第1章の30 お帰りはこちらになります
「まじっすか?」
驚きのあまり語尾が体育会系になっている。
勇輝は言われたとおり廊下を歩いた。走ってみたい誘惑に駆られながらも歩いていた。
そして、床がパカッと開いた……。
これは奈落へまっさかさまかと思ったが、足はすぐに地面につき、今勇輝は屋上にいる。
もう見慣れた学校の屋上だ。
魔術なのだろうとは察しがつくが、予告なしでやられると心臓に悪い。
(よし、ひとまず帰ろう)
そう思い、教室へと歩きだしたとたん背後から名前を呼ばれた。
「カスガユウキ」
機械のような声だ。
「へ?」
勇輝が振り向いた瞬間、光で目をやられた。
「まぶし!」
そして目が慣れた時には、屋上に誰の姿も見つけることは出来なかった。
「あれ?」
(今の、なんだったんだ?)
首を傾げる勇輝の頭上を蝙蝠が一匹飛んで行った。
通常の二倍はあろうかと思える大蝙蝠だ。
それは重そうに羽を動かし、どこかへと消えたのだった。
(ま、いいや帰ろ)
大きなデンジャラス体験の後では小さな謎などどうでもよくなってくるのだった。
翌日、いつもどおり勇輝は携帯のアラームによって起こされた。
蒲団から手だけを伸ばしてアラームを切る。
気候はますます冷えてきて、蒲団からでるのが億劫で仕方がない。
再びアラームが鳴る。
(スヌーズ機能は便利だけどうざい!)
勇輝がガバッと起き上がると携帯を開いてスヌーズ機能を止める。
その時、ちらりとストラップが目に入った。彩との最後の思い出だ。
(彩……弥生……)
勇輝は携帯を持つ手に力を入れた。
(何が何でも訊かないといけない……弥生は、彩のことを何か知っている)
勇輝は朝食を食べ、学校へと向かった。
零華 「最近私たちの出番がありませんね」
錬魔 「楽でいい」
零華 「さぼらないでくださいね?」