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閑話3-1

本日閑話二話のうち一話目。

閑話3-1



 ボクのせいで……。



 うちの者が誘拐だなんて……。

ボクだけならまだしもアキラも巻き込んでしまった。

またゼロに乗って空を楽しみたかった。

だが、こんな状態で乗りたかった訳じゃない。

首元を触る。

何かの金属、その内側に革が張ってある……隷属の首輪。

登録してある魔力の持ち主三人、そのうちの誰かが定期的に魔力を注がないと燃え上るという代物。

精神を縛られる訳ではないので、いざとなれば自害は出来る。

一矢報いる事だって……。

既に晶へ迷惑をかけてしまった。

これ以上の迷惑はかけられない。




 ゼロに乗って来た先は、中央大陸。

いつか行ってみたいと思っていたけれど、こんな形になるとは思ってもみなかった。

誘拐……。

お父さんとお母さんは心配しているはず、ボクは無事だと大声で叫びたい。

こんな状況、しかし晶とメイドのポーラがいるのは心強い。

おかげでボクは不安に押しつぶされていない。

泣きわめいて走り出したくなる。

震える足を抑え、前を向く。


 ワイバーンのゼロとぴよこちゃんは既にいない。

晶がわざと遠ざけていた。

あの子達を利用されたくないんだと思う。

下手をすれば殺される可能性だってある。

晶は配下にも優しい。

無茶な事、傷つくような事をさせたりはしない。

一緒にいると気持ちがやわらぐ。

何でだろう?

お父さんに似ている?まったく似ていない。

お母さんに似ている?かなり遠い。

こんな時なのに変な事を考えてしまう。



 中央大陸へ降り立ったボク達を迎えに来たのは、不気味な人だった。

恰好は騎士なのだが、顔を仮面で隠している。

その仮面が血の涙を流しているようで怖い。

うちで騒動を起こし、誘拐をしたうちの給仕であったキノ、ケインが仮面の男をトールと呼んでいた。

キノとケインより立場が上、いや、かなり上だと思われるトール。

キノは娘さんを抑えられて無理やり働かせられたようであった。

誰だって身内が一番大事という事だろう。

キノはボクと目を合わさない。

後ろめたさを感じているんだと思う。

ケインはより良い仕事先のためといった所だろう。

これに関してはボク達が満足させられなかったというだけの事。

軽蔑するが罵声を浴びせる価値もない男だと判った。


 仮面の男、トールの指揮で、また移動する事になった。

こんどは空の旅ではなく馬車での移動だ。

でもボク達の扱いは悪くなかった。

いや、アキラについては適当だった。

メイドのポーラがボクの隣にいてくれる。

トールがそれを許してくれたからだ。


 意外だが紳士的なトール。

偉い者が怖くないのは、ありがたい。




 街に入った。

小さく聞こえて来た話声で解った。

門番からの扱いも良い。

馬車の中を調べる事もなく素通り。

どうやら仮面の男、トールは権力者、または権力者の側にいるらしい。

窓は塞がれているので外は見えない。

開いていたとしても深夜なので様子を伺う事は出来ないだろう。

馬車の揺れが少ない。

道の整備された都市だと解る。

お父さんが領主をしているアミでも、もう少し揺れた。

だから解る。



 馬車を降りて知らない屋敷に入る。

ボクは手足の自由を奪われてはいない。

メイドのポーラもだ。

ただ、アキラとは別れてしまった……急に心が重くなる。

ポーラがいてもダメ……ボクの中でアキラという存在がいかに大きくなっていたかが解った。


 案内された部屋は良い部屋だった。

居間、寝室、従者の控室。

客室であろうが、豪勢な調度品の数々。

ボクの待遇は悪くなかった。

ポーラもホッとしている。

当然、ボクもだ。

なにせボクの首には隷属の首輪が付いている。

そういう扱いをされても、何らおかしくなかったはず。

これからどうなるのか……。

アキラはどうしているだろうか……。

涙が溢れそうになる。







「まぁ、(めかけ)の一人として使ってやろう。ありがたく思え」



 尊大な態度で、そう言い放って去っていった男。

男は若かった。

少なくともボクよりは上だろう。

ボクは言葉の意味をしばらく理解出来なかった。

だからであろう、態度が変わる事もなく見送った。


 後から判った事だが、コス家の馬鹿息子だったらしい。

似たような馬鹿をあちこちでやらかしていたらしい。

有名人だとか。

それがまかり通るのだからコス家の権勢は凄いという事に他ならない。

タマギ王国にも変な貴族はいるが、ここまでのモノはいなかった。

他人事ながら、この国は大丈夫なのか心配になる。


 ええ、一番心配なのはボク自身。

解っているのですが、何も出来ないボクがいた。

無力。

それを痛感している。

ボクは人より魔力が多い。

魔法使いの中でも多い方だろう。

隷属の首輪を無視して暴れられなくはない。

死を覚悟すれば出来る。

しかし踏み出せてはいなかった……。







 ここへ軟禁されて既に数日が経った。

訪問者は誰もいなかった。

馬鹿息子が来なかったのは幸いと言うべき。


 メイドのポーラに寝かしつけられた。

起きていると碌な事を考えていないせいだろう、ボクの表情が暗く悲しげだとポーラは言う。

だから眠りましょうと。


 ボクは弱いな……。





「アキラだ、フローラおはよう。夜だけどなー」



 よく解らないけど、誰かに起こされた。

起こした人ではないが声をかける人も。

のほほんとした声。

ここに来ていつも思い浮かんでいた顔が、そこにはあった。

意図せずジワリと涙が出た。


 嬉しい!

ずっと待っていた声だ!

雲のかかっていた心が晴天に変わった。

何に悩んでいたかすら忘れるほどだよ!


 でも……その女性はどなたでしょう?

スラッとして大人な女性。

今までとは違う胸騒ぎ。

解るのは昨日までとは違う日を迎えられるという事!!




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