表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/26

四話  確かめて 2

一向に降り止む気配を見せない雪。

積もりに積もった雪は都心の交通機関を壊滅的にしているだろう。

本来なら起床後はニュース番組で都心の状況を映像から通して観ているはず。

だがそんな暇はなかった。

トキワアサミのおかげで。

いや、俺のせいかも知れないが、ここは黙ってアイツのせいにしておこう。

しかし・・・・・・帰宅するのでも精一杯だ。

中々前に進まない。

雪道に慣れていない挙句に長靴なんてものは履いていない。

学生靴の中に雪が入り込み、足を急激に冷やしていく。

それと同時に体の震えが止まらない。

足を冷やすと体も冷えるとはよく言ったものだ。

ふと、歩いてきた道を振り返ってみた。

長々と俺が作った足跡がある。

その足跡もいずれ、降り積もる雪で消えていくのか、それとも溶けて消えていくのか。



ようやく家にたどり着いた。

まるで極寒の雪山をひたすら歩いている気分になった。

少し大げさだが。

玄関のドアと開けると同時に「腹が減ったぞー!!」と聞こえてきた。

元気そうでなによりだ。



「さて、今日は学園が休みだ。これを機会に色々と確認しよう」


暖房で冷えた体を温めてから買って来た朝食を食べているアサミに声をかけた。

ついでに言うとニュース番組では朝山ビルでの飛び降り自殺に関してはどの局も触れていなかった。

むしろ、この大雪に関する事柄でいっぱいだった。


「振り出しに戻る。俺は自殺をした。しかし死ななかった。それどころかお前さんの平行世界を壊した張本人である」

「そう。そして私がこの世界に来た。正確には飛ばされた? 私の世界が壊れたことによって行き場を無くした私が辿り着いたのがココ」

「そこまでは良しとしよう。しかし問題はその後だ。俺が死ななかった原因は平行世界にあるわけだが、当初俺は自殺を行った事自体がなくなっているのではないかと考えた。なぜなら、この無傷の体や目覚めた場所にある。それなら色々と合意できる点があるわけだが、日付を見てそれを否定した。日にちが進んでいる。俺が自殺を行ったのは昨日の1月21日。そして今日は1月22日。しっかり時間が経っている上に記憶にも俺はビルから飛び降りた事を覚えている。そしてお前。説明は省く」

「長い。君、どこかの教授? 喋り方もそうだし感情が感じられない。オンナノコに嫌われるよ?」

「茶化すな。話に戻るが先ほど有力な情報を得た」


学園は休みなんでしょ~~。と言いながら顔をそらした。

腹にモノが溜まれば次にこれだ。

中々に扱いづらいヤツである。


「飛び降り自殺があった。と友人から連絡を受けた」

「ふむ?」

「しかし問題なのは飛び降りた人が行方不明になっていると言う事だ」

「行方不明?」

「正確には落ちてきていないと言うことだ。つまり自殺が完了するのを見届けた人が誰いない。途中で消えたと言う事だろうか。しかも行方不明になったのは一人ではなく二人。飛び降り自殺を行った人が二人いると言う事だ。記憶上、俺は一人で飛び降りた。しかし二人いる。それに、飛び降りた人は二人ともうちの学園の制服を着ていたそうだ」


俺が飛び降りた場所もこれと重なっていると付け加えて、スボンのポケットからタバコを取り出した。

一本を口に加えてオイルライターで火を点けようとしたが、やめた。

アサミがいるから。

しかしくわえたタバコが妙に虚しい。

仕方なく換気扇のあるキッチンへ向かって火を点けた。

妙に落ち着かない。

アイツに対し散々喋ったからだろうか。

何かが突っ掛かる。

元々は自分が元凶なわけだが、それだけではない気がしてならない。


「どうして・・・・・・」


アサミが俯いて何かブツブツ言っている。


「どうした」

「なんでもない。ちょっと食べ過ぎ? きもちわるい・・・・・・」

「そりゃ買って来たモノ全部食えばな。しっかりと昼の分まで食いやがって」

「ベッド借りて良い? 横になりたい」


俺が返事をする前にアサミは二階にある俺の部屋に向かった。

話す気がないならしばらく好きにさせよう。

後でまた話をすれば良い。

俺は携帯電話を取り出して、ある相手に電話を掛けた。



―――まさかとは思うけど、リンクしてた?

―――いや、そんな筈はない。

―――だって、それを防止するために彼を呼び止めたのに。

―――だけど飛び降りたのは二人。彼と同じ学園の制服。

―――どうしよう。だけど・・・・・・だからか。


タバコのにおいが気になるベッドで横たわる少女は、しばらく独り言を続けていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ