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13話

「しまっ!!」

森での狩りの途中、猫の魔物に不意打ちを受ける。

辛うじて盾に救われる。

虎、蜘蛛の魔物は巨大化していたのに、猫は魔物以外の猫とそう大差のない体躯をしている。


では何故、相対している猫が魔物と分かるのか?

それはスピードだ。

小さい体に素早い動き、実際猫に殺される冒険者は後を絶たない。

一人で出会ったら、兎に角逃げろ。

それが鉄則だ。


逃げ切れるものは次のステージへ、逃げ切れなければ、次の輪廻へだ。


正直、会敵の仕方が最悪だ。

会敵時にはもう、相手の間合い。

初撃を躱せただけでも僥倖だ。


抜剣していない状態で、森をうろつくなんて!

それよりも、仲間から離れたこと自体が油断だ・・・。

魔法のこと、武芸のこと考えたいことが多すぎて、休憩中、おもむろに歩き始めていた。


周囲に人気を感じなくなってから襲われた。

完全な狙い撃ちだ。


猫は初撃を躱されるとそのまま直進し、木を蹴り軌道を変える。

跳弾する弾丸のように、森を縦横無尽に動きまくる。

動きのランダムさに翻弄され、次第に追い詰められていく。


パニックになりかけたが、数年前の虎に比べたらそこまでのプレッシャーはない。

次第に落ち着いて攻撃を躱していくが、動きの速さは猫が一枚も二枚も上だ。


反撃の暇もない。

魔法を練る時間もない、矢玉を握る暇もない。

躱しているだけでは体力が消耗し、このまま・・・・・・。


嫌だ!絶対に嫌だ!!

魔法も武芸も中途半端すぎる!

カチヤとエッチなこともしていない!

まだ知らないお店だって、知らない土地だって、たくさんある。

死ねない、死にたくない!!


以前の虎と対峙し、死を感じた時と似た感覚があった。

脚に身体強化を重ねる、時間の感覚が伸びるような感覚があり

自身の筋肉の動きが認識できる感覚。

筋肉の収縮、伸展に合わせて魔力を流動させる。


猫が、今まで俺のいた場所に降り立ち周囲を見回す。

完全に俺を見失ったようだ、それはそうだ。

先ほど居た場所から、十数メートル離れた場所に着地し、咄嗟に木の陰に隠れたからだ。


目標を完全に見失った猫は、周囲を再度見回し、どこかへ去っていった。

「ふぅ・・・」


猫の撤退を確認すると、緊張が解ける。

木を背にしてへたり込む。

前を見ると、ポカンとしたカチヤとラインハルト、ダグラス先生の姿があった。


何があったのかを先生に問われ、先ほどの猫との遭遇戦を説明する。

しこたま怒られた。

先ず森を一人で歩いたこと、それは人間の生活圏を出て魔物の生活圏を、無防備に歩いていたということ。

冒険者以前に、この世界の住人として有ってはならない行動。

怒られるのも当然だ。


次に余裕のあるうちに助けを呼ばず、一人で対処しようとしたこと、今思えばある程度離れていても声は届く。

そんな考えも起きないほど、パニックになっていたということだろう。

冷静さを欠いた対処をしたこともさることながら、仲間を頼らなかったそのことの方がより強く怒られた。

普段から相手を天才だと思っていたが、どこかで自分より劣るのでは? と思っているのかと、かなり強めに怒られた。


そんなつもりはないのだが、虎の魔物の時は一人で対処したが、カチヤに先生を呼んできてもらい、助力を願う行動があった。

その時通常の状態ではないが、対処しきれた。ならば、今回もと言う慢心があったのではないか? 否定しきれない。


カチヤは、チームで動くのが苦手な頃から知っている。

ラインハルトは、会議の時の脳筋系天才的な発言により、頼りない印象が強い。

巻き込むなら自分がと、無意識に選択肢を狭めていたのかもしれない。


実力は自分より上なのを痛感しているのに、実践なら自分の方が、なんて言う根拠のない自信があったのかもしれない。

貰いものの才能に、いつの間にか胡坐をかいていたのだろう。

怒られて当然だ。


最後に俺の失態で、猫を討伐できなかったこと。

これにより、また誰かが被害にあうかもしれない。

一人では難しい相手だがこの人数、このパーティーなら討伐は出来ただろう。


ひとしきり怒られた後、先ほど遭遇した場所に全員で向かう。

遭遇から説教まで、5分くらいのロスであったため、戦闘の痕跡はあるものの猫の痕跡、待ち伏せは無かった。

周囲を捜索する中で、地面に凹みを見つけた。

先ほどの、離脱の時にできた凹みだろう。


目と感覚を凝らすと、凹みに俺の魔力が残存しているのが分かった。

しばらくたつと、地面に吸い込まれ魔力は消失する。

・・・・・・魔力が残るなら、残った魔力を操作できないだろうか?

そう考えた俺は、先生に狩りの中断を願い、今度は全員で森を抜ける。


森を抜けた草原で実験を始める。

先ず、先ほどの移動の反復から。 脚の運動に合わせて魔力を流動させる筋力と魔力により、反発力の増した脚力で10メートルほど移動成功。

望んだ距離に応じて、魔力を調節していく。


感覚をつかむと調節も容易にできる。

そうして、移動でできた凹みに集中してみる。

魔力が残っていることが分かる。

その魔力が残っているうちに、火柱のイメージを創る。


時間のたった凹みに変化はないが、新しい凹みには火柱とはいかないが、火が灯る。

結論から言えば、大地に残った魔力も操作可能だった。

移動と同時に着火のイメージをすると、1メートルくらいの火が上がる。

設置型の爆弾まで行かないが、似たような効果は期待が出来る。


この実験で疑問が生じる。

魔力は人体のどこで発生するか?

漠然と魔力を流動させることは出来る。

そう習って今まで使っていたが、魔力の流動の始点には気を向けてこなかった。


次にどの程度周囲の空間に、魔力を流すことが出来るのか?

大地に溶けるまでの時間は魔力は、俺の魔力だ。

これは先ほどの実験で、証明できたようなものだ。

地面に残る魔力を、操作することができるということは、何かしらで離れた場所にある魔力と、繫がっているのではないだろうか?


疑問と仮説が頭を駆け巡る。

先生に確認してみると、魔力の始点は所謂丹田の位置から始まる。

それが現在の知識のようだ。


確かに体表ではなく体内なら、魔法の副作用に説明がつく。

これまである失敗例、人体発火、土座衛門、腐乱、風化。

体内の魔力で体内から発現し、作用したと考えれば、そのような事例になる可能性がある。


身体強化は、体内の魔力を体内で消費するし、異物を創造しているのではないので目に見える害はない。

0.5は、体内の魔力を体表に固定することで、魔力自体を体内から持ってくることはない。

要するに、体表の魔力を使い異物を創造しているのではないか?


絡まった糸が、解けるようなそんな感覚だった。

今回のことで、身体から離れた魔力が何故作用するのかと言う疑問が残ったが、魔法発現の糸口が見つけられた。

これなら0.5に拘らず、身体強化を使用していれば使用可能かもしれない。

そうゆう仮説も成り立つ。 ・・・・・・まぁ、怖くて実践はしないだろうけど。


晴れやかな顔で、仲間のもとに戻る。

「本当に、アドルフは考え無しに実験するんだな・・・・・・」

先生は、呆れている。

「そこは昔と、変わらない」

カチヤも半ば呆れているようだ。

「アドルフ・・・お前魔法以外に興味を持ったら、必ず国に報告しろよ? 友達を犯罪者にしたくないからな」

突飛なことを、ラインハルトに言われる。

「何でそんな忠告が出てくるんだ?」

ラインハルトの言葉は、理論を飛ばして発せられるので、確認が大変だ。


「人体に興味を持ったら、解剖でもするんじゃないかと思ってな」

するか!そんなこと。

前世では生物学は、意外と悪くない成績だったから、知識としてはもうあるわい!


そんな、考え無しの危険思想の持主と誤解は受けたものの、着実な前進を感じられ気分は晴れやかだった。


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