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「くっそー!俺も乗りてーぞ!!」
「フローラ様達を送った後で、迎えに来てくれるって言ってたじゃないですか」
「早く乗りてーんだ!いいなぁ」
「その間に仕事も頼まれましたし、暇にはなりませんよ」
「わーったよ」
「グリフォンとレイ、シン、話に聞いた人達を探さないとです」
「おー」
「南大陸へ行けるなんて思ってもいなかったぜ!」
「俺もだ兄者!」
「冒険が待ってるぜぇ!!」
「おう!」
「アキラ、早く戻って来てくれよぅ」
「頼むぜ!」
騒ぎ立てる脳筋ズを置いて中央大陸を飛び立った晶達。
ゼロの背中には晶とフローラ、エル、ビキニアーマーズ……いや、もうビキニアーマーは着ていない。
晶、無念。
ゼロの輸送力では一気に全員を連れての飛行は出来ない。
フローラは誘拐されて中央大陸へ連れられてきた身、心配している者達がいるので早く戻してやらねばならない。
エルはともかくジーナとイーマは奴隷、晶から引き離してコナモに置いて行く訳には行かない。
そういう訳で第一陣として女性陣をタマギ島、南大陸へ連れていく事になったのだ。
第二陣……脳筋ズである。
彼らは晶と離れて冒険者を再開するかと思われたが、コス家、それから大亀の戦いがよっぽど面白かったらしい。
晶に付いて行くといって聞かなかった。
結局、晶が折れて南大陸へ連れていくという約束をした。
フローラ達を送ってコナモに戻ってくるまでの間に、晶は脳筋ズへ仕事を頼んだ。
以前に会ったシンとレイの居所を探してもらうという仕事である。
彼らはコナモを拠点に飛びまわっていると言っていた。
せっかくコナモに縁が出来たので居場所を確認、仲良くしたいと考えていた晶であった。
「ふぁーっ!!凄いッス!飛んでるッス!!」
「キラキラ光ってるの」
「イーマ、見るッス!大きい魚が跳ねたッス!」
「ジーナこそ見るの!水がグルグルしてるの!!」
「ふふっ、何だか懐かしい会話」
「フローラもこんなだった?」
「うん!似たような感じ」
「そうなのだな」
ゼロの上から海、遠くに見える陸を見回してはしゃぐジーナとイーマ。
ゼロから落ちそうなほど身を乗り出したり、指差したり忙しい。
年齢は二十歳だそうだが、子供のようなはしゃぎっぷり。
晶、フローラ、エルが優しげな目で彼女達を見ている。
西の大陸から連れて来られた彼女達だ、まだ首輪が付いているが待遇が変わったと実感するのは悪くないと思っていそう。
フローラが彼女達の会話を聞いて笑う。
エル、フローラと大分打ち解けている。
可愛い中性系のフローラ、ビシッとクールな美女系のエル、違いはあるが仲の良い姉妹のような会話。
(ハンナからもらった報酬を早く試したいですねー!)
(うむ。あれはよさそうじゃ)
(ソリッドブーツは足の裏に物理結界を張れるといいますし、スライムから作ったというコーティング剤も面白そうですー)
(金もコナモで家が買えるほどもらったしのぅ)
(各種ポーションの詰め合わせも晶意外の人には、ありがたいはずー)
(小手とブーツはマジックアイテムになって嬉しいよ。鉄の鎖帷子も気にならなくなって来たしさ)
(最初は違和感バリバリって言ってましたもんねー)
(まぁ、そんなもんじゃろ)
(コーティング剤は黒鎧の内側に塗るでいいんだっけ?)
(うむ!)
(それで鎧の内側にスライムを入れると、あら不思議ー、外から感じる魔力が人に近くなりますー)
(ワシも常時あの姿でいられるというものじゃな!)
(暴れたいんですねー、解ります)
(解るな)
(ひひひっ)
操縦に集中しているように見える晶、実際はゼロ任せで脳内会議をしていたり。
コナモを出る前にデーガに付いていた隷属の首輪を外した報酬をしっかり貰っていた。
金品以外にも魔法がかかった防具も貰っていた。
特殊な薬剤に回復、解毒のポーション類もだ。
金はコナモに残っている脳筋ズにかなり渡した。
大亀の右足、その代金代わりだ。
肉を食べる以外にも使えるらしいが、今の所考えてはいなそう。
脳筋ズ、豪遊出来るはず。
晶が迎えに行くまでに使い切る事は難しい金額。
しかしノック辺りが無茶な使い方をしそうで怖い。
シーベル頑張れ。
「ぴー」
(パタパタしてますー)
(ぴよこ、空が好きなんじゃなぁ)
(うん。かなり好きそう)
晶の前、騎乗道具の上で小さな羽をパタパタさせているぴよこ。
嬉しそうだ。
タケマツがいうように、空が好きなぴよこであった。
晶は一緒だし、ゼロもいるしで、相当嬉しいのだろう。
何となく伝わって来る。
それにしてもぴよこの謎移動、謎立ち……不思議である。
高速移動しているゼロ。
騎乗道具にちょっとした風防を追加し、ゼロが魔法で風を抑えても、まだ風の影響はある。
そんな中で平然と立っているぴよこ。
黄色い毛玉、尻に蛇を持ち、頭に王冠のような毛。
おそらくコカトリスなのだろうが、謎いっぱい。
ぴよこの卵を見つけた森を再訪するのも面白そう。
いや、そのまえに湖の巨大スライムとの再戦か?
準備を整えれば晶も負けないだろう。
まぁ、魔法、特に火の魔法が使えれば結構簡単に倒せるらしいけども……。
それを魔法使いのビクトリアに聞いた時に晶が愕然としていたのを思い出す。
物理攻撃オンリーの晶にとって、魔法が有効な相手は鬼門であった。
騒ぎっぱなしのジーナとイーマ、興奮は収まらない模様。
見る物、感じる物、全てが新鮮、そんな感じだ。
開放感も手伝っての事だろう。
女性陣に囲まれて華やかな空の旅であった。
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(それではこの辺りで待機しています。マスター)
(うん。南大陸の町ドンなら、ゼロも一緒に入れるんだがなぁ、今回は待っていてくれ)
(ご飯でも食べていてくださいー)
(うむ)
(承知)
空の上でフローラ達が寝ている間にもゼロは休まずに飛んだ。
晶は寝たり、寝なかったりであった。
ゼロに付き合って話をしたりもしていた。
車の助手席に座る者としてのマナーかも知れない。
律儀な事だ。
そんな晶一行がタマギ島に降り立つ。
通り過ぎたがタマギ国王がいる首都アキも遠目に見た。
今はタマギ王国、副都市のアミ近郊の海岸である。
フローラを心配しているであろう父親のエドワードを早く安心させてやりたいと晶が急いだ結果である。
親になった事どころか女性とまともに付き合った事もない晶だが、想像は出来る模様。
最近では女性と話す事に問題はない。
成長している。
周りに女性が増えてスパルタ教育になったのだろうか?良い傾向だと思われる。
アミの人達を驚かせないようにゼロを置いて行く晶一行。
フローラは嬉しそうな顔をしているが、時折悲しげな顔もしていたり。
どうも領主の娘という立場ではなく、一般人?として晶達と一緒に行動出来ていた事がよっぽど楽しかったらしい。
だが領主の一人娘であるフローラ。
アミに戻ったら、相応の生活に戻らねばならない。
複雑な心境だと思われる。
晶は気が付いていないが、エルはフローラに気を遣って話している。
態度には示さず、普通の会話。
このヴァンパイアロードも変化を見せている。
唯我独尊、そこまではいっていなかったが、偉そうであったエル。
人、年下、エルにとってどれほどの価値だったのだろう。
しかし晶の配下としてフローラの守りを命じられたエル。
フローラの人柄も相まって距離が縮んでいた。
少なくともフローラとエルは仲良く見える。
他の人相手だと、まだ微妙そうであったが……。
「フ、フローラ様!!」
「フローラ様!」
「ご無事でっ!」
「エドワード様へ伝令!!!」
「俺が行く」
「急げよ!」
「わかってる」
アミの出入り口へ近づくと、門番達が騒いだ。
誰が来たのか直ぐに判ったのだろう。
人の顔を覚えるのも彼らの仕事だ。
ましてや、この都市の領主の一人娘。
誘拐されていたのだ、騒ぐのも当然。
晶達に会釈する門番もいたが、晶達はほとんど無視であった。
これも仕方あるまい。
苦笑する晶。
フローラはしきりに晶達の方を見ていたが、門の奥へ連れられて行った。
特に調べられたりしないで門を通った晶達も、その後を追う。
「馬車……」
「あっ、行っちゃったッス」
「置いてけぼりなの」
フローラを囲む門番達。
直ぐに来た馬車へ乗り込んだフローラ。
晶達、またも置いてけぼり。
門番達は動揺している模様。
嬉しいのは解るが、フローラの言葉を聞かずに行動するのは如何なものかと。
乾いた笑いを漏らす晶であった。
アミの大通りを歩く晶、エル、ジーナ、イーマの四人。
晶以外の三人は物珍しげに通り沿いにある店や人を眺めていた。
エルはコス家の地下で幽閉。
ジーナ、イーマはフォックスの奴隷。
コナモでもはしゃいでいたが、ここでも自由を楽しんでいる。
それが解るのか、晶は何も言わない。
胸元に抱いたぴよこを突くので忙しいという説もあったり。
何にせよ、置いてけぼりを怒ったりはしていない。
フローラが早く父親に会える分には構わないのだろう。
▼
「どもっ!」
「ア、アキラ様!!」
「申し訳ありませんでした!!」
「馬車は間に合いませんでしたか……」
晶が領主の館へ着くと、衛兵達が慌てる。
その中にはさきほど門で会った門番の顔も。
どうやら、自分達の落ち度に気が付いていたらしい。
そしてフォローは間に合わなかった模様。
晶がニコニコしているので、ほどなく落ち着く門番達。
「アキラ!すまない、そしてありがとう!!」
「本当だよ」
館の中からエドワードが走って出て来た。
そして体面も気にせず晶に向かって頭を下げている。
周りにいる衛兵達はこっそり視線を逸らしていたり。
誘拐された一人娘が無事に帰って来たのだ、人の親としては間違っていない。
それが衛兵達にも解るのだろう、見てみないふりをしているのだ。
エドワードが晶の手を両手でガッシと握り上下に振る。
エドワードの隣にいるフローラはそれを見て苦笑していた。
いくら感謝してもしたりない、そんな感じであった。
晶は照れている。
ここまで解りやすく気持ちを伝えられた事などなかったのだろう。
それを無下にも出来ず、照れるばかり。
フローラがいい加減にしなさい!と止めるまで続いた。
周囲の衛兵、執事、メイドさん達は笑っていた。
「久しぶりに笑いが戻って来たな……」
笑うみなを見回してエドワードが呟く。
フローラが誘拐された後、ずっと館は沈んでいたのだろう。
容易に想像できる。
フローラの愛され具合もだ。
そう言えばフローラの隣に美人さんがいる。
フローラに似ている。
違うのは髪の長さくらいであろうか。
「フローラの母です。この度は本当にありがとうございました」
「えっと……はい」
「ボクのお母さんでケイトだよ」
「アキラです。よろしくお願いします」
「こちらこそ。フローラの無事な姿を見る事が出来たのはアキラ様のおかげです」
フローラの姉とも見える女性は、フローラの母親であった。
晶、ケイト、お互いにペコペコ頭を下げ合っている。
どこか日本を思い出させる光景。
ケイトからの感謝の言葉を聞き、またも照れる晶。
エドワードではなく美しい女性からの褒め言葉、破壊力が違う。
これまたフローラが中で落ち着いて話そうというまで続いた。
フローラ、しっかり者である。
今夜は泊って行ってくれとの事で部屋にずた袋を放り込み、食堂へ。
館をあげての宴会だという。
祝いは街の酒場でもされているだろう。
あれだけ嬉しそうな衛兵や門番達だったのだ。
もっともフローラの誘拐については内密にしているらしいので、こっそりのはず。
年頃の令嬢が無事とはいえ誘拐されたのだ、変な噂になっても困るのだろう。
「良い光景だな……」
(ですね……)
(まったくじゃな)
「ええ」
「人族にもいい所はあるッス」
「ジーナ」
「睨まないで欲しいッス」
「祝いの場では言わないの」
「はいッス……」
フローラを囲んでの宴会。
左右にはご両親。
エドワードの目じりには涙が光っていた。
ケイトもフローラの手を握ったままだ。
愛されている。
そんな光景をテーブルを挟んで見ている晶一行。
ちゃんとエル、ジーナ、イーマの席もあった。
ジーナが空気も読まずにボソリと漏らした言葉。
イーマに叱られている。
どうやらイーマの方が強いらしい関係。
(お主らの気持ちも解るが……ない物はないのじゃ。ここは深く考えずに喜んでやれ)
(タケさん……)
(はい……)
晶達に念話を飛ばすタケマツ。
タケマツは晶とカヅキの様子をちゃんと見ていた。
フローラ達、家族を見て、晶達が自分の立場と比べたという事に。
いきなり異世界に放り込まれた晶、カヅキ、タケマツ。
タケマツは大人だし、既にこちらでの生活も長かった。
心の整理は出来ていた。
だが、晶とカヅキは違う。
まだまだ若いし、こちらの生活にも慣れていない。
常識も足りない。
そして日本に帰る術は見つかっていない。
家族との団欒、それがタケマツの言うない物であろう。
タケマツが諭すと晶とカヅキが念話を返す。
その後は晶とカヅキも元気になった。
晶は食べ物、飲み物を楽しんだし、カヅキは今後の予定やお宝の話で盛り上がった。
いささか無理をしているように見えたが、時間が解決するに違いない。
ここで築ける関係というものもある。
守るべき者を守り、届ける場所へ届けた。
色々な想いはあったが達成感に包まれる晶達であった。
宴会は夜更けまで続いた。




