パンのコンクール開催!
パンのコンクール当日。
その日は日曜日だったので、学校は休み。
私はパソコンの前で待機していた。
コンクールは大手パンメーカーが主催しており、優勝したパンは商品化が決まる。
その宣伝もかねて、某有名動画配信サイトと連携し、コンクールの生放送が行われる。
都内限定のコンクールで、パンの応募総数はおよそ200。
その中で、1次審査を通ったパンの中から、トーナメント方式で優勝者を決める。
ちなみに、1次を通ったパンはわずか8である。
審査員には、パンが好きな一般人が集められているとのことだ。
「ユメ、そろそろ始まるね」
「……うん」
スカイプで私は遥と連絡を取り合い、コンクールの様子を固唾を飲んで見守っていた。
会場は都内の調理学校。
うちから自転車を使えば10分で着く近場だ。
間もなく10時。
コンクールの初戦が始まる時間だ。
パソコンの画面を睨んでいると、司会者が姿を現した。
「では、初戦、スタートです!」
パンは調理に時間がかかるため、出来上がっているものを審査員に出す。
初戦はケイコさんのライバル、木村さんの試合だ。
交互にパンを食べてもらい、おいしかった方に投票する。
結果は、3対0で、木村さんが勝利した。
「勝者、木村シンゴ!」
この後、審査員は別な一般人と入れ替わる。
突然、遥から連絡が入った。
「ユメ、木村さんのパン、ちょっとおかしくない?」
「え?」
「さっきカメラがズームになって中身を映してたけど、あれ、カレーじゃなくなかった?」
……私には全く分からなかった。
遥が言うには、餡の中に白いものが混ざっていたらしい。
「あれ、豆腐っぽかったなぁ……」
豆腐……
「麻婆ってこと?」
カレーじゃなくて、マーボー豆腐のパン?
カレーパンじゃないじゃん。
「……前に、本格四川のマーボー豆腐を食べたことがあるんだけど、あれ、香辛料がキツくて、他の料理の味が分からなくなるのよね」
……!
まさか、木村さんはそれで後から食べるパンの味を分からなくして勝ってきたってこと!?
「どうしよ遥…… ケイコさん負けちゃうよ」
「ケイコさんが先行を取れば大丈夫だけど……」
この試合では後攻の方が審査員に味の印象を残せることから、有利とされている。
だから、フェアにするためにコイントスでそれを決める。
木村さんが先行を希望すれば、必然的にそうなる仕組みだ。
このことをケイコさんに教えないと……




