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やさぐれパン子  作者: oga
20/21

決着

 私は潰れてしまったアイスを眺めながら、もうどうでもいっか、という気持ちになった。

遥が携帯から呼びかけてくる。


「ユメ、どうしたの? 試合始まっちゃったよ!」


 ケイコさんは自信満々に後攻を宣言したらしい。

完全に終わった。


「私、最後にどじっちゃったよ。 せっかくアイス作戦を思い付いたのに、転んで潰れちゃった。 近くにコンビニはないし…… あーあ、何でいつもこうなのかなぁ」


「諦めちゃダメっ、姉さんに伝えないと!」


 そんなこと言ったって、試合中に携帯には出られないだろうし……

あっ!


「一回切るよ!」


 私は最後の望みをかけて、枝豆さんに連絡した。

もし会場にいれば、伝言を頼める。

祈りながら携帯にかけると、繋がった。

しかし……


「もしもし、どうしたの?」


「あ、枝豆さん! 今どこにいます?」


「今はお店でケイコの試合を見てるよ」


「……そうですか」


 希望はとうとう潰えた。

電話してしまった手前、一応事情を説明した。

すると、予想外の言葉が返ってきた。


「心配しなくてもいいよ。 ケイコ、ちゃんと対策考えてたから」


 対策?

前もってカレーパンの中身が麻婆豆腐だと知っていたのかしら?


「まぁ、試合を見てみなよ」


 私は一旦電話を切り、スマホから生放送を見ることにした。

試合は、木村さんの番が終わり、ケイコさんがパンの用意をしている所だった。


「さぁ、次は塩辛選手の番ですが、ここで何やらトレーに飲み物を乗せて現れました!」


 ケイコさんの持ってきた飲み物がアップで映し出される。

ガラスのコップに葉っぱのような物が入っており、ワカメ? とか、海藻? などといったコメントが画面に流れた。

いや、あれは……


「モヒートだ」


 モヒートは、ミントの入ったお酒だったと思う。

まさか私と同じ答えに辿り着くとは。

恐らく、カレーの香辛料の対策として考えていたんだろう。


「勝者、塩辛ケイコ!」


 結果は3対0でケイコさんの圧勝だった。

しかし、この後準備していたカツサンドが足らなくなり、不戦敗となった。





「いやー、まさか不戦敗とはなぁ。 惜しかった!」


 夕方、ケイコさんの店で2位祝いをやった。

ケイコさんは始終上機嫌で、木村さんに勝てたことがよっぽど嬉しかったらしい。


「ちゃんと準備してたら優勝だったかも知れないのに」


 私は呆れながら答えた。

しかし、パンの商品化に、ケイコさんはあまり興味はなかったようだ。


「それよりお前ら、今度吹奏楽のコンクールだろ?」


 そうだ、次は私たちの番だ。

 


 


 

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