102.ポーションに加護を与えたら、どうなるのかしら?(途中からシリウス視点)
結局、あの本には“式を挙げていないと一緒に寝てはいけない”とは書かれていなかった。
ということは、シリウス様が自室にベッドを手配したのには別の理由があるのかしら?と考えて私はハッとする。
あの時、シリウス様は『考えることがあった』と言っていたわね。
つまり、王太子としての仕事について考えていたに違いないわ。
ここ数日、忙しそうにしているもの。
きっと直ぐに仕事が出来るよう部屋に休める場所=ベッドが必要だったのね。
王城に着いてから数日間は仕事をせずシリウス様は私と一緒にいたけれど、王城の案内が終わった後は王太子としての執務を日々こなしている。
それなら私にも王太子妃としての仕事があるはずでは?と再度、シリウス様に尋ねたら
「一部の者には通達したけど、まだ正式にアリシアが王太子妃だと発表していないから気にしなくていいんだよ。それよりアリシアは、やりたい事でも何でも好きなようにして過ごしてね」
と言われた。
一応、王太子妃教育の時間はあるのよ。
けれど、ダンスの指導がメインになっているわ。
最初に、どの程度の知識があるのか各項目でテストがあったのだけど、ほとんどで合格をいただいてしまったの。あとは少々の知識と、ダンスと口調だと言われたわ。
知識に関しては、シリウス様に言われてイングリルド国について学んでいた成果も大きいわね。
それから仕草は、お義母様とシリウス様を真似ているお陰で“素晴らしい”と褒めてもらえたのだけど……口調は、なかなか難しいわ。
語尾に「~わ」「~ね」「~よ」をつけると、お嬢様らしくなるはずなのに……取ってつけたようになってしまうのよね。
心の声で練習することによって、以前に比べると大分よくなったと思うのだけど、まだまだだわ。一層、努力していきましょう!
というわけで王太子妃として学ぶ時間は短く、それほど大変ではないので自由な時間が沢山あるの。
それなら私がやるべきことと言えば、聖女の勉強よね!
そうして王城の図書館にある聖女に関する本を読み漁った結果、気になることが浮上した。
「これは、シリウス様に聞いてみるべきね!」
その日の、お茶の時間。
私はシアリーを撫でながら、早速シリウス様に尋ねた。
「あの、シリウス様」
「何かな?」
「この国にはポーションがあるのですよね?」
「うん、あるよ。あぁ、ダノン国にはなかったね」
「はい。それでポーションの効果についてなのですが、どのような傷も治せるという訳ではないのですか? お義母様が馬車の下敷きになった時『この怪我はポーションでは』と誰かが言っていましたが」
あの時、周囲は絶望的な雰囲気に包まれていたわ。
それはつまり、お義母様が助かる見込みはなかったから。
今、思い出してもゾッとするわ。
だからこそ、私の予想が当たったら嬉しいのだけど。
「あぁ、ポーションは万能治療薬という訳ではないからね。重症だったり、命に係わる怪我には効力を発揮しないんだ」
「なるほど。それでは私がポーションに加護を与えたら、性能が向上したりしないでしょうか?」
「加護を?」
「はい。シリウス様が『物に対する加護の効力は半永久的』だと言っていたので」
「あぁ、なるほど。うん、それは試す価値があるかもしれないね」
シリウス様は、その発想はなかったと感心している。
(もしも私の仮説が正しかったら、少しでも多くの命が救えるかもしれないわ)
私の胸は期待に膨らんだ。
「でも、その前に。アリシアの神聖力とポーションの親和性を検証した方がいいだろうね」
「親和性ですか?」
「うん。同じ“治癒”の効果でもアリシアとポーションでは、その成り立ちが違うからね」
「なるほど! そう言われると私自身、自分の力をよく分かっていないので色々試した方が良いかもしれません」
「うん、そうだね」
私が元気に答えると、シリウス様は少し遠い目をして窓の外を見た。
あれですか、騎士達の剣すべてに加護を与えてしまった事を思い出されていますか?
というわけで、色々検証することになったわ。
その結果、私にはポーションの効果が発揮されないということが発覚したの。
魔力がない所為なのか、魔力とは別の神聖力がある所為なのか定かではないけど。
その上、自分に対して治癒魔法が使えないことも分かったわ。
つまり私が怪我した場合、治す術がないの。
これは、怪我をしないように気を付けなくてはいけないわね。
それから本来の目的であるポーションに加護を与えることについては、無事成功したわ。自分で言い出しておきながら、初めはどうやったら加護を与えられるのか分からなかったのだけどね。
でも『これを飲んだ人の身体が万全な状態になりますように』と祈ったら、ポーションが光輝いたので加護の付与が出来たみたい。
仮説通りに上手くいって私は内心、喜んだわ。
これで命を落とす人が減る。
怪我をして苦しむ人が減る。
それは、どんなに素晴らしいことでしょう。
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検証の結果、アリシアにポーションが効ない事が判明した。
しかも、アリシアは自分自身に治癒魔法を掛けられない。
これでは万が一、アリシアが怪我をした時に治す術がないではないか!
絶対、絶対にアリシアが怪我をしないように細心の注意を払わなくては!
まずは警護の手を増やすべきだろう。
そろそろ、彼らの王室騎士団入隊試験も終わっている頃合いだ。
まだ報告は受けていないが、恐らくは全員が合格しているだろう。
もっとも、まだまだ訓練が必要なはずだ。早くアリシアの、王太子妃専属護衛騎士の地位まで上り詰めてくれるといいのだが。
やはりアリシアの傍にいるのは、アリシアが気を許した人物であり、何よりもアリシアに忠義を持てる人間であるべきだ。
それは、さておき。
アリシアが祈ると、あの加護の宿った剣のようにポーションが淡く光る。
アリシアが言っていたように、ポーションに加護を与えることは可能なようだ。
しかし問題は、その効果だった。
アリシアが祈りを捧げたポーションの効能は絶大すぎて、重体どころか欠損部位も蘇らせる程の効力を発揮したのだ。
これにより、父上だけではなく宰相達までもが頭を抱えることになってしまった。
このまま世に公表すれば、要らぬ争いに発展する可能性がある。人は欲深いものだから、独占したり、強奪したり、高値で売買したり……可能性を挙げればキリがない。
今まで世の中になかった力なため、取り扱いが難しいのだ。
慎重に扱わなくては、下手をすれば戦争が起きるかもしれない。
当然、狙われるのはアリシアの身だ。
それ故に、僕も頭を抱えることになった。
当のアリシアは『これで命を落とす人が減りますね』と笑みを浮かべて喜んでいたけれど。
能天気なアリシアですねぇ。勉強は出来るのに、政治のことは考えていないのかな?
いえいえ、それよりも大事なのは人命と思っているだけですね。
ところで、皆さんならシリウスの言う“彼ら”が誰の事か分かりますよね?
えぇ、最近出番がなかった彼です!
ただ、現時点で彼が登場する場面を全く考えていないんですよね……どっかで出してあげなきゃかなぁ(。。*)




