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荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~  作者: 釈 余白(しやく)
第三章:特別な夏休み

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31/50

31.一体誰が悪いのか

 まったく、なんでこんなことになっちまったんだ。多少予想はしてたもののここまでとは考えてなかった。まあ考えなしだったから悪いとも言えるが……


 そんな僕は今、健二と美咲に大笑いされながらTシャツを脱いでバタバタと風にはためかせているところだ。一応涼太は申し訳なさそうに静かにしているが、明らかに笑いをこらえているし、八重はおろおろしながら今にも泣き出しそうである。


 そしてミクはと言うと、よほど慌てたのか何も言わずに自転車で走って行ったきりでここにはいない。


「上だけ脱いでも意味ないから全部脱いじまえよ。子供なんだからフルチンになろうが誰も気にしないって」完全なる傍観者の健二は気楽に言ってくれる。


「気にしないわけないだろ! だいたい僕が気にするってんだよ! 代わりに涼太が素っ裸になればいいんだよ…… まったくなんで僕がこんな目に合わなきゃいけないのさ……」


「いや、俺が言うのもなんだけど、今のは暦が悪いと思うぜ? なんでそうやって自分のことを好きな相手に限って簡単に怒らせちゃうのかねえ。まったくそんな気が無い相手にはめちゃくちゃ優しくて気遣い完璧なくせにさ」


「ホント涼太に言われるのはなんだけど、だよ。元はと言えばオマエが悪いんじゃないか。自分こそ自らの行いを振り返って反省してもらいたいもんだよ。なんでそうやって好意を向けてくれる相手に冷たくするんだっての」


「いやいやレキも涼太も同じ穴のハクビシンってとこだろ。やってることはどっちも似たようなもんだと思うわ。確かに内容は違うかもしれないけどな」健二の言いたいことはわからないでもないが、好かれないようにわざと冷たくする涼太と一緒にされるのは心外だった。しかし――


「おいおい、暦と一緒にしないでくれよ。コイツは自分のことが好きな相手を一番に気遣ってやれないんだぜ? そりゃ怒られるに決まってるさ。その点俺は違う、告白されたのをちゃんと断ってるんだからさ。なあ常原? そうだよな?」


「うん…… でも決まった相手がいないなら遊びについて行くことくらい構わないでしょ? 迷惑かけるつもりなんて本当になかったんだもの……」


 涼太はまるで他人事のように僕と自分を一緒にするなと言いだした。どう考えても相手に冷たくしているのは涼太だし、僕はそれを見てかわいそうだと思ってしまったから気を使っただけなのだ。


 それなのに、嫉妬したミクがにじり寄って来たせいで川に落ちてしまいずぶ濡れとなっていた。さらにはその落とした張本人はあっという間に自転車で走り去り、僕を一人残して帰ってしまったのだから泣くに泣けない状況である。


「なに言ってんだよ。涼太が常原さんに冷たくしなければ僕だって何もせず見てればよかったんだぜ? それを一人きりで立たせたままにしてさ、少しは反省してほしいもんだよ」僕は即座に反論したが涼太は全く聞く気が無い様子だ。


「そんなこと言ったって俺には俺の考え方ってもんがあるじゃん? 暦にも自分なりの考えがあるからミクを怒らせるのがわかってて常原を構ってやったんだろ? ならこうなっちゃったのも仕方ないじゃんか」


「だったら連れてこないできっちり断るべきだろ? 連れてきたら変に期待しちゃうってもんさ」


「オマエがそんなこと言うのかよ…… じゃあ櫻子がその気になるような態度もやめてやれよ。まったく…… その気がないのに思わせぶりなことしてるのはどっちだってんだ」涼太は思いがけず櫻子の名前を出してきて僕を驚かせる。


「そうやってなにかと櫻子の名前を出してくるのはおかしいだろ。僕がアイツに一体何を思わせてるってんだよ。どっちかというとアイツは僕に突っかかってきて迷惑してるんだってことくらいわかるだろ?」


 僕は懸命に弁明したが、そもそも櫻子のことは全然関係ないことだし、アイツのことが好きだなんて態度、一度だって見せた覚えがない。まあ小学校へ上がる前後くらいまではちょっと好きかもくらいに思ってたことはあるけど……


「とにかく俺は常原の告白を受ける気も付き合う気もないんだ。それは本人もわかってることなんだよ。それでもこうやって勝手についてきちゃうんだから追い返すのも難しいだろ?」


「そんなまるでストーカーみたいな扱いやめてやれよ。悪気があるんじゃなくて涼太のことが好きだから仕方ないんだろ? でも常原さんさ、今日はもう帰りなよ。僕らも片づけをしてから引き上げるからさ」


「うん…… 今日は本当にごめんなさい。それと優しくしてくれてありがとう。三橋君のことが好きじゃなかったら田口君のこと好きになってたかもしれない……」


 おいおいやめてくれ、とも言えず、僕は苦笑いをしながら手を振った。そんな恐ろしい台詞を口にした八重を見送りながら、涼太の言っていることもまんざらおおげさじゃないのかもしれないなんて思うのだった。


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