石鹸を作ろう!
ヨーク城に足りない布は、ミーナさんがあちこちから買い集めた。
でも、汚れるシーツや服を洗濯しないといけない。
治療や小姓達と下級薬草を採取しながらも、アシュレイは石鹸を作れないか考えていた。
王都で、石鹸の作り方も学んでいたし、城には灰がいっぱいある。それに、多くの兵を食べさせる為に肉もいっぱい。
使わない獣脂もある筈だと、台所に気軽に顔を出す。
アシュレイは、いつまでもカスパル師匠の弟子の感覚で動いていたけど、本来なら上級魔法使いヒューゴ様の弟子なのだ。
つまり、台所で働いていた人達は、驚いて動きを止めた。
「ええっと、使わない獣脂をこの缶に溜めておいて貰えますか?」
訳が分からなかったが、魔法使いに逆らう気はないので、料理人は大きな缶を受け取った。
「いっぱいになったら、小姓に私に伝えてください。あっ、灰も木の箱に溜めておいて下さい」
アシュレイは、治療を手伝いながら、獣脂が貯まるのを待つつもりだったが、すぐに小姓から連絡があった。
料理人は、王都から来た偉い上級魔法使いの弟子のアシュレイからの頼みをどうしたら良いのか分からず、親しそうに見えるページ頭に相談したのだ。
「それは、すぐに用意しないといけない!」と顔色を変えて言われたので、獣脂と灰をあつめることにした。
「ありがとう! これだけあれば、少しの間は石鹸に困らないだろうけど、継続的に必要なんだ。誰か作り方を覚えてくれないかな?」
台所の下働きの小僧が二人、アシュレイに貸し出された。それと大きな鍋も!
「台所では臭いだろうから、裏庭でしよう!」
下働きの小僧は、訳も分からず獣脂の入った缶と灰が入った木の箱を持って後ろをついていく。
「灰は……水に漬けるんだ」
その水はどこから出たのか? 驚く二人に「自分で作る時は、井戸で汲むんだよ」と教えるアシュレイ。
「獣脂は、少しの水を入れて大鍋で温める」
その竃をどうしようかと、アシュレイは周りを見渡して、手を地面におくと立派な竃が現れた。
「この竃はこのままにしておくから、次からも使ったら良いよ」
獣脂を溶かすと、酷い匂いだ。
「臭いなぁ……カスを取って、水を入れて、上に浮いている油だけ取るんだ」
それを本当なら数回繰り返すのだが、今は量を早く欲しい。
「この油と、灰の上水を混ぜて……固まりそうになったら、バッドに広げて冷ます」
その金属のバッドが何処から出てきたのか? 小僧達は目を白黒する。
「それで、一晩冷やしたら、石鹸ができるんだ。今は、見本だから俺が冷やすね」
冷やし固められた大きな石鹸を、ここは台所の下働きの小僧に切らす。
「この木の定規を当てて、真っ直ぐに切るんだ。そして、横も! できたら、半地下のミーナさんに持っていくんだよ」
ミーナさんには、小僧達にお小遣いを渡すように、お金を預けておくアシュレイだ。
小僧達は、お小遣いになるので、二回目もアシュレイの指導の元、石鹸作りを頑張って覚えた。
ページ頭からも、料理人に報告が行き、戦争が終わるまで、小僧達は人数を増やして石鹸を作り続けた。




