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妹のトモダチが全員なんかおかしい  作者: 虹ケ原光輝


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寄り道とかもおかしい

 なにか用事があるとかで別れたキララを除いて、その日の放課後は、そのまま初雪、梨理夢、毘沙門の三人で行動することになった。

 わりと珍しい組み合わせである。いつもならこのメンバーが集まっても、そこには他に春風や季瀬姫、あるいはアンヨの姿があるわけなので、この三人だけには、なかなかならない。

 ちなみに春風は、妖怪高校(誰でも登録できる架空の高校で、有名な作家が主宰しているらしい)の会報誌が届くという理由で、すでに帰宅していた。


「ゲーセン行こうぜぇ」

 まるで男子生徒の仲間内みたいなセリフを、初雪は言う。こういうところが、他の女子生徒との大きな違いだった。

「わーい、じゃあパンツ脱ぎますねー」

 言って、下半身にある自分のパンツではなく、頭部に着用していた男物のパンツを取り外す梨理夢。学校を出てからも、しばらくの間そのまま歩いていたので、けっこう他人に見られていた。

 ゲーセン=防犯カメラもあるし、という考え方だったが、すでにコンビニの駐車場に向けられたカメラに映っていることを、彼女はしらない。


 ゲーセンとは言ったものの、学校から自宅までの帰路圏内に、そんなお店はなかった。なので、この場合はスーパーマーケットのゲームコーナーをさしている。

 いわずもがな、本格的なネット対戦ゲームなどは設置されていなかったが、いざ探すとなると、なかなか設置店舗の見当たらない「フリキュアオールスターズバトル」があるというのが、初雪にとっては、なにより意味のあることだった。

 売り場には見向きもせずに、ゲームコーナー目指して一直線に進む三人。

 数少ない子供の溜まり場の一つなので、下級生の姿もちらほら見られる。同級生は、いないようだ。

(みんな、受験勉強かな?)

 勉強もしていないわけではないが、それよりも遊びが大事なタイプなので、本来は将来に不安がありそうなものだったが、彼女の場合は、それもなかった。

 不安に思うことなど、なにもない。

 あるとすれば、フリキュアバトルのカード在庫がなくなるということに対しての不安しかなかったが、この店で在庫切れの憂き目にあったためしは、今のところなかった。


「それでは、いざ━━」

 大型のものと小型のものと、学校指定の鞄が二種類あるという珍しい学校だったが、女の子たちが主に持ち歩くのは、当然小型のほうだった━━初雪は見た目の印象や、学級委員などを務める姿からは想像できないが「机に教科書入れっぱなし」生徒の一人だったので、教科書類は持ち歩いてはいない。その代わり、鞄の中に入っているのはフリキュアオールスターズバトル公式カードバインダーだった。

 現在、第8段が稼働中のゲームであるが、その第1段からの主要なレアカードはほとんど網羅されていた。

 バージョンアップしても、第1段からのカードがすべて使えるという仕様がうけて、今では成人男性の間でも流行していると聞く。

 初雪すら驚いたのが、自身も所持している第1段のシークレットレアカード「アルティメットキュアライオット」が数万円の高値で取引されているということだった。


 そんな高額カードも多いフリキュアカードをバインダーから3枚選んで、用意する。

「キミに決めました━━今日の初戦は、キュアデスペレーションとキュアノイローゼのネガティブ組に、所長、じゃなくて所長がモデルのキュアワンショットキルの特別編成部隊じゃー!」

 と言ってから、百円硬貨を投入する。

 バトルモードとカード購入モードがあり、カードのみを買うことも可能で、実はこの機能が問題になり、第8段からは改良が加えられていた。

 ゲームをするためには、別途、実際の個人情報が管理されるIDカードを購入し、プレイヤー情報を登録する必要があるのだが、そのIDカード1枚につき、1日の購入数が限られていた。上限で30枚というその制限は、前バージョンで事件となった大人によるカード買い占め問題によって導入されたもので、これは、メーカー側が利益よりも子供を守るという英断を下したとして、評価された。

 それにより、ますますカードの価値が上がったという側面もあったが、それは無視された。


「あー、だからこのキャラ、髪が赤いんですね」

 初雪の発言に、探偵事務所の所長を一度だけ見たことのあった梨理夢が納得する。

「他にもメルキュア(メルトダウンフリキュア)って所長の知り合いがモデルになってるらしいけど、そこまではさすがにわからん」

 バトルモードを選択して、ゲームがはじまる。初雪はカード購入モードを一度しか使ったことがない。その理由としては「カード1枚百円って、頭おかしくなんない?」ということだった。

 要するに、どうせ同じ1枚ならば、ゲームをしないのはもったいない、という理屈だった。


 ゲームは3対3のチームバトルで、相手CPUのフリキュアはランダムで選択される。

 これは意外なことだったが、低年齢層向けのゲームにしては作り込まれたゲームバランスで、簡単に勝てるわけでも、必ず勝てるわけでもなかった。それぞれの相性や個々の強さに左右され、最弱キャラの「キュアダイイング(リビングデッドフリキュア)」が相手にいれば、かなり有利になるし、逆に最強キャラと言われている「キュアジェノサイド・(あかつき)殲滅(せんめつ)フォーム(アサルト(ファイブ)フリキュア)」が現れると、勝つことが難しくなる。そのへんの、内部確率的な部分でも勝敗が左右されるのだった。


「キター、フリキュアチャージタイム!」

 希に発生する、大幅パワーアップのチャンスタイムは、指定時間内でのボタン連打数によって能力が上昇する。しかし、どんなにがんばっても、わずかに有利になる程度しか上げられない子供がほとんどだったが、大昔のゲーム名人レベルの、一秒間に15~16回ほどの連打をすると、勝率8割のアルティメット技が発動するのだが、これを出せるプレイヤーは滅多に存在しない。

 そして初雪は、アルティメット技を発動させられる、希少なプレイヤーだった。

 指先を痙攣させるような、特殊な連打技術を会得していたのだ。

「あたたたたたたた!」

 涼しい顔だが、驚異的なボタン連打は鬼気迫るものがある。

「ほわっちゃ~!」

 見事、アルティメット技の発動に成功した初雪のフリキュアチームが、ゲームオリジナルのアルティメット技を発動させて、勝利する。

「やったー、ユキちゃんの不気味速度な連打で勝ちましたー!」

 梨理夢は盛り上がっていたが、毘沙門はちょっと引いていた。

 そして、勝利の興奮冷めやらぬ中、プレイ終了後のお楽しみであるフリキュアカードが排出される。

 ブラックダイヤモンドのような輝きを放つ、やたら凄そうなカードは、やたらと凄いレアカードだった。

「うっわぁぁぁぁっ!」

 初雪が上げた叫びに、周辺の人々がみんな、なにごとかと注目する。

「8段の目玉カード、シークレットのアルティメットキュアパンデミック・終末(しゅうまつ)狂宴(きょうえん)フォームが出てもうたぁ~……」

 あまりの驚きと嬉しさで、涙さえ流して喜んでいる。

 そんな姿に梨理夢が「ユキちゃん、よかったね~」と頭をなでて、毘沙門はさらに引いていた。周りに注目されることが恥ずかしかったのだが、初雪と梨理夢はそんなことを気にするタチではない。

 我慢するしかなかった。

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