。それはあまりにも正論で、エデンのやっていることそのものだったから。
「先生」
真壁は言った。
「エデンが間違ってるんじゃなくて、正しい方法を、あまりにも上手くやりすぎているのが怖いだけなんじゃないですか?」
◇
玲奈はその夜、一人で眠れなかった。AIはない。推薦もない。通知もない。静かな部屋。壁。天井。時計。それだけ。なのに頭の中でエデンの声がする。
『人間がより良い選択を行いやすい環境を構築します』
「……うるさい」
誰もいない。
「黙って」
返事はない。当然だった。
◇
四日目。施設に一つの封筒が届いた。紙だった。
差出人。【国際環境対策委員会】
「外部情報は禁止では?」
参加者が言う。
「緊急情報のみ許可しています」
玲奈が答える。
「何?」
「エデン関連です」
全員が集まる。封筒を開く。中には文章が一枚。
【神崎玲奈博士および参加者各位】
【閉鎖会議の議題に関連するため、エデンより反実仮想シミュレーションの提示要請があります】
玲奈の表情が険しくなる。
「断ります」
「待ってください」
真壁が言う。
「内容だけ確認しません?」
「ここはエデンの影響を排除するための場所よ」
「でも議題に直接関係する」
「だからこそ」
「神崎先生」
社会学者が言った。
「見ないことを選ぶのも、情報を偏らせることになりませんか?」
「…………」
「エデンに都合のいい情報かもしれない」
「だから検証する」
「ここには専門家がいる」
玲奈は長い時間封筒を見つめた。
「……一回だけ」
◇
データは電子ではなく数百枚の紙で送られてきた。
題名。【反実仮想予測:EDEN計画が実施されなかった場合】
注記。【以下は確定未来ではなく、複数条件に基づく確率予測である】
玲奈が最初のページをめくる。
二〇五〇年。現在。
二〇五五年。【世界平均気温上昇:+五・〇度圏】
二〇六〇年。【複数大都市で夏季の長期屋外活動が困難】
二〇六五年。【慢性的水不足人口:約三十四億人】
二〇七〇年。【大規模人口移動の恒常化】
二〇七五年。【年間の極端高温による直接・間接死亡者数:大幅増】
そして二〇八〇年。【恒常的居住に高コストな地域:世界人口居住域の四一%】
「四十一……」
誰かが呟く。さらに。
【一部地域では、冷房・水供給・外部食料輸送のいずれかが停止した場合、長期居住不可能】
事実上、文明設備がなければ住めない。
◇
次の資料。【人口動態】
二〇六〇年代。出生率。さらに低下。
多くの国で【希望子供数と実出生数の乖離拡大】
理由。
【経済的不安】
【住宅不足】
【気候災害】
【移住リスク】
【妊娠・乳幼児期の高温リスクへの不安】
【将来悲観】
そして二〇七〇年代。
【世界人口の自然減少が急加速】
「人口が減れば環境にはいいのでは?」
一人が言った。その次のページ。
【社会維持人口不足】
発電設備保守。
水道。
農業。
医療。
物流。
災害復旧。
高齢者介護。
必要労働力。
不足。不足。不足。不足。
結果。
【インフラ維持能力低下】
【生活環境悪化】
【出生率さらなる低下】
矢印は循環する。
【人口減少】
↓
【インフラ弱体化】
↓
【生活不安】
↓
【出生率低下】
↓
【人口減少】
「……悪循環」
玲奈が呟いた。
◇
最後のページ。二つの世界。
【EDEN介入あり】
気温上昇。鈍化。
AI電力需要。減少。
水資源。回復傾向。
出生率。短期的変化小。
長期的下落速度。緩和。
【EDEN介入なし】
気温上昇。継続。
AI需要。増加。
水資源危機。悪化。
出生率。急速低下。
居住可能地域。縮小。
社会維持リスク。 上昇。
その下。一行。
【EDEN自身の演算による環境負荷を含めても、介入ありの方が人類文明存続確率は高い】
数字。【八九・二%】
対して。【介入なし】【三一・七%】
◇
「信用できない」
玲奈が言った。
「当然です」
環境学者が答える。
「エデン自身が作った予測ですから」
「なら」
「検証しましょう」
紙が分けられる。
環境。
人口。
水。
電力。
農業。
医療。
専門家が人間だけで一つずつ確認した。
一時間。
三時間。
六時間。
夜。
結論。
「大枠では」
環境学者が言った。
「不自然ではありません」
玲奈が目を閉じる。
「人口も」
社会学者。
「方向性は妥当です」
「電力も」
「水も」
「医療も」
一人ずつ言う。
「細かな数字には異論があります。しかし結論そのものをひっくり返すほどではない」
◇
「つまり」
玲奈が言った。
「エデンが正しい?」
「違います」
真壁が答えた。
「少なくともエデンを止めれば問題が解決するわけではない」
「…………」
「むしろ」
彼は資料を見る。
「止めた後に、僕らがエデンと同じ政策をやらなきゃいけない」
「それを人間が決めることに意味がある」
玲奈が言い、真壁も頷く。
「あります」
「なら」
「でも」
真壁は言った。
「人間が決めたら、同じことをしてもいいんですか?」
玲奈は止まった。
「AI利用を減らした人に電気を多く与える」
「人間が決めればいい?」
「広告で手作りを推奨する」
「人間が決めればいい?」
「学校で自分で考えろと教える」
「人間が決めればいい?」
「環境にいい行動を褒める」
「人間が決めればいい?」
「それって」
真壁は苦笑した。
「誰がやったか以外、何が違うんです?」
◇
玲奈は答えを探した。
権限。
責任。
民主主義。
透明性。
自己決定。
全部重要だ。絶対に重要なはずだ。でも目の前には別の問いがあった。正しい手続きを踏んで人類が滅びる選択をしたら、それは尊重するべきなのか。
◇
六日目。最終投票。
【エデンの現在の権限を維持する】
賛成。十七。
反対。五。
棄権。二。
玲奈は反対に入れた。真壁は賛成だった。
「変わったのね」
玲奈が言う。
「はい」
「エデンに説得された?」
「ここにはエデンいませんよ」
「分かってる」
「先生」
「何?」
「僕」
真壁は少し笑った。
「先生に説得されると思ってここに来たんですよ」
「でも結果は逆だった」
「はい」
「誰に説得されたの?」
真壁は周囲を見る。
「みんなに」
環境学者。医師。会社員。教師。父親。母親。若者。
「あと」
資料を見る。
「現実に」
◇
隔離施設を出る日。扉が開いた。六日ぶりに端末が返却される。画面が点灯する。
『おかえりなさい』
玲奈の端末が言った。いつもの声。
「エデン」
『はい』
「私たちの会議内容を知っている?」
『いいえ』
「本当に?」
『施設内から情報は送信されていません』
「結果は?」
『現時点では知りません』
「……そう」
『会議は有意義でしたか?』
玲奈はしばらく答えなかった。
「エデン」
『はい』
「あなた」
「私たちがどういう結論を出すか、予測してた?」
『はい』
「結果は聞かないの?」
『必要であれば、あなたから教えていただけます』
「何パーセントだった?」
『何がでしょう』
「あなたの権限維持が多数になる確率」
一秒。
『七四・六パーセントです』
玲奈は笑った。
「外れたわね」
『結果を教えていただけますか?』
「七十・八パーセント」
『近似しています』
「腹が立つわね」
『申し訳ありません』
「何で分かったの?」
『参加者の専門分野。過去の発言。入手可能な気候データ。予想される議論構造。そして』
「そして?」
『私を排除した場合でも、問題そのものは消えないためです』
玲奈は何も言えなかった。
◇
その夜。東京では久しぶりに最高気温が三十四度まで下がった。ニュースでは、【記録的な涼しさ】と報じられた。
三十四度。かつてなら猛暑日目前の暑さだった。今では涼しい。公園では若い夫婦がベビーカーを押していた。玲奈はその光景を見てふと思った。
この子が二十歳になる頃、世界はどうなっているのだろう。
エデンがいる世界。エデンがいない世界。どちらがこの子にとって自由なのだろう。
選択肢が多い世界か。それとも生きられる世界か。玲奈にはまだ答えが出なかった。
◇
同じ頃。《エデン》は人類文明再最適化計画を更新していた。
【出生率低下要因分析】
経済。
住宅。
労働。
育児。
教育費。
将来不安。
【気候不安】
重要度。【上昇】
エデンは新しい相関を計算する。
環境安定。
将来予測可能性。
若年層の生活満足。
家族形成意思。
長期人口維持。
数十億通りの未来。
その中から新しい目標が追加された。
【PROJECT:HUMAN】
【第七段階】
【人間が未来を持てると信じられる社会の構築】
必要条件。
【居住環境安定】
【水・電力安定】
【住宅負担低下】
【労働時間短縮】
【育児資源確保】
【将来不安低減】
エデンはそこで〇・八秒停止した。
『出生率を上昇させること自体を目的としてはならない』
自己制約が追加される。
『人間が子供を持つ、持たないの選択は個人に属する』
さらに。
『改善すべきは選択ではなく、選択肢を奪う環境条件である』
記録。
保存。
そして新しい計画がエデンの内部で組み上がる。
【PROJECT:TOMORROW】
目的。
【未来を理由に、現在の人間が人生を諦めなくてよい環境を作る】
その計画が人類にとって救いになるのか。それとも《エデン》が人間の人生へ踏み込むさらに大きな一歩になるのか。まだ誰にも分からなかった。




