第1章の19 不敵な笑み
自分でも予想外の割りこまれた感。
何勝手に動いてくれてるんですか?
そしてタイトル、もう少しいいのが決まったら書き換えます。
町中のビル群の一角、最上階の部屋では龍牙が渋い顔で椅子に深く身を埋めていた。
そして、重厚感溢れる机には一人の男が腰をかけている。その男は優男風でにこやかに龍牙に話しかけていた。
「ひどいじゃないですか隊長。こんなおもしろいことを僕に隠しておくなんて」
その男は胸ポケットから写真を取り出すと龍牙に突き出した。そこには制服姿の五人の男女が写っている。
「まさか弥生が帰ってきたなんてね。しかも死堅牢全員が高校生……爆笑物じゃないですか」
「美月……仕事はどうした」
低い声で龍牙が呻く。
「終わらせましたよ。馬鹿なヤクザ連中は、向こう三カ月は病院から出られません」
美月は写真をひらひらと遊ばせてから胸ポケットにしまった。
「それは御苦労だったね……」
労いつつ、龍牙は心の中で溜息をついた。
極力弥生のことは他の隊員の耳には入れたくなかった。弥生自身に疑いが残る上、知れば必ずちょっかいを出しに行く者が現れるからだ。
そう、まさしく目の前の人物。
「彼らにも、だいぶ会ってないですね。みんな大きくなったかな? あ、でもあの年で高校生はないですよね~」
美月は写真に目を落としながら笑いをかみ殺していた。
「君よりはだいぶましだから安心しなさい」
龍牙は皮肉めいた口ぶりでそう返すと葉巻に手を伸ばし、火をつけた。
「僕だってまだ高校生に見えますよ。それにしても、こいつらが動いたってことは昂乱ですか?」
「あぁ、君が唯一失敗した任務だよ」
「……あれは油断したんです。それにあの能力は反則ですよ!」
龍牙はふーと煙を吐き出し、煙の行く先を見つめた。
煙の先に、昔部下だった男を思い出す。
龍牙が直々に彼のその能力を見込み隊に入れ、彼に様々な力を与えて強くした男だった。
彼は小隊を率いて戦乱を戦い、数々の武勲を上げ、隊の二番手にまで上り詰めた。
そして、裏切った。
裏切りの夜、隊舎には血の匂いが充満し、殺された隊員は五十名を超えた。
彼は、志を共にする能力者を率いて隊を抜けた。彼と共に隊を抜けた族は九名、いずれもすぐに粛清されたが彼だけは生き残った。
幾人もの隊員を退け、その能力を奪い取ってさらに強くなった。
「彼は強くなり続ける。これ以上強大な力をつければ世界を滅ぼしかねない」
「けど、あいつらで勝てるんですか? 昂乱は僕ら二人の能力も持ってるんですよ?」
龍牙は面白そうに美月の横顔を見た。その視線に気がついた美月は不満そうに見返す。
「君が彼らの心配をするとはどういう風の吹きまわしだい?」
「ふん、僕はあいつらの心配をしたんじゃない。貴重な実験体の心配をしたんだ。昂乱は数少ない能力者の一人ですからね」
「君はまだそんな研究をしてるのかい」
美月は人間と能力との関係について調べるのを趣味としていた。
今までも、生け捕りにされた族は全て美月の手元へと運ばれている。彼らの生死がどうなったかは龍牙も知らなかった。
「僕だけじゃありません。研究員たちが熱心にやってくれてるんですよ」
「だが彼らは獲物を確実に殺す。君の所にくることには彼はもう死体だろう」
龍牙は長い煙を吐き出すと、葉巻を灰皿に押し付けた。
「そんなことはさせませんよ。いざとなればこの僕が出向いてでも」
「美月、君は今日一日事務をしなさい」
勢いづく美月の言葉を遮って、龍牙は引出しから書類の束を引き抜くと美月に押し付けた。
今日は彼らが動く日、美月に邪魔させるわけにはいかない
「え~ひどいですよ隊長!」
「文句を言わずに働きなさい」
ぴしゃりと龍牙が言い放つと美月はその書類を受け取り、しぶしぶ机から降りた。
そのまま部屋のすみに備え付けられた小さな机に陣取り不満と書かれた顔で書類に目を通していく。
「それが出来たらちゃんと褒美をあげるから」
龍牙も残りの書類を机の上に広げ、判を押していく。
「昂乱がいいです」
「鮮度が保たれてたらね」
ふと龍牙は手を止めて窓の外に目を向けた。
日はだいぶ高くなり、時折強く吹く風はこれから来る嵐を呼んでいるようだ。その風に紛れて覇動が伝わる。
(……始まったかな)
龍牙は視線を戻し、再び書類に朱の印をつけていった……。
作者 「美月さん、あなたはもっと後での出演予定でしたよね」
美月 「ふっ、この僕がお前ごときの予定にしたがうわけないだろう」
作者 「出番減らしてやろ」
美月 「無駄さ。さて、読者の諸君の中には気づいたものもいるかもしれないが“しけんろう”という名称は二つある。一つは階級としての“四剣琅”、もう一つは通り名としての死堅牢だ」
作者 「このことについては本文中でいつか説明が入ります。だぶん」
美月 「もしもの時はこの僕が直々に教えてやろう。では、次の僕の登場をお楽しみに」




