表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹のトモダチが全員なんかおかしい  作者: 虹ケ原光輝


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/127

出れないのはおかしい

 午前6時45分━━要請を受けた救急車が、位置的にもっとも近かった隣町の消防署から出動したものの、目的地へとたどり着くことができなかった。


 ある地点までさしかかると、次の瞬間には来た方向へと向かい、戻っている。いつの間にか逆の車線を走行しているのだ。


 再度戻ってみたところで、やはり目的の場所へは向かうことができず、救急隊員は混乱の極致に達した。


 連絡を受けた警察が、世界から「抜け落ちた」ようになくなった当該地区と連絡をしようと試みるも、すべての通信が断絶されていた。


 騒ぎはすぐに大きくなって、世界中が知るところとなるのだが、その中心にいる「当該地域」の人間は知るよしもなかった。

 当初はその方法が、なかったからだ(ある人物たちの活躍により、事件解決前に行き来することは可能であったのだが)。


 *****


「なんか、町から出られないんだって」

 午前中の早い段階で、生徒たちにもその情報は伝わってきていた。

 たとえば通勤する男性、あるいは公共交通機関の乗り物などが「町から出られなくなっている」らしいのだ。

「どゆこと?」

「キツネかタヌキに化かされているとか?」

 春風が、そんなことを言う。

「町ごと?」

「さあ……」

 情報だけでは、実際にどういう状況なのかわからない。巨人から身を守るための高い壁が一夜にして出来上がった、みたいなことでもなければ、物理的に出られないということはないはずなのだが。

「キツネかタヌキとは、春風は歳のわりによく知っておるのぅ」

 そう言ったのは、いつの間にか現れていた番長の国府田キララだった。歳のわりに、なんて言っている彼女も、同じ年齢ではある。

 見た目が小学生なうえに、口調もおかしいけれど。


「知っておるか? 今はもう、おそらくいないじゃろうが、その昔は、本当に人を化かせるくらいの知恵と特殊な力を持ったキツネやタヌキがいたんじゃよ? ごく稀にじゃが、そういう個体が生まれてくる。どうしてそれが少なくなったか、なぜ生まれてこなくなったかというと、一番は人工の明かりの影響だと言われておる━━これが増えるにともなって、知恵のある個体が生まれなくなってきたのじゃ。開発と、環境の変化が変えてしまった。夜の列島を写した衛星写真を見たことはないか? ものすごく光っているのだぞ、この国は」


 めずらしく初雪の席にきたと思ったら、これも珍しく長々しゃべったキララ。そのうちに、始業のベルが鳴ってしまう。

「あ、ララちゃんのお話で休み時間オワタ」

 国語の授業なので、担当する宮田眠深先生が教室に入ってきた。


 *****


 いろいろな情報から、だいたい午前6時30分前後を境にして、当該地域に「入れなくなった」という結論が出されたが、しかし原因はわからず、また、その瞬間なにかを目撃したような人物も現れなかった。

 その時間、その場所では、なにも起きてはいなかったのだ。


 *****


「町から出られない、という話は、本当じゃよ」昼休み、やはり初雪のもとに近づいてきたキララが言った。違うクラスで、しかもまだ給食の最中なのだが、普通に入ってくる。

 そんなキララから聞く前に、宮田先生からも話は聞かされていて━━まだ状況がはっきりわからないので、今は平常通りの授業を行いますが、場合によっては中断もありうる、ということを言われていた。


「ことによると、食べるものがなくなったりするんじゃないですかね?」

 季瀬姫は好物のクジラを食べながら、言う。この学校の給食は、わりと珍しいものがでたりするのだ、なぜか。

 港町でも、海が近いわけでもないのに、こうして普通にクジラの竜田揚げが出されたりする。独特の味わいがクセになる、なかなかの逸品と評判はいいので問題はなかったが。


「ララちゃん、もう給食食べ終わったの?」

「もち。3分もあれば、食べ終わるじゃろ?」

 終わらんだろ、と春風がつっこむ。


「食べるものがなくなる心配はないぞ━━見てきたから教えてやるが、わたしにもよくわからない、ヘンな時空の歪みのようなものが、町の半分以上を覆っているような状態じゃった。普通の人は通過できなくて、進んでいるつもりでも、戻される。前方に歩いて行った人が、こちらに向かって戻ってくるんじゃよ。本人は、先に進んでいたつもりでもな」

 車はもっとおもしろいとも語り、

「戻ってくるのであれば、すぐにでも事故に繋がりそうなものだが、そこがなかなかどうして、不思議とうまくできているようで━━ちゃんと対向車線や、あるいはすれ違うようにして戻ってくるので、大きな事故は発生していないみたいじゃよ」と説明し「そんな感じで、普通の人は戻されるけど、わたしは抜けることができるから、なんなら食べ物と言わず人間も運べるので、出られないということはないぞ?」と締めくくった。


 さすがララちゃん、と初雪。キララだけが問題なく移動できるという、そのことに対しては、まったく疑問を覚えていない。それよりも、いったい今この町になにが起こっているのか、それが気になっていた。そして━━今こそ立ち上がる時ではないのかと、自称探偵は考える。

 初雪探偵団の出番がきたのだ。

ちなみに救急車が来てくれなかった家の男性は、尿管結石による腹痛だったので、命に関わることはなかったそうな・・・・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ