第四話 「奇形」
彼女が開け放った扉の向こうに、僕は恐ろしい光景を見た。壁から、何匹ものミミズの大群が生えているのである。
その光景に僕は愕然として、一瞬自分が何を見ているのか、理解できなかった。
ただ困惑していることしか出来なかった。
「理由は分からないけど、ある日いきなり壁から生えてきたんだ」
と三島さんは言った。彼女はハサミを構えている。いったいこれから何が始まるのだろうか。
壁いちめんに生えているのは、間違えなく巨大なミミズの大群であったが、通常のミミズとは、少し様子が違っていた。
一本のミミズの頭が、二股に別れていたり、死んで動かなくなったミミズが、まるで木の棒のように硬直していたりした。
けれども、真っ白い壁から、赤黒い大量のミミズが這い出して、ウネウネと動いている様は最高にグロテスクで、僕の全身の鳥肌が立っていくのを感じたた。
「あの、これは…………」
僕が言葉を失い、硬直していると、彼女は言った。
「剪定だよ。ミミズの剪定。これから君には、このミミズたちの見た目を良くする為に、剪定をしてもらうの」
言われている言葉の意味が分からなかった。僕にこのミミズたちの剪定をしろ、というのか。
その為に彼女と、彼女の父親は、僕にハサミを手渡したのか。
「さっきも言ったけど、これから私が見本を見せるね」
と三島さんは言った。
次の瞬間、彼女は剪定バサミをミミズに押し当てると、なんの躊躇いもなく、それを切った。
切られたミミズから、白い液体が飛び出して、彼女の頬にくっついた。
今まで暴れ回っていたミミズは、彼女に切られたことで、生命を失い、体の半分が、地面に落ちた。




