1-9
あれれー毎日更新になってるー。
続く間は続けます。
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「近いうちにココを出ようかと思う訳よ」
(そうなのですね)
「おう。ココでならもう危険もなく過ごせるとは思うんだけどさぁ」
(襲ってきそうな奴は排除しましたね)
晶とゼロは洞窟前で火を囲んで話をしている。
どうやら今後の予定に付いての話らしい。
晶が言うココとはワイバーンが住処にしていた岩山の事である。
岩山の天辺、三百mほどの高さだろう、そこから周囲を見渡すと一面緑の絨毯であった。
木、林、森、とにかく木が溢れていた。
遠くに山々は見えたものの炊事の煙が見えた事はない。
どうやら人外魔境で合っていたらしい。
晶は手頃な枝に肉を指して火で焼いている。
囲炉裏端の様だ。
火はどうしたのであろうか?
ついに魔法が!?
残念、力まかせに木をこすり合わせた結果です。
ゼロは血の滴る肉を引きちぎっては咀嚼している。
焼いた肉のお裾分けも少し貰うとの事。
ゼロは物騒な返事をして口の周りを赤くしていた。
何の肉だろう?
排除した奴の肉らしい……残された毛皮から察するに熊っぽい。
少なくとも顔は熊に見える。
ゼロほどの大きさはなかった様だが一tはありそうな相手だったと思われる。
熊も相手が悪かった。
殴りネクロマンサーと空飛ぶ鎧蜥蜴が相手では何ともならなかったろう。
実際、晶が引き付けゼロが頭上から奇襲したので一瞬の戦いだった。
連携の練習。
そんな気分だったらしい。
もちろん晶の提案であった。
まぁ、晶に殴られて爆散するよりはマシであろう。
当の熊がどう思うかは知らないが。
もういないけれども。
「服が一着しかなくても何とかなっている。だけど刃物とか道具類が一切ないってのは辛い」
(難題は力まかせで乗り越えていましたね)
「もっと文化的な生活がしたい訳よ」
(何となく解ります)
「お、女の子とも出会えるだろうしさ」
(未確認で居るのか判りませんけどね)
「いる!いるって」
(それマスターの願望ですよね?)
「俺には解る!素晴らしい未来が待っている事を!!」
(力強い発言ありがとうございます)
「おうよ!」
(ではいつ出発しますか?)
「今作っている革袋や馬装、いやこの場合は飛龍装か、あれが完成したら行こう」
(はい)
「楽しみだぜ!」
(お供します)
「おう!」
どうやら晶は野生に身を任せるつもりはないらしい。
こっそり獲物に近づき奇襲したり、鼓舞するかの様な雄叫び、結構似合っていたのだが残念なり。
洞窟では地面にワイバーンの革を敷いて寝ていた。
痛くないのか……痛くないらしい。
頑丈な事である。
水場は遠かったがゼロに乗って革袋に水を汲みに行ったりしていた。
元は内臓だったらしく最初は使うのに躊躇していたが適応の早い事よ。
今では普通に使っている。
雨の日や面倒だと思った日には食料具現化能力で横着したり。
毎晩ではないが酒も呑んでいた。
地球の産物……大盤振る舞いは出来なそうだが売れるに違いない。
人の住む場所があればお金には困るまい。
晶も気づいていた。
そう言えば刃物もないのに髪や髭が伸びっぱなしという事もない。
不思議である。
晶曰く、異世界の不思議パワーマジ便利、である。
まぁ教えてくれる本も人もいないので仕方あるまい。
もうその辺りを深く考えるのは止めたらしい。
精神衛生上にもよろしかろう。
旅立ちを決意し、楽しそうな主従。
革製品の完成を急ぐのであった。
▼
「それじゃ行こうか」
(はい。マスター)
「ハイマスターって何かカッコイイよな!」
(ソウデスネ)
「なぜか忍者っぽさがある」
晶旅立ちの日であった。
そして晶は晶。
小学生並の感想。
思った事、感じた事をそのまま口に出している感じだ。
ネガティブよりはいいのだろうが変わりすぎである。
異世界転移は良い事だったのだろうか……。
少なくとも本人は喜んでいた。
残してきた家族に付いては心残りであった様だが……そこに彼女だとか女の影はない。
そしてゼロもマスターである晶への対応が身に付いて来たらしい。
だが、その経験は無駄ではないかと思う。
そこにツッコめる人はここにはいない。
大丈夫かゼロ!
だが強さが全て。
そんな世界で生きていたゼロにとっては晶は頼もしいマスターであった。
抜けている所や、いきなりな言動、そういった部分を補って余りある力強さ。
ゼロが付き従うのに十分な力だった。
もっともネクロマンサーの力で支配されていたりはする。
気分の問題である。
「岩、岩っと」
晶は洞窟の入り口を岩で塞ぐつもりらしい。
既に用意してあった岩を張り手でウリャウリャ言いながら動かしている。
そんなんで動く辺り晶の力は凄まじい。
岩は晶の身長より高く大きかった。
そして岩を砕かない辺りにも成長が見られる。
投石の時には持っただけで砕いていたのだから。
「よしっ!ワイバーンの革とか持って行けないけど一応保管だ」
(ワイバーンもいませんし私達がいなくなったら何かが新たな縄張りにするでしょうね)
「おう。荒らされても何だからこれでいいだろう」
(はい)
「人がいるかは判らんけど町を目指すぞ!」
(心得ました。どこまでも付いて行きます)
「よきに計らえー」
変な主従であった。
だが楽しそうでもある。
少なくとも悪い関係ではないと推察された。
しかし念話を使っていると判らない人がコレを聞いていたら晶を危ない人だと思うだろう。
聞いていなくても行動で察してしまうかも知れないが……。
残念な事である。
晶が洞窟を封印した。
戻ってくるからなのか自分の物が盗られたり荒らされたりするのが許せないのかは定かではない。
ひょっとしたら自分が現れた場所に何かあるのかも知れないと考えているのかも知れない。
「知っている場所を歩くのはつまらん。ある程度までは飛んで行こう」
(はい)
「騎乗用の装備っと」
晶がワイバーンの革で何とか作ったずた袋をゴソゴソしている。
ずた袋以外にもリュックサックモドキも背負っていた。
頑張ったみたいである。
既に空の旅を楽しんだ事があるらしい。
必要な装備も完成していた。
ハミはないが馬装に近い。
固定するためにゼロの首を一周しゼロの背中側に晶が座れる様になっていた。
胴を一周する腹帯もあった。
それから掴まる革紐も付いていた。
よっぽどゼロが暴れない限り落ちたりはしないだろう。
晶は結構手先が器用だった。
道具はなくとも形にはなっていた。
企業への就職ではなく職人を目指せばよかったのに……。
人の適正なんて判らないものである。
そして人生はままならない。
「ハイヨーシルバー」
(何ですそれ?)
「騎乗して出発する時のお約束だとじっちゃんが言ってた!」
(ソウナンデスネ)
「さぁ、行こうぜ」
(初めからそう言ってくださいよ……)
ご機嫌になった晶にゼロの呟きは届かなかった。
だが空を飛ぶ事に異論のないゼロは晶の言葉に従う。
ゼロは空を飛ぶことが嫌いではなかった。
いや好きと言っていい。
邪魔の少ない空でひとり飛んでいると空が自分の領域だと感じられるからだった。
邪魔者は排除出来る実力もある。
空はゼロにとって心落ち着く場所であった。
少なくともここら辺の空はそうだった。
「何に出会えるかなぁ!」
(マスターが望むモノ、全てに会えますとも)
ゼロの背中で晶がはしゃいでいる。
それはゼロにも正しく伝わっていた。
ゼロの返事はどこかシャレていた。
そんな一人と一体は雲一つない大空へ上がっていく。
期待と希望を胸に抱いて。
旅立ちには良い日だろう。




