第1章の3 いざゆかん遊園地《悪魔の帝国》
そして来る週末!
勇輝は駅で彩と待ち合わせし、仲良く遊園地へ向かったのであった。
「へ~、遊園地かぁ。行くの久しぶりかも」
電車で揺られながら彩は楽しそうにそう言って笑った。
笑うたびに揺れるツインテール、私服もさることながら反則なほどの可愛さに勇輝はまともに見られない。
「俺もここ数年いってない」
遊園地にいくぐらいなら借りてきたスパイもののDVDを見ていたい。
勇輝は内向的な不良だった。自分でもオタクの世界に足を踏み入れていると自覚しており、ゲーマーでもある。端的に言えばハマりやすく、数か月ごとに極めているものが違う浮気オタクだった。
遊園地までは駅5つ、他愛のない会話をしているとすぐについた。
駅をでると目の前に観覧車が立ちはだかっている。
そしてその周りを取り囲むかのようなレールの数々。
(あぁ……恐怖の大帝国に見える)
「うわ~。ジェットコースターいっぱい! 楽しそ~」
やや顔色の悪い勇輝とは正反対に彩は飛び上がって喜んでいる。
「じゃ、いきますか」
男勇輝、腹をくくって大帝国の門を潜り抜けた。
さすがに休日とあって、人が多い。
家族づれもさることながらカップルもかなりいる。
二人は自然と手をつなぎ合い、幸せなカップルとして景色に溶け込んでいた。
「あれ乗ろ!」
と彩が指さしたのはゲート付近にあったジェットコースター。
勇輝は彩の指先に視線をやって短くうめいた。
(そりゃ、彩が大人しくて可愛いって感じじゃないのはわかってたけど、しょっぱなからあれ?)
「ほらいくよ!」
勇輝は彩にぐいぐい引っ張られて列の最後尾に並んだ。
なぜかすぐに順番が回り、しかもなぜか一番前だった。
(な、なんで?)
彩の手前引くに引けず、勇輝は無言でレバーを下ろす。
もしこの世に神様がいれば、この時勇輝は全力で呪っていただろう。
「私ジェットコースター大好きなの!」
「へ~」
彩のうきうきさがにじみ出る声とは裏腹に勇輝の生気のない声。
勇輝は死刑を目の前にする囚人の心情を味わっていた。
(やれ! やるなら早くしてくれ! 何? この時間! もう見えてるんだよ! やるならとっとしろ~!)
そして発進の合図のブザー音が鳴り響いた。
(あぁ……悪魔の笑い声だ)
勇輝の体は重力に従って後ろに引き寄せられる。 眼前に広がる青い空も今の勇輝には何の平穏も与えなかった。徐々に重心が前に傾いてきて、レールの先が見えなくなった。
そしてその瞬間、世界が止まるのを勇輝は感じた。
「ぎゃああぁぁぁぁぁ」
「きゃああぁぁぁぁぁ」
まっさかさまに落ちていく中で交差する悲鳴と嬉声。
遠心力に振り回され、地面を見下ろし、また落ちていく。
そして出発点に戻ってきた時には勇輝は精根尽きはてぬけがらとなっていた。
「あ~楽しかった!」
彩は軽やかにジェットコースターを降り勇輝を振り返った。
「これなかなかおもしろかったよね」
「そ、そうだね。なんともスリリングな」
勇輝はぎこちなくレバーを上げ、よぼよぼと地上に上がった。
「今日の目標はねぇ、ここのジェットコースター全制覇するの!」
その言葉に勇輝の脳は固まった。
そして脳の内部から危険信号が送られる。
“施設内 悪魔の乗り物 10 速やかに回避せよ”
そう、ここの売りは日本一のジェットコースターの数だ。
だが脳の色ぼけしたところからも司令が出される。
“彩 喜ばせよ”
しかしもっと奥底からも司令が出る。
“彩 不機嫌 = 死 回避せよ”
「いい考えだね。いい記念になるよ」
勇輝はジェットコースターよりも彩のほうが怖かった。
そして勇輝は見事にすべてのジェトコースターとお付き合いをした。
やさしく手を引いてくれるものもあれば途中から手のひらを返されるものもあった。
最初からやられっぱなしのものもあった。
(うわ~俺生きてる。すげ~~)
彩のジェットコースター全制覇記念は勇輝の“オレ、生きてます記念”にもなったのだ。
最近遊園地行ってない…
そこらへんも含めて感想お願いします。




