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 キーナ商業国、首都コナモ。

その貴族街の一角にある屋敷で一夜を明かした晶達。

無事に朝日を拝めた。

いや窓のない部屋なので直接は見ていない。


 部屋で人が動き出した。

起きる者、挨拶をする者……脳筋ズはぐっすり眠っただろう。

まぁ、ノックだけはまだ夢の中だが。

誰の屋敷かも、安全かどうかも判らない現状で、図太い神経だ。



「バド、怪我はどうだ?」


「おー、アキラおはよう……傷は塞がってそうだ。良いポーションを使ってくれたみてーだ」

「おぉ、マジか!太っ腹だな、ここのモンは」



 晶が欠伸をして体を伸ばしているバドに話しかける。

バドが包帯を巻かれた左手首を撫でて確認。

完全には治っていないようだが、ずいぶん良くなっていそう。

隣にいたワイザーもバドの言葉を聞いて嬉しそうに笑う。

兄弟仲は良さそう。


 晶より先にここへ来ていた脳筋ズ。

ここのメイド達に治療してもらったそうだ。

ポーションにも質があり、高品質のポーションはみるみるうちに怪我を塞ぐほどだ。

その分お高い。



「しかし、ここはどこなんだろうなぁ……調度品は良い物っぽい」

「ここに窓はないけど、通路には良いガラスを使ってたっぽいな」


「良く見てたな」


「そりゃー、得体の知れない場所だからな」

「当然だぜ!」



 鉄腕兄弟は馬鹿ではない。

伊達に二人だけで冒険して来た訳ではなさそう。

見る物は見ている。

状況判断の材料は集めていた。


 晶もそれに気づいて褒めている。



「方向的には王城の方でしたよね」



 脳筋ズで馬鹿っぽい男は、まだ寝ている。

しかしその相方である獣人の元奴隷シーベルはしっかり者だ。

ダメな主人をカバーして来たのだろう。

苦労が忍ばれる。



「王城ねぇ……」

「追っ手も来ていないしなぁ……」


「王城……」


(犬耳さんは鋭いですねー)

(ワイザーとバドも鈍くはないようじゃな)

(はい。ここは王城の端とはいえ敷地内ですものねー)

(ワシらでも入れない場所もあったのぅ)

(さすが王城というべきでしょうか)



 シーベルの言葉を聞いて鉄腕兄弟が考え込む。

フローラも考え込んでいる。

王族の一員として何かあるのかも知れない。


 そしてカヅキとタケマツが晶の脳内でネタばらし。

そう、ここは王城の庭、その端にある屋敷であった。

何のための屋敷かは判らないが、ただの小屋ではない。

誰かが養生するための場所と言われれば納得できそうな感じである。

そんな屋敷であった。



(アキラ様、誰も来なかった)


(だな、遠巻きに見てはいたようだけど……)

(ええ)

(ここは王城の庭にある屋敷だ)

(そう、ですか)



 晶に耳打ちしてくるエル。

彼女も晶と同じで寝ずの番をしていた。

夜の支配者ヴァンパイアロード。

そんな彼女には何てことないのだろう。


 晶も小声で返事をした。

ちゃんと警戒していたらしい。

カヅキとタケマツが調べてくれた事をエルにも伝えている。

晶、タケマツに続く実力者のエル。

情報共有をするべきだと晶は考えているのだろう。

会って間もないがコス家での戦いを見て、使える者は使う、そう思っていそうだ。




「朝飯食うか?」


「「「おう!」」」

「はい」

「食べる!」

「ええ」



 晶がカード化してあった食料からパンと野菜スープを出す。

かなり軽い食事だ。

ちゃっかりノックも返事をしていた。

食べ物の匂いで起きたのだろう。

面白い男だ。

脳筋ズ、フローラ、エル、全員食欲がある模様。

大事な事だ。


 みなで食事をとるのであった。







「アキラー!おはよう」


「おはよう。眠れたかい?」



 食後でまったりしているとデルマとハンナが部屋を訪れて来た。

彼女の後ろには食事を持ったメイド達が連なっている。

朝食を持ってきてくれたらしい。



「おはよう。デルマ、ハンナ。ちゃんと眠れたぜ」


「おうよ」

「ちゃんと寝たぜ」



 晶がデルマとハンナに返事をすると鉄腕兄弟も続いた。

ハンナが頷いている。

 


「朝食を持ってきたよ。食べるだろ?」


「おう!」



 ハンナが晶に聞いている。

返事をしたのはノック。

軽い食事では足りなかったようだ。

ハンナが後ろにいるメイド達に指示を出した。

メイド達は部屋のテーブルに次々と皿を並べていく。

パン、サラダ、スープ、ハムステーキっぽい物。

玉子料理があれば完璧であったろう朝食だ。



(怪しい所はあった?)


(んー、会話では怪しい所はなかったですねー)

(何とも言えんが、誰の態度にも出ておらんな)


(そっか。昨夜の食べ物は大丈夫だったしいいか)

(カードのテキストに毒という文字はありませんでしたしねー)

(うん)



 昨夜出された食事はカード化して食べなかった。

カードのテキストには怪しい文面はなかった。


 まぁ、ノック達は既に食べているのだが……。


 晶もフローラとエルを連れて食べだす。

彼女達も晶が食べだしたので手を伸ばした。



「食べながらでいいから聞いておくれ」



 晶達が食べだした所でハンナが話を切り出す。

デルマはハンナの斜め後ろで待機している。

どうやらハンナは組織内で上の方らしい。

少なくともデルマよりは上だと判る。

メイド達は食事を置いた後で部屋を出ている。

残っているのはハンナ、デルマ、夕べもいたキラキラ男女、帯剣している男二人。

部屋の外にも人は控えている。

晶達も警戒されていない訳ではなさそう。


 晶は一度だけ視線をハンナに向けた後も食べ続けている。

みなも似たようなものだ。

いや、フローラだけは食べるのをやめて座りなおしている。

うーん、教育が違いそう。

その隣にいたエル。

フローラと晶を見た後で食べるのを止めていた。

お嬢様っぽいフローラのマネをすることにしたのだろう。

何か憧れでもあるのだろうか?



「あたしらはお前さん達と敵対したくない。この機にコス家を潰すと王家も判断したよ」


「……」


「だが、直ぐには動けない事情もあってね」


「……」


「昨夜、戦っていた者達の中に『反帝十傑』って化け物達がいたのさ」


「強そうな人達がいましたね」



 ハンナは立ったまましゃべりだす。

ソファーは晶達が占領している。

椅子もだ。

フローラが返事をするまで誰も返事はしなかった。

頬は膨らみ、口は動いていた……食べるのに忙しそう。

子供の集団か。

晶も似たようなものだ。



「『反帝十傑』は反帝国同盟で結成されている強者達でね、うちの隣、西にあるミナロコ共和国との境で暴れている魔族と大亀を倒すために集められていたのさ」


「魔族……」


「魔族と言ってもそちらのお嬢さんとは違って、青羽魔族と言って……人と相いれない奴らよ」



 ハンナの話は続く。

どうやら『反帝十傑』は晶達を倒すためにいた訳ではなさそう。

誘拐されて来た晶達を迎えに来た仮面紳士トール。

彼は『反帝十傑』の一員だろう。

トールはコス家に関係者、少なくとも誘拐という大事に関わるほどの関係者。

他の『反帝十傑』達は判らないが全てが晶達の敵とは限らないかも。

ハンナの口から出た魔族という言葉に反応するフローラ。

この場ではフローラだけが返事をしそう。

他の者達は食事をがっついている。


 そしてエルが魔族だという事もばれていた。

だがエルは無表情のままだ。

ばれてもどうという事はないのだろう。


 晶達がいた牢屋の更に下で幽閉されていたエル。

デルマからの情報だろうか?

良く調べてある。

新たな名詞も出て来た。

青羽魔族。

人類の敵対者らしい。

青くて羽があるのだろうか?

何となく悪魔っぽい。


 魔族という言葉が出た時にハンナの後ろにいたキラキラ男女の顔が強張った。

それでも美形なのだから得だ。

どう見ても貴族、または王家の関係者。

帯剣している二人の男も男女の側で待機している。

守る対象はハンナではなさそう。



「エルは強かったけど……魔族だったの!?」


「ええ」



 フローラが隣にいるエルを凝視していた。

確かにエルの正体は知らなかっただろう。

少なくとも晶は話していない。

脳筋ズもチラリとエルへ視線を向けた。

食べる手は止まっていないが。

強いエル、何らかの理由があるとは思っていたはずだ。



「話を続けても?」


「……はい」


「『反帝十傑』の全員が集まることはないでしょう。今回集まった面々には青羽魔族を倒してもらわねばなりません」


「全員が集まらないというのは?」


(気になりますねー)

(うむ)



「十傑、十人いますが反帝国同盟は帝国を離脱した周辺三国、うちとミナロコ共和国、ギャミッソ王国、それぞれの国に三人もしくは四人います」


「なるほど。国を守る戦力として残る者もいるのですね」


「お察しの通りです。今回は東のギャミッソ王国から剣士のヴィクトル、魔法使いのマールが来ています」


「剣士、魔法使い……他にもいましたよね?」


「仮面のトール、ゴーレムマスターのクイーン、大剣使いのウラは我が国所属ですね」



 ハンナは色々としゃべってくれている。

フローラも質問して情報を集めようとしている。

それは判っているであろうが教えてくれるハンナ。

今の所、ハンナの意図は読めない。

ただの親切ではあるまい。


 若い剣士と気だるげな魔法使いは東のギャミッソ王国から来たようだ。

仮面紳士、ゴーレム使い、大剣使いはここキーナ商業国の者だという。

『反帝十傑』で判っている者は、この五人。

他にもいたようだが……。



「他にも細目の危なそうな人とピエロ、人形使いがいましたが……」

(さすがフローラねー)

(うむ)


「細目……はジャックね。ジャックとピエロのジェドは闇ギルド『血刃』の者達です。コス家に雇われているはずです」


「ピエロは仮面の人をトール様って呼んでいました」


「彼だけはトールと縁があるようです」


「そうですか……」


「人形使いはパティ、ゴーレムマスターのクイーンに師事しています」


「『反帝十傑』ではなかったのですね」


「はい。弟子なのでいつも一緒にいるようです」


(なるほどー)

(そうじゃったか)



 フローラの質問に答えてくれるハンナ。

東のギャミッソ王国に所属している者達はいいとして自国の戦力について教えているがいいのだろうか?



「……なんでそこまで教えてくれるんだ?」



 口の中の物を嚥下した晶が聞く。

さすがに自国の戦力まで教えてくれるのはおかしいと思ったのだろう。

最大戦力だというのだから尚更だ。



「嘘は言っていませんよ?言える事は言って信じていただこうかと思っています」


「ほー」



 晶、キーナ商業国から軽くは見られてない。

それが判った。

ハンナの言葉を信じるならばだ。



「コス家がアキラさん達にした事を思えば、これくらいは……ね」


「なるほど」



 先ほどは適当な返事をした晶であったが、今度の言葉を聞いて納得した晶である。

これならば情報の対価になってもおかしくはない。

それだけの事をコス家はした。



「こちらからも聞いていいかしら?」


「いいよ」



 ハンナにも質問があるようだ。

晶は食事には戻らなかった。

脳筋ズの手は止まっていない。

次々に皿が空になっていく。

晶はもう諦めたのだろう。

フォークを置いた。



「フローラ様とあなた、それからシーベルさんには隷属の首輪があったはずですが、どうやったのですか?」



 フローラが様付けだ。

素性は調べてあるのだろう。

キーナ商業国、王家直属の諜報組織は手が広いと解る。

そんなハンナが真面目な顔で晶に聞いている。



(おかしい事は解りますが、やけに真面目に聞いていますねー)

(うむ)



 晶が言葉を出す前にカヅキとタケマツが感想を言っている。



「俺にはちょっと変わった力もあるのさ。そのおかげ」


「まぁ……」



 晶の返事を聞いて驚くハンナ。

驚いている理由は素直に話したからだろう。

外した力に付いてはある程度予測出来ていたはず。

通常の手段では外せない事は常識だからだ。


 ハンナの斜め後ろにいたデルマの袖は引かれる。

更に後ろにいたキラキラ男がデルマに耳打ち。

今の晶の返事は彼にとって意味のあるものだった模様。

お偉いさんが動く事……。


 デルマもハンナへ耳打ち。

晶達の目前だというのに大仰な事だ。

バレバレだと言うのに。

お偉いさんも大変そう。



「あなた方は冒険者でしたわね?」


「んー、まぁそうだね」


「依頼があるのですが、受けてくださるかしら?」


「内容次第かなぁ……」



 ハンナが晶に聞いてきた事は多くの者が知っている情報。

晶はゆっくりと答えていた。

そしてハンナは依頼があると言う。

即答を避ける晶。

当然であろう。



 この状況での依頼……『反帝十傑』とやりあえた晶達の力?それとも異世界人である晶個人の力?直前にあった会話、カヅキのカード化能力であろうか?

ハンナの依頼とは何であろうか?

コス家から脱出して来た晶達。

これから都市も出ようかという晶達であったが、風向きが変わって来たのであった。




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