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12話

  虎の討伐から6年、今や幼い弓使いの英雄譚は寂れた。

 今の流行はどこか遠い国の竜を討伐した騎士団の歌。

 火の息を掻い潜り、翼の起こす風に耐え一人、二人と仲間が倒れ、それでも鉄の意志で前に進み、辛くも竜の首を断ち切る。

 そんなまるで、物語から抜け出て来たかのような、英雄と呼ぶにふさわしい騎士団の歌。


 かつての幼い英雄も歌を聞き大喜びをしている。

 ・・・・・・これで人々からの注目がなくなり、大手を振って街を散策できる。と、大喜びだ。


  あの事件が、尾を引き未だ住んでいる王都に、どんな店がありどんなものが売られているのか知らない少年は待ち望んだ自由を喜んでいる。


 ◇ ◇ ◇ ◇


  晴れて11歳になった俺は、待ち望んだ自由散策を楽しんでいる。

 あまり多くないお小遣いを持ち握りしめ、市場の屋台に並ぶ串焼きや野菜などを見て回る。

 ・・・・・・一人で自由に回りたいが、片時も離れないカチヤに。腕を引かれたりしながら散策をしている。


  カチヤは、伸ばし始めた金髪を時折掻き揚げながら、市場に並ぶ食品などを注意深く見て回る。

「カチヤさん? まだ買うのかな?」

 片手に荷物を持たされ、半ば無理やり片手を組まされている。

 ・・・・・・当たってんだよなぁ~、当てられてんのかなぁ~。

「もう少し・・・・・・」


  品物を吟味している顔は、幼さを残しながらも年相応の変化があり美少女と呼ぶに相応しい容貌となった。

 身体も成長しているが、未だ少女らしい体形だ。

 今まさに、当たっている胸もまだまだ成長途中だ。

 ・・・・・・って、言うか時々肋骨に当たって痛いです。


 あの年、婚約が決まってからカチヤは俺にベッタリだ。

 訓練に遠出するときはもちろん、たまの休日もこうしてついてくる。

 ・・・・・・最終的には、連れまわされることになるが、まぁ、可愛らしい娘と街を歩く。

 つまりデートなんだが、正直楽しい。


  楽しいのだが、婚約の過程までがどうも腑に落ちない。

 俺がプロポーズしたらしいのだが、それらしい発言に一切の心当たりがないんだけど・・・・・・。

 ただ、そこを確認すると、カチヤの顔が般若のようになるので未だ詳しく追及は出来ないので、プロポーズしたことにしておこう。


  さて、魔法の開発だがこの6年で多少変わったことがあった。

 先ず、開発者が俺一人ではなくなったことが一番大きい出来事だろう。

 それは、俺と同い年の第三王子、ラインハルト・リッターシルト・セロフィーだ。


 ラインハルトは、王城で定期的に行われる、俺・国王・宰相・司教、他数人で行われる魔法開発会議(仮)を盗み聞きし発動条件を入手、無謀にも挑戦し成功したのだ。


  国王譲りの茶髪に細目だが、整った顔をしている幼さを残す少年だ。

 顔に似合わず武芸が得意で、盾を用いた正統派の騎士剣術を使う。

 カチヤとは違い、確実に相手の剣を受け止めてから剣を振るう剣術だが、カチヤと同じ所謂天才だ。

 既に中伝を収めて、ミドルネームを名乗ることを許されている。


  この国では、洗礼名はなく収めた武芸に因んだミドルネームが、指導者より授けられることになっている。

 俺は未だ、名乗ることを許されていない。

 カチヤはと言うと、先日シュベルトの名を貰っている。


  話がそれたが、ラインハルトは魔法が使えるようになったため、会議に参加するようになったが、成功したのは火ではなく風で

 はた目からは気づかれなかったが、かなり強力で射掛けられた矢のことごとくを撃ち落とした。


  残念なことに、攻撃に転用するイメージはなく、あくまで防御の技の一つと言う認識のようだ。

 もう一つ残念なことは、最初の勇者の伴をした魔法使い(長いので原初の魔法使い又は原初と呼んでいる)と同様に、作用機序が上手く伝えられないことだ。


 なので、基本的に俺が文書に起こし、まとめ、国王たちが疑問点を抽出し、改良・改善点を俺に返し、再実験と言う流れを繰り返している。


  ラインハルトは、主に防御系の魔法を担当してもらっている。

 土の魔法は防御に有効だと思うのだが、ラインハルトも俺も発現に至らない。


  予想の域を出ないのだが、得意属性があるのではないかと思うのだが、2人では検証しようにも条件も、情報も不足しているのが現状だ。


  大人たちは、まだ11歳だからと焦らないように諭してくるが、6年でほぼ前進のない現状に、焦るなと言うのは無理だと思う。

 先ずは火の魔法だけでも普及させるか?

 けど、身体強化のことを考えると、ある程度俺たちが進めておかないと、また永い停滞がつづくのではないだろうか?


  そう思うとさらに焦りは募る。

 魔法だけに掛かり切りになれない、御家の弓術も訓練は続いている。

 中伝の縮地に似た歩法が、未だにうまくいかない。


 武芸で、同年代に置いて行かれ(流派は違うが)、魔法開発もうまくいかない。

 時間が有限であることを、俺は体感しているし、焦りが焦りを呼ぶ。

 そんな悪循環を見かねて、ダグラス先生は、また森での狩りに誘い出してくれた。


6年話を進めたことで

また説明回の復活!

申し訳ありません、

次回はもっと動きのある話にしたいと思います


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