13話「ベタな新装備」
あらすじ
無事進級試験を終えて、新しい装備を
購入することにした碧大。
完成したそれは一体……
「完成したぞ坊主。」
そう言いながら武器屋の店主は、店の奥から
大きな包みを持ってきた。
ニヤニヤといたずらが成功した子供のような
笑みを疲れた表情の上に貼り付け、包みを解い
ていく。
「こいつを打つのに俺の全てを込めた。駄作な
ワケがねぇ。持って行きな。」
「最初の自信の割に口数が少ないんじゃ
ないか?」
「ケッ、打った俺にもわからねぇんだよ。
ギミックなんかのことじゃねぇ、その性能がよ。
硬度なんかも申し分ねぇんだが、それ以上に
何かを秘めてると、俺の勘が言ってるのさ。」
碧大の問いに対して、店主が苦虫を噛み潰した
かのような表情で答える。
どうやら二人の間に鎮座したこのシロモノは、
作った本人さえも分からない曲者のようだ。
最初見せられた素材は象牙のような色を
していたのにも関わらず、ソイツは白く
輝いていた。
「これ、料金だ。約束通り初任給全額。
家主にも金を渡せなかったんだ、役に
立たなかったら返してもらうからな! 」
「へっ、役に立たなかったらソイツはお前ぇの
腕が悪い。素材も職人も一流なんだ。」
店主のその言葉に、分かっていると視線を
送りつつ碧大は手甲に手を伸ばす。
「へぇ……これが俺の武器か……着けてみて
いいか? 」
「もう、ニイちゃんのモンだ。
けど、ソイツの素材を寄越した貴族みたいに試し
切りなんざした日にゃタダじゃおかねぇからな。」
「分かってるよ、着けるだけさ。それで
どうつけるんだ?」
「んなことも分からねぇのかよ……
ここを外して、ここをこうだっ!」
碧大に解り易いように取り付けた店主は、
最後にバシンと碧大の腕を叩き、満足げな表情を
浮かべる。
「やっぱり俺の打った武器は、実際に装備して
貰わねぇとな!」
「どうだ?似合ってるか?」
「おめぇ俺がファッションデザイナーにでも
見えるのか?
まぁ……似合ってるがよ……」
「オッサンのツンデレ……嫌なもん見せるんじゃ
ねぇよ!」
「なっ! ソイツは悪かったなっ! てめぇなんか
早く行っちまえ!」
「……ありがとよ!」
店主に背を向け、入口のドアに手をかけながら
碧大が答えた。
「嫌なもんはお互い様じゃねぇか……」
そんな店主の呟きが聞こえていたのか、聞こえ
ていなかったのか碧大は武器屋を後にして、
東の門へと向かった。
孤児院は反対側なのだが、今回碧大が新しい
武器を手に入れたため、試しも兼ねてルーシー、
ソフィと共に草原でピクニックをする約束を
していたのだ。
「碧大さーん!」
しばらく歩いていると、碧大を呼ぶ声が
聞こえる。
多少デジャヴを感じるが、今回は可愛らしい
女性の声なので、碧大は素直に呼びかける声の
方向へと駆けた。
「おぉルーシー、ソフィも! 待たせたか?」
「いや、私たちも今来たところだ。それか?
新しい武器は。」
「ん? あぁ、着けっぱなしだったか。」
ソフィが手甲に視線を向けると、碧大が、武器屋
からずっと装着していたそれを持ち上げながら
答えた。
「へぇ! なんか凄い魔力ですね。」
魔法の素養があるルーシーがそう言うと、同じく
ユニーク使いであるソフィもそれに同意する。
「うむ、私は素材も見ているが、あの時よりも
それが増している。」
「武器屋のオッサンが頑張ってくれたからな。
早く試してみたいよ。」
「そうですね! それじゃあ行きましょうか! 」
ルーシーがそう言うと三人は草原へ向かう
門をくぐった。
「軽く野犬でも探して試すか! 」
「いや、まずは魔力を通してみてはどうだ?」
碧大の今にも飛び出しそうな勢いを制して
ソフィが提案する。
「ん? あぁ! そうしよう!」
武器が完成するまでの一週間、特に出来ることも
無かった(討伐は武器が無いためルーシーに
禁じられていた。)碧大は、魔力を付加するに
当たって、詠唱を短縮ではなく省略できるように
なっていた。
フッと息を吐くと同時に碧大の体に魔力が巡り
発動までのプロセスをなぞる。
そして手甲にまで、その魔力が行き渡ろうとした
瞬間それは起きた。
バチィ!
何かに弾かれたような音が聞こえたかと思った
瞬間、碧大の魔力が霧散した。
「えっ、魔力が通らない……なんでだ……」
「やはりな……提案しておいてよかった。」
フムとソフィが思案顔をしながら言った。
「それほど大きな魔力を秘めた武器だ。恐らく
碧大の魔力と同調せずに弾かれたのだろう。」
「えっ、それって魔力付加出来ないってことか?」
「いや、研鑽して碧大の魔力を上げれば
問題ないが、時間もかかる上に才能も
絡んでくる。
フム、どうしたものか……」
ソフィのその言葉を聞き碧大はウィンドウの
存在を思い出した。
しかし先程感じた、不可侵とでも言わんばかりの
手応えを思い出し、ウィンドウで魔力を
上げるには、経験値が足りないであろうことを覚った。
「と……とりあえず、付加無しで
試してみよう! 」
碧大はそう言うと、森の方へ駆けて行った。
(クソッ! こんな所でオヤクソクかよ! )
心の中で、そう悪態をつく碧大にはソフィらの
制止は届かず、ついに碧大は森の目の前に居た。
「試験じゃ素手だったんだ。大丈夫だろう!」
そう碧大が言うと、
ゴゴゴゴゴゴゴ
と言う地響きが聞こえた。
なんだと碧大が森を見据えた瞬間
シュタッ
そいつは碧大の前に現れたのだった。
――――
「あの馬鹿ッ! ルーシーここで待っていろ!
すぐに戻る! 」
「は……はい……」
遠目にもその存在は見えていたのかソフィが
慌てて碧大の方へ向かう。
ソフィの指示に従い、ルーシーは立ち尽くした
まま碧大の前に現れた存在を見た。
「お……狼? 」
そう、碧大の前に姿を見せたのは、
体長2メートル程だろうか、巨大な狼であった。
――――
「我を眠りを妨げるのは貴様か? 」
狼が碧大に問いかけた。しかし碧大はその姿に
驚き言葉を失う。
ただの狼ではない。
その姿は、二又に分かれた尾を持ち、体毛は
未踏の処女雪を思わせる程白い。
真白な、その美しさにそぐわない鋭利な牙を
碧大に向けて狼は言った。
「フム、今一度問おう。
私の眠りしこの森に、無粋な暴力のような魔力を
持ち込んだのは貴様か? 」
氷のように冷たい圧力が狼から放たれる。
それを後から追いついたソフィも
感じ取ったのか、珍しく怯えた表情で呟いた。
「まさか……フェンリル……」
碧大もその名は地球で聞いたことがあったが、
一般的な学生である碧大は、詳しい神話までは覚えて
いない。しかしその放たれる魔力から、今までに
見た魔物よりも、遥かに強大な化け物だという
ことは碧大にもわかった。
「私のことを知って眠りを妨げたか人間の娘よ。」
「……ッ」
ソフィは向けられた殺気に尻餅をついた。
いかにAランクといえど、こんな化け物を相手に
するには、準備が足りなすぎた。
自らの死でも想像したかのように、ソフィが声に
ならない悲鳴を上げる。
「……ここには太古の魔物が眠っているって
聞いた事があるが……おとぎ話の類だと……」
「この森じゃ何度も危ない目にあってきたけど、
お前がボスってわけだな!
無粋かどうか知らねぇが、お前が言ってる
魔力ってのはこれだろう! 」
碧大が心当たりの手甲を持ち上げながら言った。
「この子は関係ない! 俺が相手だ! 」
そう叫びながら、ソフィを庇うように碧大が立ち
はだかると、それを見たフェンリルは、驚いた
ように言った。
「我を恐れぬか、人間の男……よかろう……
ん?待て……その武器まさか……」
先ほど完成したばかりであるこの武器を太古の
魔物であるフェンリルが知っている筈がない。
おそらく武器から放たれている、フェンリルと
比べても勝るとも劣らない、この魔力の事を指した
のであろう。
「古き友を感じる……人間の男、貴様あの真古龍
を打ったか?
いや、貴様のような者に奴は斃せまい……
偶然手に入れた物か。
古き友が死んだとも思えん。
道理、古き友の魔力が貴様を先程から試している
ワケだ。
戯れか?貴様に御しきれるとは思えんが……
ならば……」
そう静かに呟くと、フェンリルが地を蹴った。
途端、碧大とフェンリルの間に横たわっていた
距離を一瞬で殺し、碧大の前に現れた刹那
「グォォォオオオオ! 」
フェンリルが吠え、同時に膨大な魔力が碧大に
ぶつけられる。
(死んだ……)
碧大がそう思い、目を閉じた。
どうやら背後のソフィも意識を手放したらしい。
(あれ? 死んでも意識ってあるのか? )
その瞬間は一向に訪れない。
恐る恐る碧大が目を開くと、そこには納得した
ように笑う狼の姿があった。
「アッハッハ! なるほど人間の男、貴様面白い
魔力をしている。古き友が興味を抱くワケだ。
なに貴様とその武器に聞いたまで。
しかしフム……古き友だけが、こんな面白そうな
玩具で遊ぶのはずるい。
私も一つ興じてみたい。
ここで寝ているのも飽いたしな」
そう言ってフェンリルが一人ごちると、
再び一吠え鳴いて姿を消した。
碧大が呆気にとられていると、どこからともなく
声が聞こえる。
「しばし貴様について行くぞ。人間の男」
まるで問答無用だと言わんばかりであるその声に
反応したかのように、碧大の持つ手甲が氷の魔力に
覆われた。
「古き友に倣い我も幾何か力を貸そう。
奴のようになし崩しでは無いから、こちらで調整
された物だ。じき使いこなせよう。
それと、わが眷族を私の名の下に呼び出すことも
可能だ。付いて行くのも貴様に従うワケでは
ないから、私自身を貴様の意思で喚ぶことは
不可能だがな。
玩具に死なれては、また退屈に悩まさ
れる。オマケというやつだ。」
(……えっ……またこういうベタな展開なの?
戦ってねぇし中学2年生の妄想かよ……ご都合も
ここまで来るのかよ……)
先ほどの緊張感をとうに忘れ、そんなことを思う
碧大だった。
後ろで倒れるソフィを担ぎ家路につこうと
した時、ふとフェンリルの言葉を思い出した。
(調整つってたけど……どんな感じだ?)
そんなことを考えながら、手近にあった大木を
叩くと、それは一瞬のうちに凍結し、そして
砕けた。
「古き友の力は、まだ貴様に使いこなせん。
我も抑えているためその程度だが、人間が
生き延びるには十分だろう。
精々私たちを楽しませるよう励め
人間の男よ。」
再びフェンリルの声が聞こえ、そう告げた。
(その程度ね……これからどうしよ……)
その凄まじい能力に、使いこなせなかった先ほど
とは違う意味で使い道に悩む碧大であった。
この話なんども見直しました。
しかし考えても考えても、浮かんでくる武器は
"ぼくのかんがえたさいきょうのぶき"を超える物は出来なくて、
しかし武器屋から買っただけじゃ主人公の武器としては弱いよなぁと
中学2年生の妄想のような武器になってしまいました。
気づいた方もいらっしゃるかと思いますがこの話から書き方を
変えてみました。
そういった工夫で厨二武器もなんとか大人が考えたそれなりに
らしい装備に昇華されないかなと、
まぁどちらにせよ未熟な文章であることにはかわりませんが……
久しぶりのステータス(見落としあるかも……)
名前:環 碧大
年齢:21
レベル:6
装備:真古龍の手甲(氷狼付き)
スキル:初級魔法lv3、魔力上昇lv1、詠唱短縮lv3、
格闘lv19、魔法付加lv3、俊敏→高速lv19
筋力上昇→剛力lv19
武器の名前思いつかなくて、なんかまんまですね。
どうしよ……これも募集で……




