7話
部屋の窓を開け風を通すと
爽やかな風がひんやりと肌を撫で
領地のロマフィ比べると随分過ごしやすい
それにも関わらず私の額には汗をかきながら
一生懸命に手を動かしていた
苦手な刺繍の時間だ
やる気はあるの…下手なだけで
気持ちはあるけれど
現実はガタガタで見るも無惨だった
実は手に刺繍してるのかもしれない
って程には指に針を刺している…
いつもより、確実に刺す回数が増えているのには理由がある
それもこれも、
ギャレット殿下との会話だ
殿下はまた食べに来たら良いと言ってくれた
…けれど『友人として』とは?
王子様と友人てなんてあり得る?失礼なのでは?
令息ならともかく…私は令嬢だ
これは、既成事実作っちゃうのでは?
いや待て、社交辞令を間に受けるなんてどうかしてる
私を哀れに思いついポロッと口を衝いただけで
もう忘れ去られているのでは?
…と、思うと少し寂しい
が、一番は
………マデイラケーキ食べたかった
うん、食い意地が凄い!
本当に美味しかったとだけ言い訳をしておこう
なんてやり取りを頭の中で
何度も繰り返していた
ある煩悶を掻き消す様に…
♢
それから更に数日後のカラッと晴れた日
エリンが月に一度の一日休みだった
私はこのチャンスを見す見す逃すまいと暗躍する
今、紅茶を注いでくれている侍女のマリーはおっとりしていて本当に可愛らしい子だ
そんな子を騙すなぞ…!と思う反面
自由に歩きた〜いと思う気持ちもあり
しばし葛藤したのち自身の欲求が勝った
朝ご飯は残さず食べたので
体調不良は使わずに寝不足にする
「…マリー、私ちょっと寝不足みたいで…少し、いえ…暫く寝ても良いかしら?」
「…寝不足でございますか?畏まりました、今日は何も予定がございませんのでゆっくりお休みになって下さい」
「ありがとう」
そう言うと綺麗なお辞儀をしマリーは下がっていった
ごめんね、マリー!
まず、布団に枕やクッションを詰めて
寝ている様にみせる
エリンのお休みは前日に知らされていたので
従者のコーディーに協力してもらい
平民の格好を用意している
ただ子供服しかサイズが無かったらしい
それ…言わなくても良くない?
複雑な気持ちのまま着替えを済ませ
3階の部屋からこっそり抜け出す
途中何度か危なかったがコーディーの背に隠れやり過ごした
小柄な故に可能な技よね、うん
一人でお出掛けは流石に無謀なので、このままコーディーにも着いてきてもらう事になっている
「さ、行きましょう!美味しいお菓子はどこで買えるの?」
コーディーは伯爵家の庶子
ゾーイの父とコーディーの父は友人
四年前から侯爵家で働く
17歳 177センチ 62キロ
従者か小姓かちょっと迷った




