第1章の18 嵐の前の静けさ
やっと折り返し地点到達です。
読者の皆様に感謝しつつ、がんばってコメディーに……
時は刻々と過ぎ、勇輝は転校生との距離をだいぶ縮めていた。秀斗と癒慰を連れて街を歩き回ったこともある。街ゆく人々は漏れなく振り返り、その上喧嘩を売られた。
もちろん大勝利を収めたが……。
そして、理事長が学校へやってくる日が訪れた。
「やっとか」
朝の屋上で、錬魔がフェンス越しに下に視線を投げかけていた。
「待たせやがって」
秀斗はフェンスの上に腰を下ろして校門を見ていた。すでに生徒がちらほらと校門をくぐっている。
そこを獲物が通った時から戦いが始まる。
「障壁は万全?」
「当たりめぇだろ。誰の目にも入らねぇよ」
弥生の問いに秀斗は胸を張って答える。
「じゃあ、手順道理に、奴を殺すよ」
朝日を受けて輝く銀糸の髪は不敵に笑う弥生をさらに美しく見せた。
「弥生……やっぱりお前」
「あ、勇輝君が来るわ」
秀斗の言葉を遮って癒慰が扉に注意を向けた。
かすかだが足音が聞こえる。
「隠れるよ」
弥生の掛け声と共に、彼らはその場から忽然と姿を消した。
「おはよ~って、誰もいないし」
テントの中に入った勇輝は無人の空間を前に思わず呟いた。
「……みんなそろって遅刻?」
勇輝が来たのは遅刻ギリギリ、今まで全員が遅刻するということはなかった。
(……仕方ない、久しぶりに教室にいくか)
屋上に一人ぼっちというのはなかなか寂しいものがある。
勇輝はつまらなさそうにとぼとぼ階段を下りて行った。
「……なんか可哀想よね」
「だが勇輝ともこの任務が終われば関係も無くなる。慣れ合う必要はない」
「残念だよな~」
勇輝が去ると、彼らはどこからともなく現れた。
「もう少し、高校生について教えて頂きたかったですね」
「そうね……もう少し……」
弥生の言葉はチャイムでかき消え、ただ寂しげな響きだけがその場に残った。
「さ、族狩りを始めよう」
弥生の声で彼らは互いに頷き合い四方に散った。後はただ、獲物がかかるのを待つのみ……。
勇輝 「これ、俺当分でない感じですか?」
作者 「ひ、み、つ」