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3-4

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「ふっ」


「むっ!いいんだな?行くぜ!!」



 シンが右腕を晶に向け、手のひらを上にして来いよ!とジェスチャー。

自信ありげである。

それを見た晶がやる気になっている。

相手が同じ異世界人という事もあるだろう。

いつもより手加減しなくて済む。

そういう気持ちもあるに違いない。

力の調節、手加減に苦労していた晶。

そこを気にしないで済むというのは、新鮮なのだと思われる。

何となく嬉しそうな顔をしている。



 それなりにあった距離が一瞬でゼロになる。

晶が距離を詰めたのだ。

蹴った地面が抉れていた。



「ふんっ!」



 晶が振るった右の拳。

漏れた息からして気合が入っていた。



「おぉ!」



 大きく手を叩いたような音が響く。

そしてシンが嬉しそうな顔になった。

シンが晶の拳を右手で受け止めていた……多くの魔物を貫いていた右ストレートをだ。

晶が驚いている。

いきなり全力では殴っていなかっただろうが、それなりの力を込めたに違いない。

だからこその驚き。



(この人凄くないですか?)

(やりおる。昔のワシと同等の力がありそうじゃ)


「むっ」



 晶の拳を受け止めたシンを見てカヅキが真面目な口調になっている。

タケマツも唸っている。

シン、どうやらかなり強いらしい。

自信ありげな態度には裏付けがあった模様。

強い。

晶は拳を戻そうとして、がっちり受け止められて動かせなかった。



「なるほどなぁ。中々やるぜ」


「くっ」



 シンの言葉を聞いて悔しそうな晶。

今の一撃で晶の力量を見抜いたらしい。

まだまだ余裕がありそうなシン。



「お前さんはやっぱり後衛なんだな」


「今ので判るのか……」


「素の力には大差ないだろう。まぁ体格は俺がでかいからその差はあるだろうがな」


「そうなのか……」


「今の手ごたえからして、アキラが全力を振るっても止められるだろう」


「……」

(嘘ではあるまいて)


「判りやすく行くか。腕相撲をしようぜ」


「判った」



 シンから新たな提案。

単純に力の差を感じさせるためであろう。

晶もそれを知りたいのか素直な返事。

表情は悔しそうなままだが。


 シンが地面で腹這いになり腕を構えた。

晶もそれにならい地面へ。

腕相撲の体勢。

傍から見ると少しマヌケだ。

レイが少し笑っていた。

彼女の手はグリフォンのシルクを撫でていた。

かなり可愛がっているのが解る。

左腕の蛇はじっとしたまま巻き付いている。



「レディー……ゴー!」


「ぐっ!」



 シンが開始を宣言すると晶の手の甲が地面についた……。

あっさりである。

こちらに来て体格で負けた事はあっても力負けをした事はなかった。

その晶が負けた。

天職、その補正の差はかなりありそうだ。

その天職、異世界人では魔法職はいないらしい。

そうなると力か特殊技能でしか強弱を計れない。

異世界人の前衛職は相当有利だと言える。



(ワシが実感させられなんだ力。それを今知れたのは良い事じゃろう)

(なるほど。そうですねー)

(言ってる事は解りますが、悔しいです……)



「もう一回やるか?」


「頼む」



 晶、負けず嫌い。

勝てそうになくても勝負を挑んでいる。

いや、ハッキリと確認したいのかも知れない。


 全力を込めたであろう晶。

しかし結果が同じ。

肘が地面にめり込んでいたが、また手の甲を地面に……。



「力の差が解ったか?異世界人にはお前さんを上回る戦闘力を持っている奴らがいる」


「そう……みたいだな」


「こっちの人間にも力で勝負できる奴らがいる。気を付けろ」


「マジかよ」

(世界は広いのですねぇ……)

(ふむ……)


「ああ。上位天職持ちで装備も整っている奴は危険だ」


「シンでも危ないのか?」


「俺様?負ける訳ねーだろ!」

「一応言っておきますが本当ですわ」



 シンから晶への忠告。

これほどの力を発揮しているシン。

それに匹敵する力を持つ者がこちらの人間にもいるという。

晶の顔に浮かぶ驚愕の表情。

井の中の蛙……自分をそう思っているのかも知れない。


 シンの言葉を補足するレイ。

シンの言葉は強がりと取れなくもなかった。

しかしレイはシンの強さを保証していた。

それほど強いのかシン。



「アキラ、弱くはないが心配だぜ」

「やはり私達と一緒に来る事をお勧めいたしますわ」


「……」



 シンのお眼鏡に叶わなかったのか?晶は心配されている。

一応フォローの言葉もあるが、そのままだろう。

レイも晶を心配している。

返す言葉もなく黙り込む晶。

シンとの差を思い知ったのだろう。



「レイ、あれを」

「あら、奥の手を出しますのね」



 そんな晶を見てシンがレイに何かを頼んだ。

力の差を解っても一緒に行くと言わない晶。

それに対しての動き。

奥の手?何か状況を変えるモノがあるのだろうか?

レイがバッグをゴソゴソしている。



「俺にもくれ」

「人数分用意してきましたから大丈夫ですわ」



 シンが自分にも寄越せとレイに言っている。

シン、レイ、彼ら自分達でも嬉しいモノなのだろう。



「アキラさん、これをどうぞ」

「遠慮すんな」



 そうしてレイから手渡されたモノ……。

それは葉っぱに包まれたモノだった。

シンもレイから受け取っている。

嬉しそうだ。



「開けても?」


「ええ。もちろん」



 晶包みをが差し出してくれたレイに確認している。

悔しそうな顔が少しはマシになっている。

心に整理が付いたのかも知れない。



「お、おにぎり?」



 包みを開けた晶。

その中身は白いツブツブが固まったモノ。

おにぎりであった。

米の粒は長くて、若干黄色がかっているが米の一種には違いなさそう。

海苔もないがおにぎりだ。



「ふふっ。やはり知っていましたわね。そろそろ食べたくなっているかと思いまして」

「港で魚を買って用意してたんだぜ?食ってみろよ、美味いぜ!」


「ありがとう」

(力の差、その次は食の欲求を満たそうと……やりますねー)

(用意がええのぅ。そして色々と考えておるのが判るのじゃ)

(ですねー。いい人達かもですー)



 レイが笑顔を見せる。

日本人とはいえ、違う日本という事で常識が違う事も疑っていたのだろう。

晶、レイ、シン、みなが欲するおにぎりであった。

素直に礼を言う晶。

気持ちが嬉しかったと思われる。

カヅキとタケマツがシンとレイを褒めている。

晶の勧誘、そのための手段をいくつも用意している彼らはしっかり考えてきている。



「いただきます」


「召し上がれ」

「食え食え!」



 手を合わせていただきますと言っている晶。

レイ達の言葉を待たずにおにぎりを頬張っていた。

一口食べる。

目を閉じて咀嚼している。



(どうですか?)

(ええのぅ)


(んー、粘りと甘みが足りない。中に入っている魚は白身魚だけどいい塩加減)


(いいなー)



「どうよ!俺達と一緒に来いよ!」



 カヅキがおにぎりに付いて晶に聞いている。

タケマツが羨ましそうな声を出している。

シンからもらったおにぎりは最高!とは言えない代物だった。

だが不味そうには食べていない。

米、おにぎりを食べたいと思う者には十分な代物。

晶はそう思っていた。


 そんな晶を見て自信満々なシン。

おそらく苦労して米を手に入れたのだと思われる。

だからこその態度。

シンも嬉しそうにして、おにぎりを食べている。

レイもだ。



「ちょっと待ってね」



 そう言って晶はゼロに近づき、ずた袋をあさっている様に見せた。

シンに背を向けゴソゴソしている。

実際には何も取りだそうとはしていない。


 シン達に向き直る晶。

その手には……。



「えっ!?」

「な、なん……だと!?」

「の、海苔のおにぎり!?」

「おにぎりではないですか!もう手に入れてたんですの!?」

「卵焼きもだと……」

「ソーセージまでありますわ!」

「やべぇ!これやべぇよ!」

「あれだけ探しましたのに……こんな所にあったなんて……」



 木の皿に乗せた海苔のおにぎり。

おにぎりは鮭、ツナマヨ。

それから黄色い卵焼き。

ソーセージまで付いている。

至れり尽くせり。

もちろん晶の特殊能力で出した食べ物だ。



 それを見たシンとレイが今までにないくらい驚いている。

アワアワ、オタオタ、キョロキョロ、ちょっと面白い。

晶がニヤリとしている。

悔しい思いが上書きされた模様。

してやったり、そんな感じだ。



「頂いた礼をしないとね。どうぞ」


「ぴー!」


「お前もかー」



 晶の手から皿を奪い取るように受け取った二人。

無言でおにぎりを手に取り、フォークを手に取った。


 大人な女と見えるレイががっついている。

それほど晶の差し出した料理には力があった。

記憶にあるであろう料理。

その完全版だ。

無理もない。


 ちゃっかりぴよこも晶の足元に来ていた。

さすが食いしん坊。

苦笑した晶がぴよこの分も出した。



「う、美味い!美味いぞー!!」

「ツナマヨ!マヨネーズもレベルが高いですわ!たまご焼きの甘さもサイコー!!」

「これ、これだよ!モチモチ感が違うぜ」

「涙が出そうですわ……」


(いいなー。アキラさん、私が体を取り戻したらこれくださいね!)

(ワシもじゃ!絶対じゃぞ!?)



 どこぞのグルメ漫画みたいな批評をするシン。

レイは泣きそうだ。

ガツガツと食べている。

その様子を見たカヅキとタケマツが悔しそう。

再度約束をしている。




「俺を仲間にしてください」

「わ、私も……」



 シンとレイが幸せそうな顔で言葉を漏らした。

腕力が全てではない。

晶、カヅキ、タケマツにそんな事を思わせた。

頭を下げているシン達を見て強くそう思っていた。


 そしてなぜか晶も驚いている。

予想以上の反応。

日本の食べ物、凄まじい威力であった。

晶は力で負けたショックが吹き飛んでいた。


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