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妹のトモダチが全員なんかおかしい  作者: 虹ケ原光輝


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学級委員でもおかしい

 実は学級委員をしている初雪が、相方の春風をともなって職員室を訪れた。

「イカくさ先生、話し合いの結果が出ました。わたしのパーティーが、最強です」

 初雪が提出したのは、修学旅行の班分け表であった。わりとクラス全員の仲が良くて、誰と誰が一緒になるのかという話し合いが難航していたのだ。


「寿々木、その呼び方は教室の中だけにしなさい━━いや、それも問題だが」

 イカくさ、もとい生坂(いくさか)先生が注意したが、初雪は聞いちゃいない。そもそもその呼び方を開発したのが初雪で、アナグラムまで用いた気の利いたアダ名であると思い込んでいたし、改める気などはなかった。

「だがまあ、三学年の時期に余計な話し合いをさせたのは申し訳ないと思っている。ありがとう」生坂先生が、初雪から用紙を受け取った。

 学校によっては二学年時に行うであろう修学旅行も、初雪の通う闇谷中学校では三学年時に決行される。

 受験への準備に悪影響があるとする父兄も少なからずいるが、それよりも多くの支持者によってこの伝統は守られていた。修学旅行のあるなしに関わらず、わりと名門高に進学する生徒が多いというのも理由の一つにはあったが。


「わたしの班はわたしと春ちゃんとりりちんとアンヨたんの四人ですけど、最強だと思いませんか? あ、戦闘力って意味じゃなく」存在感的な意味で、と初雪はつづけた。

「はあ、よくわからんが」

 生坂先生は一応、渡された紙を精査している。初雪を信用していないわけではないが、それとは別に、なにを仕掛けてくるかわからない部分もあるということを承知していたから。

「こと戦闘に関しては、ララちゃんシャモちゃんヤバ子ちゃんとオマケの姫チームが一番ですけど」

 姫というのは『しめり姫』こと村山拳子(むらやまけんこ)のことで、ヤバ子の“ビッチ仲間”であり彼女に憧れて空手を習っているものの、その実力は小学生女子にさえ劣るので、戦力としてはむしろマイナスな存在だった。

「あー、ええと、戦闘はするなよ。格闘家じゃないんだからな」

 生坂先生は至極まっとうなアドバイスを送ったが、彼は生徒たちが実戦を行っていることを知らない。そしてその実戦とは部活動のそれではなく、いわゆるストリートファイトのような純粋な喧嘩だった。


「うん、問題ないんじゃないかな。じゃあ、この班分けを元にして宿泊所の部屋割りもするからね」

 まだ四十手前だったが、ほとんどの頭髪が消滅した頭を掻きながら、先生は書類を片づけた。

 ほとんど髪はないけれど完全な禿頭ではなく、付着したゴミみたいに残っている頭髪は神である。

「なぜあなたたちはまだ抜け落ちないのですか?」

 初雪は生坂先生の頭髪に問いかけた。

「え?」生坂先生はぎりぎり聞き逃してしまい、気づかなかった。


「イカくさ━━生坂先生」

 一回、完全に問題発言があったが、すぐに言い直した女教師の宮田眠深(みやたみんみ)先生が近づく。

「ああ、宮田先生、なにか?」問題発言もうまく聞き逃してくれた生坂先生はすごい。まるで都合の悪い言葉が聞こえないみたいだ。

「ホテルの部屋なんですけど、もしかしたら三人部屋もあるみたいなんで、その場合どうするかも話し合う必要ありますよね?」

「そこは、極力四人部屋を確保するみたいですよ。主任が言ってました」

「ああ、そうでしたか━━ぎょっ!」

 宮田先生が驚いたのは他でもない、いつの間にか自分のデスクに初雪がいて、その中を物色していたからだ。

「なんだ、うまし棒があるじゃないか」初雪が駄菓子を発見する。

「こらこら寿々木ちゃん、先生の机いじんないで! お菓子あげるから!」

「わーい、やったー」

 その様子を見ていた生坂先生はなにか言いたそうな顔をしたが、なにかを諦めて言葉を飲み込んだ様子だった。

「そういえば先生、修学旅行のお菓子はいくらまでオッケーだったっけ?」

「いくらまで、って制限は別にないけど、そんなに持って行っても仕方ないでしょ? 欲しくなったらその都度買えばいいんだし」宮田先生が答える。

「おお、そうでしたか。まあ、お菓子はさておき、修学旅行のお小遣いを用意しなけりゃならんのでしたな……十八番くじとかポチッチ買うのに散財したので、お金がありません! 先生から借金することは可能ですか?」大真面目な顔でこんなことを言う初雪だが、もちろん通るはずもなく。

「不可能です。というかあなた、中学生から借金なんて覚えちゃってどうするのよ。将来が心配だわ」と、話は未来にまで及んだ。


「もう用事は済んだし、こんな所に長居は無用だぞ」春風が言う。

「こんなとこって……」

 宮田先生は困った表情になったが、この女子生徒にはなぜか口で勝てる気がしなかったので、余計なことは言わなかった。

「あ、最後に一つだけ━━」言って、初雪は再び生坂先生の前まで戻る。

 戻って来られた先生は、なにをされるのかと内心ビクビクしていたが、顔には出さない。

「わたしたち、スクールアイドル始めようと思うんですけど、いいですか?」

「そんな話は聞いていないぞ」先生より先に春風が口を開いた。

「それ、アニメの影響だよね?」生坂先生は冷静に考えて、冷静に返す。「周りに迷惑をかけなければ、勝手にやっていいけど。現実でスクールアイドルって、成り立つのかなぁ」と、実はアニメをよく見る生坂先生は詳しかった。

「りりちんが全裸で踊れば、百パーお金になります!」

「多分いろんな人に迷惑がかかるし、最悪学校がなくなるから絶対にやめてね」

 生坂先生は心の底からお願いした。

 そしてそんな冗談を言った初雪は、もちろんアイドルだろうがスクールアイドルだろうが、なるつもりはなかった。

 彼女の将来の夢は━━フリキュアだったから。

 ━━大マジで。

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