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第1章の25 俺はヒーロだ!

PVアクセス3000突破です。ありがとうございます!


よろしければこれからも読んでいってください。

 爆音が聞こえると昂乱はさっと立ちあがり、手袋をはめ直す。


「来たか……」


「え、まじで?」


(来るのに爆音っておかしくね?)


「昂乱様、敵襲です。敵は死堅牢《しけんろう》。私たちで防いでみせます」


 どこからか声が聞こえる。勇輝が頭を巡らすと壁にスピーカーを見つけた。

 科学の力があることに安堵する。

 ほっとした瞬間、窓の外で何かが光った気がした。それが何か確かめる間もなく、窓ガラスは無残に飛び散る。


(え~~~!)



 勇輝は声にならない叫びをあげた。

 先程の声から、助けは下から上がってくるものだと思い込んでいた。

 しかしまさかの窓からのご登場。


(いやちょっと待て、ここビルの最上階じゃなかったっけ?)


 侵入者は勇輝の前にふわりと着地した。銀の髪が揺れる。


「や、弥生?」


 弥生はその声に振り返り、勇輝の無事を確認する。


「無事そうでよかった」


 安堵の表情を見せると、その右手に握られていた剣で勇輝の縄を解いた。


「あ、ありがとう。って弥生こそ傷は大丈夫なのかよ」


「もう塞がったよ」


 弥生は剣を構え直すと、昂乱と向き合う。

 勇輝は壁際まで退いて、成り行きを見守ることにした。


「一人でここに来たか」


 昂乱は再び杖をその手に持ち、弥生と対峙していた。


「みんなは下で大掃除中よ。貴方は、私の獲物だから」


「一人で、わしに勝てると?」


「当たり前じゃない」


 弥生が空《くう》を斬り上げた。そして次の瞬間、天井が吹き飛び、日の光が注ぎこんだ。


(剣、ただの剣なのに天井が吹っ飛んだ!)


「本当は、勇輝にだけはばれたくなかったんだけど……」


 そう呟いて弥生は後の勇輝に目をやった。人間は未知の物を見ると、怯えて、拒絶をみせる。


「……か、かっけ~」


 弥生は少し目を見開いた。

 その目には瞳を輝かせている勇輝が映っている。


(脅えないの?)


「……勇輝、下がってて、危ないから」


 弥生は勇輝を下がらせると再び昂乱と向かい合った。昂乱は鞘を抜き去ると、にやりと笑った。


「本気というわけか。だが貴様の如き鈍足ではわしにはついてこられぬ」


 弥生は空を見上げた。

 天井の穴からは昼間の白い月がのぞいている。


「今夜は三日月ね」


「それがどうした?」


「足に自信があるのは貴方だけじゃないってことよ」


 昂乱がその場から掻き消えるようにいなくなると、弥生も消えた。


「え?」


 勇輝の目には二人は同時に消えたように見えた。

 呆然としていると向かい側の壁が崩壊した。


「はぁぁぁぁ?」


 そうこうしている内に横側の壁も崩壊して見通しが良くなる。


 そしてその間には絶え間なく剣戟《けんげき》の音が届いた。

 二人ともどこにいるのかは分からない。

 勇輝の目には剣戟は光となって、ただそれだけが認識される。


「め、めちゃくちゃだ」


 本能が身の危険を告げるが足が床に吸いついて動けない。



(朝は普通の朝だったよな。こんなアンビリーバボーな体験をするなんて朝の占いも言ってなかったし……。よし、切り替えていこう)


 そう決心すると勇輝は眼を瞑った。


(ここは俺がいた世界じゃない。俺は異空間に飛ばされ、捕まった。ここは超能力と剣の世界。ベタな、わくわくの冒険が詰まった世界。俺はこの世界の主人公《ヒーロー》なんだ!)



 自己暗示発動。



 勇輝が目を開けると、心なしか世界に希望が見えた気がした。


 ここは俺の憧れたファンタジーの世界。

 とその瞬間、目の前で火花が散った。


 銀色が目の端を掠め、弥生がそこにいたことが分かる。


 剣と、超能力の……命のやりとり……が目の前で繰り広げられている。


「スット~プ! 戦い止め~! 平和! 日本人の大好きな平和をこの手に!」


 いくらこの世界が剣と超能力で出来てたって戦いが起こっていいはずがない。

 昂乱が勇輝の視界に現れた。服が所々裂け、血が滲み出ている。

 昂乱が刀を斬り上げると弥生がそれを受けた。


「動きが見違えるほどじゃないか」


 弥生は昂乱の刀を押し返して距離を取る。


「さすがに壊れたものを元に直す力は無くってね、あそこで本気だしたら学校壊れるから」


 低く笑う昂乱は息が上がっている。

 対する弥生は、息は整ってはいるが少し疲労の色が見えた。


「おい弥生!」


「氷結花」


 弥生は放たれた氷の刃を交わし、左手を昂乱へと伸ばした。

 その手から光が放たれ、昂乱を狙い撃ちする。昂乱が交わした後に大きな穴が開いてゆく。

 少しでも触れればあの世行きだ。


「止めろってば!」


「月影《つきかげ》!」


 弥生の手から縄状の光が昂乱へと向かい、その左腕を捉えた。

 昂乱は刀で斬り捨てようとするが、まるで歯がたたない。


「ちっ、小賢しいまねを」


「逃がしはしない」


 弥生は左手にその光をしっかり握り込むと上段に構え、斬りかかった。キィンと高い金属音がし、火花が散る。

 まっすぐ振り下ろした先にあったのは、昂乱の体でも、刀でもなかった。刀の鞘だ。


「止めろって、言ってんだろーが!」


 勇輝は痺れる手を我慢しながら弥生と向き合う。


「勇輝! 邪魔をしないで!」


「この人が何したんだよ!」


「裏切り者は始末しなければいけない!」


 弥生が剣を握る手に力を込める。


「生け捕ればいいだろ! 殺す必要なんてない!」


 勇輝も負けじと押し返した。


「勇輝には関係ないでしょ!」


 勇輝の視界に弥生が足を上げるのが映った。

 そして気づいた時にはすでに遅く、回し蹴りが勇輝の脇腹に直撃した。そのまま勇輝は横へと飛ばされる。

 弥生は昂乱へと攻撃を仕掛けるが、すでに昂乱は斬りかかっていた。 それをぎりぎりのところでかわすが、一瞬縛りの光が緩んだ。その一瞬を昂乱は逃さずに光をふりほどく。


「叢薇砂城《そうびさじょう》」


 昂乱の足もとから蔓が出現し、弥生へと向かった。 弥生は飛び上がって回避したが、蔓は止まらない。

 昂乱の思惑に気づいた弥生は血相を変えて後を振り向いた。

 癒慰《ゆい》のあの術の本来の姿は敵を捉えるのではなく蔓の棘に含まれる毒で敵を殺すことなのだ。


(危ない!)



「逃げて! はるゆき!」


区切るのが難しい

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