3-7
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(これは……訳が解りません)
(ピヨコ、ナゾ)
(そうよねぇ……可愛いからいいけどー)
(変な奴じゃなぁ)
「ぴー!」
「お、念話は聞こえていないだろうに……怒ってる」
(ぴよこちゃん!私は貶してませんよぉ!)
(ワ、ワシもじゃ、そういうつもりではないぞ!)
(私もです)
シン達を連れて来た場所、白い森を再び訪れている晶達一行。
実験として倒木をぴよこに突かせた。
倒木はぴよこの嘴に突かれた場所を中心として灰色へ変わっていった。
石化していったのである……。
しゃべれないぴよこだが晶の指示を理解して従っていた。
不思議な子である。
親のようなものである晶がおかしいからという説も捨てきれない。
更にぴよこの尻から生えている蛇君が石化した倒木に噛みついた。
石化が解けて倒木へ戻っていった……。
ゼロがぴよこのやったことを訳が解らないといい、カヅキが同意している。
デススパイダーのムクロも来ている。
のけ者にしたりはしていない。
そのムクロもぴよこを不思議がっている。
まぁ言葉だけで行動からは察せられない。
感情がどこにも出ないからだ。
タケマツも不思議だというニュアンスで、ぴよこを変と言っている。
晶達を振り返って甲高い鳴き声で抗議しているぴよこ。
晶、ゼロ、ぴよこ、カヅキ、タケマツ、ムクロ。
この仲間達の間で念話が出来ないのはぴよこだけだった。
しかし何かを感じたのか、ぴよこが怒っている。
そんなぴよこを見てすかさず自分は違うと擁護するカヅキ。
タケマツは少し動揺しつつ言い訳。
ゼロは淡々としている。
癒し担当のぴよこに弱いみんな。
ぴよこ、可愛がられている。
「ぴよこー、お前はコカトリスなのか?」
「ぴ?」
(くぅっ!首を傾げるぴよこちゃん!可愛すぎる!)
(ぬっ、解らんでもないぞ)
(ぴよこは自分が何者なのか解っていなそうですね。マスター)
(ワカッテナイ)
「そうみたいだな。まぁ、いいか」
(ええ!ぴよこちゃんはぴよこちゃんですー)
「ぴ」
晶がぴよこに尋ねるが、もちろん返事は解らない。
言葉は理解しているようなのでコカトリスかどうか?またはコカトリスそのものが解らないのだろう。
ぴよこが何者でも構わない、晶はそんな感じだ。
ぴよこは嬉しそう。
嬉しい時にやる行動、羽をパタパタさせている。
ムクロが前足をぴよこへ向けている。
そして頭をツンツンしている。
可愛がっているつもりだろう。
蜘蛛にも通じるぴよこの魅力。
恐ろしや。
「せっかくだから俺の力も再検証しようかな」
(ですね)
(アキラの力も不思議じゃよなぁ)
ぴよこの実験をした晶。
せっかく人目のない所まで来たという事で、自身の力……ネクロマンサーの実験もするようだ。
晶はずた袋をゴソゴソしている。
そして取り出したのはカードである。
木の箱に入っている。
「カヅキさん、これの解除をお願いね」
(お任せあれー!終の手札)
現れたのはオークの骨。
アレス達と出会った時に大規模な討伐をしたが、その後もオークと戦っていた晶。
残党なのか別のモノなのか解らないがドンの町周辺で一番見かける魔物だった。
ドンの町としてはオークの排除は当然。
外敵というだけでなく食料としても期待されている。
「不死者作成!」
カヅキから出してもらったオークの骨に晶がネクロマンサーの力を使う。
オークの骨……大腿骨だけである。
その大腿骨に黒い靄が纏わりついた。
靄が大きくなり骨が見えなくなる。
黒い靄が晴れていくと跪いたスケルトンがいた。
スケルトンの誕生である。
武器などは持っていない。
骨格標本と言える。
体の骨、その一部だけで作ったが、問題なく出来ている……謎だ。
「不死者作成!」
更にオークの骨に力を使う晶。
違うのは大腿骨だけではなく全身の骨という事だろう。
またも黒い靄がかかる。
そして現れるスケルトン。
先ほどのスケルトンより大きい。
一回り以上でかい。
「やっぱり一部の骨よりも出来がいいな」
(みたいですねー)
(面白いのぅ)
(ホネ)
(齧りたくなります)
晶が二体のスケルトンを交互に見ている。
骨が揃っていればいるほど良いスケルトンが生まれるようだ。
ムクロは見たままに一言。
ゼロは犬みたいな事を言っている。
バリバリ齧るのだろうか。
「お前は一号。大きいのは二号な。お互い殴り合え」
晶の指示により殴り合うスケルトン達。
何だか極悪非道な主人っぽい。
結果は直ぐに出た。
オークの全身骨を使ったスケルトンの一撃、それで決着がついた。
殴られたスケルトンは背骨を砕かれて地面に横たわっている。
それでも蠢いている。
どうやれば動かなくなるのか……レベッカ達シスターの奇跡は出来るだろうと思われる。
後は燃やしつくすとかだろうか?
アンデッド……思った以上に面倒な相手かも。
(解りやすいのぅ)
(ですー)
「ただ、このままだと使い難いんだよねぇ」
(思ったように動いてくれないんでしたっけ)
(頭は良くないようじゃな)
「そうなんだよ……人型の霊体を憑依させれば解決するんだけど……」
(滅多に見かけませんよねー)
(生前の力が強い者か想いの強い者しか霊体にはならんようじゃしのぅ)
「タケマツさんの言う通りっぽいんだよなぁ。小動物や子供の霊なんかはいるんだけどさ」
(自分が死んだ事を理解していないパターンですねー)
不死者作成で作ったアンデッドは知能が高くない。
せいぜい近づく者を襲えとか、地面に線を引いて超えた者を襲えとか、そんなレベルである。
晶の言う通り、使い難そう。
単体ならまだしも大量のスケルトンなど使いこなせない。
「次はっと……霊体支配!」
晶が力を使う。
すると大きいスケルトンが地に倒れた。
いや四つん這いである。
「やっぱりこうなっちまうか……」
(何をやったんですか?)
「リスの霊体をスケルトンに憑依させたんだ」
(なるほど……)
(体の作りが違うせいか)
「そうだと思う。同じ作りのモノじゃないと上手く活動出来ないみたい」
(二足歩行同士とかですね)
「うん。歩くとか腕を使うとか出来ない奴を憑依させても意味ないっぽい」
(色々制約があるもんですねー)
(うむ)
晶がぼやいている。
制約があるらしい。
中々上手く行かないものである。
更に実験は続く。
オーク以外の骨を使ったり、魔石を使ったりの実験だった。
実験はスケルトンだけではなかった。
「不死者強化!」
(んー?)
(はて……)
魔物の霊体……ゴーストを強化。
フワフワ浮いている白っぽい霊体。
晶達だから見えるが、霊体を視認出来る者は多くない。
感の良い者はゾクリと悪寒を感じたりする事はあるらしい。
だがゴースト自体に大した攻撃力はない。
せいぜい魔力を少しだけ吸い取る……まぁ、嫌がらせ程度だろう。
晶がゴーストを強化した結果、ゴーストはレイスになった。
「レイスになったんだよ」
(見た目的には判りませんねー)
(うむ)
「瘴気が増えたかな……攻撃はドレインタッチが増えてる」
(何かを吸い取る?魔力?生命力?)
(レイスは両方だったはずじゃ)
「うん」
(凄いじゃないですかー)
(そうじゃな)
「俺のは強化であって進化ではないんだ。ある程度の時間で瘴気が減ってゴーストに戻っちゃう」
(そんな都合の良い話はないかー)
(惜しいのぅ)
使い所を考えれば役に立ちそうである。
ゴーストというだけでも使い道はある。
聖なる領域以外でなら偵察要員として使える。
ただ自我をハッキリと持った人型でなければ情報を伝えられないという欠点もあった。
晶は霊体を集めてはいたが人型の霊体は一体だけ。
それも子供の霊体であった。
迷宮都市から南大陸へ戻る寸前に見つけていた子である。
森でボーッと座っていた。
自我が薄く、自分の名前も言えなかった。
あまり役には立っていない。
晶も子供の霊体という事で積極的に使おうとは思っていない模様。
今度レベッカに会ったら解放してあげたいとも思っている晶であった。
ぴよこは晶の実験に飽きたのか辺りを走り回って遊んでいる。
ゼロ、ムクロが遊び相手になっていた。
仲の良い事だ。
微笑ましい。
ゼロのいかつさとムクロの不気味さを除けばだが……。
いつの間にかムクロが呼んだ小さい蜘蛛達もぴよこを追っかけていたり。
(あ、背骨を砕かれた一号が動かなくなりましたよ)
(ふむ)
「魔石を使わないと長時間の行動は無理っぽいね」
(そういう事でしたかー)
(そうなのか)
「エネルギー源である魔力が切れたんだと思う。魔石を付ければ電池として動くみたい」
(へー)
(ほー)
「魔石があれば周囲の魔力も集められる」
(魔力の自動回復付きとは素晴らしいですー)
(うむ)
色々あるものだ。
現在解っている最強のスケルトンは強い魔物の全身骨を使い、魔石もくっつけて不死者作成したモノだと思われる。
ドンの町でなら……何とか連れ歩けない事もないだろう。
……いやさすがに無理か。
ドンですらそうなのだから軽々しく連れ歩けまい。
迷宮で戦力の底上げになるだろうが残念なり。
だが白い森の戦力は上げられる。
晶の領域……着実に強化されていくのであった。
ドンの町の者達でもここまで来れるのは相当先の事であろう。
それでも何があるか解らない。
レイのように海を渡れる者だっているのだから……。
晶は実験の後で、またへとへとになっていた。
ぴよこ、子蜘蛛達との鬼ごっこは断れなかった模様。
遊びの導入……晶、早まったのかも知れない。
まぁ、ぴよこが楽しそうにしていたので今後もやるのだろうけども。




