3-30
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「我、大地と言うくびきから解き放たれり!何人たりとも我が行く手は邪魔させん!!」
「ぴーっ!!」
「アキラ……そうね隷属の首輪もなくなり自由の空へ!」
「ええ!わらわ達を繋ぎとめるモノなどありはしない!」
(わぁ!言ってみたかっただけのアキラなのに!ぴよこちゃんは置いておいてー、フローラとエルは思いあたる事がアリアリー)
(うん……俺の欲しかったツッコミは念話だけだった……)
(とほほ、ですねー)
降り注ぐ炎の玉を掻い潜り、空へと上がったゼロ。
その背中で晶が放ったセリフ。
とても芝居じみているセリフ。
ええ、そのはずだったのですが……フローラとエルには身に沁みた現実だった模様。
今にも涙を流しそうな彼女達。
晶の背後から晶のローブを掴んで打ち震えていたり。
感極まったのはフローラとエル。
いや、ぴよこもそうに違いない。
晶と会えて嬉しいのだろう、晶に抱かれて小さな羽をパタパタさせている。
あれれーっといった感じになっていた晶。
そこへ冷静なツッコミ。
だが空に声は響かない。
カヅキからの念話だからだ。
カヅキの言うように、言ってみたかっただけらしい。
晶がこんな事を言っていられるのもゼロのおかげであった。
大地から空へ上がったゼロ。
そして火の玉を連発してくる相手、青羽魔族目掛けて飛んでいた。
その間にも火の玉、風の刃がゼロに向かって放たれていた。
フローラが魔法を放つ時のように一々魔法陣が出てきたりしていなかった。
ノータイムで連打される魔法。
魔力量も桁外れで、魔法が止まる気配がなかった。
エルと同じかそれ以上の魔力量がありそうだ。
だが晶達を乗せたゼロには当たらない。
「ゼロ!スゲーな!!避ける以外にも当たりそうな魔法を潰してるだろ!?」
(はい!私も遊んでいた訳ではありません。マスター)
「飛ぶのにも魔法の気配、複数の魔法を行使」
「エルの世話ではなくゼロの世話だね!これなら戦えるよ!」
途切れる事のない攻撃魔法。
青羽魔族に近づくにつれ回避が追いつかなくなっていたようだ。
まぁ、目の前で魔法が消失すれば晶でも気づくか。
どうやらゼロが攻撃魔法を潰していた模様。
ゼロも青羽魔族寄りの使い方らしく、魔法陣が出たりはしていない。
恐らく高度な魔法の使い方。
魔族と呼ばれるヴァンパイアのエルも感心している。
フローラもだ。
フローラはエルの手を煩わせずに戦える事を喜んでいる。
「っちぃ!何なんだぁ!?お前、魔族でもねーのに!!」
「一々叫ぶなアホウ!」
「お前もな!」
晶以外……フローラでも青羽魔族の全貌が解る距離にまで近づいた。
そこでイライラしたように叫んできた青羽魔族。
晶も怒鳴り返した。
どっちもどっちであった。
晶の目に映る青羽魔族……一言で言うなら悪魔であろう。
古き良きダンジョンRPGで言う所のグレーターデーモン。
もうちょっと顔が人よりではあるが、悪魔だ。
青黒い肌、細目の尻尾もある。
衣服は着ていない。
だが生殖器はなさそうに見える。
男女の区別があるのかも怪しい。
相手は、そんな禍々しい奴であった。
その間にも魔法が飛び交う。
今はフローラとエルからも火の玉が射出されていた。
連射は出来ていなかったが、一発の大きさに差はなさそうだった。
当たれば無傷ではいられなそう。
お互いに。
そのお互いには箒に乗っている『反帝十傑』も含まれる。
黒いとんがり帽子の黒ローブに身を包み箒を制御しているであろう魔法使い。
ナオを思い出させる出で立ちの魔法使いであった。
その後ろで攻撃魔法を放っているのは、コス家であった気怠げ魔法使い。
青羽魔族から一定の距離をとりつつ戦っている。
青羽魔族と晶達が同じ射線にいても魔法を撃ってくる。
味方ではないという事だろう。
少なくともどうでもいい存在だと思っていそう。
空に上がって来て青羽魔族と敵対していると判る行動をとっている晶達なのに……。
ヴィクトルと同じように自分達の獲物だと言っているのかも知れない。
「テイマーか!?ったく面倒だぜ!」
「ああ、そういう意味な」
(魔族、いえ青羽魔族はテイマーみたいな事が出来るのですかねぇ……あの大亀みたいにー)
(それな)
青羽魔族も滞空しているだけではなかった。
自由自在に空を移動。
魔法を避けては逆に撃ってくる。
晶からの返答がなかったので自分の考察を述べている。
魔族か?テイマーか?
青羽魔族の口から出た言葉で晶達も推察する。
あの大亀はこの青羽魔族に使役されているのだろう。
誰にでも想像出来る話。
だが直接確認出来た事は大きい。
未知の敵、情報は大切だ。
青羽魔族は魔物を使役出来る。
しかも大型でもだ。
「おわっ!!」
「っちぃ!大人しく当たっとけよ!」
「ふざけんな!人風情がっ!!」
「何と言う上から目線……ガキ大将もびっくりだろ……」
「下にいた奴らみたいに連なってやられるのを待ってればいいんだよ!!あれはいい奴らだったぜぇ!!」
晶が投げた石を焦った様に回避する青羽魔族。
ただの投石ではない、投石でも晶が投げたモノ。
凄まじい速度で飛ぶ石なのだ。
当たれば被害は魔法の比ではないはず。
向かっていった速度から想像したらしい青羽魔族。
オコである。
そして晶に向かって言い放った言葉はミナロコ共和国の兵士達についてだった。
今にも血管が切れそうな怒りっぷりから一転、恍惚とした顔になった。
虐殺に快感を覚える奴なのだと判る。
晶は返事として言葉ではなく、石を投げた。
解りあえる相手でも話す価値の相手でもないという事だろう。
黙って行動で示している。
フローラとエルもそれを察したのか、攻撃魔法を放っている。
しかも青羽魔族の逃げ場を潰すようにだ。
晶の投石をメイン攻撃とするつもりなのだろう。
中々やる。
「くっ!」
フローラの放った火の玉が青羽魔族の足元を掠めた。
直撃ではないが熱さくらいは感じたのだろう。
焦ったような声をあげる青羽魔族。
「惜しい!」
「ねっ!」
「次はわらわ」
「避けるって事は当たりたくないって事だよな」
「うん。意味はあるね」
「ええ」
青羽魔族の行動を見て晶が残念がる。
自分の攻撃で起こった行動、それを喜ぶフローラ。
エルが対抗意識むき出しのセリフ。
表情は無表情気味。
冷静さは失っていないようだ。
晶も冷静そう。
頭にくる事を言われていたが頭に血は登っていない。
この辺りは晶の性格ではないだろう。
神気のおかげっぽい。
怒りを抑えられたのではないだろうか。
そんな晶の口から出た言葉。
当たりたくないから避ける。
フローラの攻撃は無駄ではない。
やる気を増す晶達であった。
▼
一方、地面での戦い。
街道から森へ少し入った辺り、タケマツ達、『反帝十傑』が一時的に手を組んで大亀と戦っていた。
お互いに状況を正しく理解している。
敵対している場合ではないと。
タケマツとグラム、ロックとは念話でやりとりが出来ている。
タケマツが先頭に立ち、大亀の右前足を剣で切りつける。
走っているのでその場からは即、離脱。
同じ場所をグラム、ロックが正確に追撃。
大亀にとっては小さな傷でも、無視できない傷へと変わっていく。
「ん?タケさんに付いて攻撃しろって事か?」
「タケさんは相変わらず無口だぜ!」
「タケさんの斬撃はスゲーな!」
「はい。毎回傷を作っていますね」
「そこを狙えって事だなっ!」
「続こうぜ兄者!!」
「おうよ!」
「殴っても無駄じゃねぇな!」
「傷が広がりますね!」
タケマツが指揮をとっている脳筋ズ。
ただしノック達とは念話が出来ないので態度とジェスチャーで示している。
俺に続けと。
グラムとロックがやっているようにやれ。
そう言っている。
脳筋ズは打撃武器のみ。
しかしタケマツの付けた傷に打ち付ける事により、傷口が広がっていった。
それを何度も繰り返している。
全員で一個の機械。
そんな戦い方であった。
我の強い冒険者、しかし力を示し先頭に立って実践すれば付いてくるのだろう。
「おいおい!負けてらんねーぞ!」
「やるわねぇ!特に黒い甲冑の彼……いいわぁ」
左前足を攻撃していたヴィクトルがタケマツ達を見ていたようだ。
奮起している。
そのヴィクトルの側にいる変態も見ている。
タケマツが身震いをしそうな事を言っていたり。
危うし脳筋ズ、タケマツ!!
「クイーンが大亀の頭を押さえてくれている間に足を潰すぞ!」
「お、旦那!もういいのか!?」
「かすり傷だ。やれるさ」
「……俺もやれる」
「ウラ、血塗れじゃねーか。寝てていいんだぜ?」
「この好機は逃さない」
「そう、言う事だよ、なっ!!」
仮面紳士は後方へ下がっていたが、復帰して来た。
それに気づいたヴィクトルが声をかける。
どことなく安堵している気がする。
何に危機を感じていたのか……大亀が本命だが、変態に対してという線も捨てがたい。
どちらかは断言出来なかった。
仮面紳士が包帯を巻いた左腕を見せた。
利き腕ではなさそうだが、威力は下がるに違いない。
強がりかも。
組織、または国、民を背負っている身、そういう事だろう。
その仮面紳士の後ろには大剣使いもいた。
頭に血塗れの包帯を巻いている。
見えている顔にも血の跡がある。
大亀にやられたのだろう。
彼も戦いに復帰。
変態は置いておいて速度のあるヴィクトル以外では接近戦は厳しいと判る。
最初から見ていた訳ではないので定かではないが、色々無理をしたのかも知れない。
だが現状では巨大ゴーレムが大亀の頭を横脇に抱えこんで抑えている。
大剣使いのウラ、彼が好機を逃さないと言う。
好機とはタケマツ達の参戦だろう。
実際に来たばかりのタケマツ達が負わせた傷は大きい。
ウラの言葉を聞きヴィクトルも走り出しながら叫ぶ。
そして彼の剣により斬撃が繰り出される。
戦意は上がっている。
「ググッ、ガァッ!!」
タケマツ達の頭の上から雄叫びとも悲鳴とも判断のつかない声が降り注ぐ。
ゴーレムが頭を押さえている相手、大亀からの声。
一層頭を振っている。
しかしゴーレムは頭を離さない。
姿は見えないがクイーンが頑張っている模様。
姿が見えないといえば『反帝十傑』以外に誰の姿も見えない。
本当に戦いは彼ら『反帝十傑』に委ねられているようだ。
そりゃ、逃げ出せるはずもない。
こんな大きい亀を相手にしてもだ。
「大亀から離れるな!あの筒に吹き飛ばされるぞ!!」
「旦那達の姿は見ていたぜ!同じ轍は踏まねぇ!!」
「俺も学習……」
「でもこの距離で戦うのも怖いわねぇ」
「言葉と顔が合ってねーぞ!」
「あらー、見てくれてるのねぇ!」
「違う!!!」
仮面紳士はリーダーっぽく注意している。
実際リーダーなのかは判らない。
ヴィクトルが返事をする。
どうやら仮面紳士と大剣使いのウラはそれで怪我をしたらしい。
ウラは悔しそう。
代わりに大剣に力を込めて大亀に振るっている。
ムキムキ変態が大亀との接近戦は怖いとのたまう。
イラッとしたのかヴィクトルが言及。
楽しそうな顔になった変態にからかわれていたり。
相手にするとドツボに嵌りそう……変態は無視に限る。
それにしても大亀の甲羅から突き出ている筒はたくさんある。
多くは上に向かってだが、頭の横から前方へ向かっている筒もあるし、下へ向かっている筒もある。
安全地帯は少なそう。
その少ない場所が大亀の足元であった。
踏まれたらアウト。
蹴られてもタダでは済むまい。
そういう場所での戦いを強いられている。
▼
「マジうぜー!!」
「ほーん」
空に怒声が響く。
思うような戦いになっていないのか青羽魔族がイラついている。
それを煽るように晶がのほほんと返事をしていたり。
大したものだ。
どこで学んだのやら……。
青羽魔族の頭に血管が浮き出ている。
このまま煽られて血管が切れて決着。
だったら面白い。
晶達は青羽魔族を倒せてはいないが、空へ釘付けには出来ていた。
機動をゼロに任せているのが大きい。
攻撃と分担出来ているので負担が少ない。
上手く戦えている。
「なっ!!回避っ!!!!下へ!」
(承知)
突如、晶が大声で叫ぶ。
青羽魔族はともかく『反帝十傑』の魔法使い達に伝える意味があったのだろう。
晶の言葉に鋭い反応を見せるゼロ。
状況は理解していないが、晶の言葉は絶対。
そう思わせる空中機動であった。
不自然なくらいの降下。
そして彼方から青羽魔族へ向かって来た閃光。
言葉もなく落下していく青羽魔族……。
体の形は残っている。
どの程度の被害だったのかは判らない。
判らないが謎の閃光により落ちている青羽魔族。
『反帝十傑』は回避行動には出ていなかったが青羽魔族と距離を置いていたのが幸いしている。
無事であった。
魔法使い達の顔は青ざめていたが……。
閃光は尾を引きながら空へ消えていった。
晶はゼロの上から閃光の来た方向を見ている。
森、遥か先ではあるが森からの攻撃。
「レーザー?ビーム?ふざけんなよ!!俺は石だってのに!!」
(凄い差ですよねぇ……)
晶の怒りは意外な所に向いていた。
攻撃された事でも、倒すべき相手を横から掻っ攫われた事でもなかった。
カッコイイ攻撃への嫉妬であった。
カヅキも晶を不憫に思ってそう。
晶達のように参戦して来たモノ。
一体何者なのであろうか……。




