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妹のトモダチが全員なんかおかしい  作者: 虹ケ原光輝


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ゲーム大会がおかしい

「じゃあ、行ってきま~す」

 土曜の朝、そう言って出かけようとした初雪だが、どこへ行くのだろう。訊いてみる。

「遊びか?」

「違うー。今日はスプレトゥーンの地区予選に出陣だよー」

 ゲームの大会を目指してるって話、ほんとだったのか。てっきり、冗談かと思っていた。

「軽く全国決めてみせるから、まあ期待して待っててよね」

 そう自信満々で家を出た妹を、兄と黒人男性が見送る。

(あれ、オレ今日、またセニョールと二人きり?)

 それに気がついた夏樹は、特に用事はなかったけれど、どこかへ出かけようかと考えた。が、お金がないので図書館とか公園とか、そんな場所しか選択肢はない。やはり、バイトをはじめるまではおとなしくしていようと、諦めることにした。


 *****


「ただいまー! 負けたー!」

 帰って来て早々、叫んで玄関に崩れ落ちる初雪。そのまま死んでしまったように動かなくなったので、心配したセニョールが近づく。

「初雪お嬢様、大丈夫ですか?」

「うう、精神的にやられただけだから、もうちょっと待ってて……」

 う~、と小さく唸りながら、しばらくそうしていた。が、突然立ち上がると大会の報告をはじめる。

「やっぱし、チーム力で負けました! スプレトゥーンは四人一組なので、わたしだけ強くても無理でした!」

 スマホを取り出して、渡してくる。

 どうやら、誰かに撮影してもらった動画を見せたいようだった。

「わたしは二十キルしたんだけど、春ちゃんとシャモちゃんがなんの役にも立たなくて、アンヨたんが三十回やられまんた」

 ボロボロじゃねーか。

 アンヨちゃんがかわいそうだろ。

 なんでそのメンバーで挑んだんだ。せめてオレが出ていれば……と思いかけた夏樹だが、自分が出ても活躍できる気がしなかった。

 なので、余計なことは言わずに、動画を見せてもらう━━


『さあ、いよいよはじまりましたスプレトゥーン全国大会地区予選! 一回戦第一試合から参りましょう、それでは出場者の登場です━━まずはチーム《最強初心者》!』

 少年四人組のチームが入場する。

『チーム名は初心者だが、その実力はいかほどか? そして対戦相手はこちら━━チーム《塗装屋寿々木》の登場だ』

 なんつー名前で出てやがるんだ。まあ、別にいいんだけど。

『おっと、このチームはすごい美少女四人組だぁーっ! 対戦相手がもうもじもじしはじめているぞ、大丈夫か! そしてぼくと付き合ってくださぁーい!』

 なんだこの司会者。

 どこかで見たことがあるような。

 前にゲームセンターでフリキュアくじを引いていた人じゃないか? なんか、似ている気がする。


 全員が席につき、準備が整ったようだ。

 声は聞こえないが、初雪がみんなに声をかけている様子が映っている。

『準備はいいか野郎どもと美少女ども! それじゃあいくぜぇ、塗りたくりファイト、レディ~……ぎょおおおおっ!』

 司会者が白目を剥いてヨダレを垂らしてマイクを天に突き上げたのを合図に、試合がはじまった。


 舞台上部の大型スクリーンで、試合の様子が見られるようだ。

 紫色の初雪チームと、オレンジの相手チームが一斉に動き出す。

 両手持ちのダブルスプレーを選択したらしい《ハツユキ》と表示された初雪のキャラがはげしく動き回り、さっそく相手を一人倒す。その後も動きつづけて、一秒たりとも止まらない。攻めの姿勢だった。


 一方、キャラの上部にそれぞれ《シャモ》《ハルカゼ》とあるキャラクターたちは、地面を塗ることを優先しており、背後から迫る敵にまったく気づいていなかった。

 無防備な背中に塗料を吹き付けられて、はじける。

 このゲームはキャラクターがはじけても、すぐにスタート地点に復活できるので、死という概念はない。あくまでも「塗料の妖精」であるキャラクターが、別の色の塗料を塗られて「はじける」だけなのだ。

 だが、その復活時間が積み重なれば、大きなタイムロスとなる。その差で、戦局が変わり、結果が決まってくるわけだ。

 なので、フィールドに塗料を塗りつつも倒されることなく、できるだけ相手を倒していく必要がある。

 のだが━━


 絵筆タイプの武器を持っている《アンヨ》はゆっくり丁寧に、スタート地点の周りから塗っていくし、どうも、相手を倒そうという意図がないらしく、その近くに潜伏した《Pヤマ》という相手に何度も繰り返し、いいようにやられていた。

 復活してははじけて、また復活したそばからはじける。

 アンヨちゃん……誰か助けてやれよ。

 だが、春風も毘沙門ちゃんも自分のことで手一杯で、初雪は前線をキープしようと、一番前でがんばっている。なので、誰もアンヨちゃんを助けにこないので、もう、どうしようもなかった。


 そんな感じで終始劣勢のまま、初雪の奮闘むなしく敗北となった。

 燃え尽きたのだろう、初雪がピクピクしながら、傾いていた。


「ってわけでして、全然ダメでした」

「一回戦第一試合で負けたか。まあ、こればかりは仕方ないだろ。誰のせいでもない」

「そうだね。あえて言えば、お兄ちゃんのせいだね」

「なんでだよ」

「とりあえず、次の大会までに戦えるメンバーを用意しないとなんないなぁ。三人をクビにして」

 最悪だな、こいつ。友達を簡単に切りやがった。

「お兄ちゃんもさ、一応出るつもりでいてよね。腕前が上がるように、コツを教えてあげるから」

 初雪がさっそくポチッチの電源を入れる。今から遊ぶつもりらしい。それとも、よほど悔しかったみたいだから、練習するのだろうか。

「ほら、座って」

 どうやら、兄の特訓だった。

 別に、今は遊びたくないのだが、仕方ない。

「とりあえずガチンコモードで十キルするまでがんばろうか?」

 あー、これは、今日は夜更かしコースだし、妹は受験勉強をするつもりもないらしいぞ、と兄は残念に思う。

 それと、ほとんどアンヨちゃんと大差ない腕前だという自覚のある夏樹は、その目標を達成するイメージが湧かなかった。

(しかも初雪がうますぎるから、ガチンコモードってSランクまで行ってなかったっけ?)

 そんな上級者の戦場にいきなり放り込まれても、おそらくなにもできずに、はじけまくるだけだろう。やらなくてもわかる。

「お前の中の塗装屋魂を呼び覚ませ!」

 初雪にコントローラーを押し付けられるが、夏樹の中にそんな魂はない。

 妹に勝手に作られた夏樹専用のアバター「しょんぼりくん」を選んで、ゲームに入る。

 長い夜がはじまった━━

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